第132話 砦作成

藤沢ふじさわ、残っているリスポーンはあとどれくらいだ?」


 今日のノルマの討伐を終え俺は尋ねた。


『【マッピング】。ええと、あと60箇所』

「先は長いな」


『前線基地を作ったらどうだ』


 無線の話を聞いていたのだろう。

 灼熱の剣リーダーの厚木あつぎさんからそう提案があった。


 砦を築くのは賛成だな。

 補給は大事だと思う。

 弾切れになったら死ぬ確信がある。


 ただ、柔な建物を建てると、モンスターに壊される。

 このフィールドの地面に魔力が通っていたら話が早かったのだが。

 掘らないと駄目か。


 戦車で方陣を組み、その中央の場所をリフォームスキルで掘り進む。

 3メートルほど掘ると石の岩盤が現れた。

 魔石コーティングした予備のパイルバンカーの杭でも傷がつかなかったから、ここには魔力が通っていると思われる。

 これを地上まで変形するのは大仕事だな。


 こういう時のために祈りの像に魔力を溜めているから問題ないと言えばない。

 石造りの砦が出来上がった。


 扉もダンジョンの構成物で作る。

 電気とかは魔石発電機を設置すれば良いだろう。


 色々な予備のパーツや、ポーション、弾丸を置く。

 ただ弾丸は重さを付与してもらわないといけない。

 魔石コーティングの弾丸ならその限りではないが。


 後方支援要員が必要だな。

 回復役と付与魔法使いは押さえたい。


 後方支援要員の護衛も必要だな。

 こう考えたらいいか。

 回復役と付与魔法使いがいるパーティを雇えばいい。


 討伐を終え、事務所に引き上げてから、藤沢ふじさわに後方支援の手配をしてくれるように頼んだ。


 事務処理を終えて休んでいたら、藤沢ふじさわが6人連れて来た。


「Dランクパーティ、バジャーの大磯おおいそだ」

「バジャー?」

「穴熊だよ。粘り強くしつこく生きるがモットーだ。それに下手な横好きの将棋マニアでな。穴熊という戦法があるだろあれが好きだ」

「ダンジョンクラッシャーの戸塚とつかだ。よろしくな」

「よろしく。一日100万もらえるってのは本当か?」

「本当だ。冒険者協会を通しての依頼だからな。それと狩った獲物は好きにしていい。銃弾なども支給する」

「不利な時は戦線拡大か。いまのままだと頭打ちだからな。Sランクダンジョンの仕事だが、とりあえず何日かやってみるさ」


 バジャーは治癒と付与魔法使いがいる一般的な冒険者パーティだ。

 他のメンバーは前衛二人に攻撃魔法使いが二人。

 対応力には自信があると言っていたが、器用貧乏で決め手に欠けるのが悩みの種だそうだ。


 軍畑いくさばた区長が応援演説をするというので、見に行く。


「皆さん、お忙しいところお集り頂きありがとうございます」


 宣伝カーの上からの演説が始まった。


「昨今、ダンジョンをとりまく環境は厳しさを増してます。スタンピードは毎年のように起きる。スタンピードは自然災害だと諦めてませんか。たしかに壁を作っても防げないかも知れません。しかし、巨額な費用を投じれば、破れない壁も建設も不可能ではない」


 聞いている人たちから拍手が起こる。

 スタンピードが起こっても破られない壁があれば、確かに安全だからな。


「その費用をどこから捻出するかと言えば、ダンジョンを利用した産業からです。ダンジョンを利用して逆手にとってスタンピード対策をする。とっても素晴らしいことだと思いませんか。そのためにもダンジョン問題を解決する党を勝たせて下さい。お願いします。ご清聴ありがとうございました」


 喝采の拍手の中、応援演説が終わった。

 敵対候補の演説も聞きに行く。


軍畑いくさばた区長の作る壁ははたして効果を発揮するのでしょうか。私には万里の長城に思えてならない。昔、地震があった頃ある地域で津波対策で巨額の資金を投じて防潮堤を作りました。結果は役に立たなかった。こういう事が今回も起こるのではないですか」


 第三セクターには触れてないな。

 壁が機能するかどうかが焦点だ。

 俺は軍畑いくさばた区長に作る予定の壁の性能について、データを提示したらどうかとメールした。


 実は俺自身が壁に対しては疑問がある。

 軍畑いくさばた区長から返ってきたデータをみると、Aランクモンスター単体では破壊できないということが書かれていた。

 甘いな。

 お役所はこれだから。

 想定外のことが起きるのが災害だ。

 今の性能の50倍はあっても足りないかも知れない。

 そして建築が間に合うのかといった不安もある。


 第三セクターの施設が現在壁になっているから、間に合うとされている。

 本当にそうか。

 何か考えないといけないようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る