第131話 新たなる敵
討伐は順調だ。
戦車についてだが、武器は基本、手に持ってないと魔力が通らないので、意味がない。
戦車のノコギリ、パイルバンカー、スタンガンも取っ手が付いていて、それを握って使う。
こうしないと魔力が通らないからだ。
魔力は肌に接した所から遠くなるほど拡散する。
魔力が拡散しない導線とか作れたら大儲けだろうな。
ミスリルが魔力損耗率が低くてよい素材だが、価格が高い。
事務所に帰ると留守番を任せているパートの事務員から、アポがあったことが伝えられた。
その人物は大物だ。
自由議民党総裁の
与党の総裁が総理大臣をやるから、総理大臣でもある。
とうぜん俺の所に来るのではなくて来いという話だ。
まあそうなるよな。
秘書に電話したところ、今日なら10分だけ時間が取れますと言ってきた。
どんな話が出て来るのか興味があったので伺いますと伝えた。
場所は首相官邸。
入口で身体検査され中に入る。
案内してくれた人は秘書だろう。
お上品でもないし、だらしなくもない。
気迫みたいなものを感じる。
だが、モンスターと対峙することに比べたら迫力という面ではどうってことはないな。
「よく来てくれた。忙しいの手短に言う。君のやっている事業は100兆円産業になるとわしは見込んでる。
利権がほしいってことだな。
それも全部。
「断る」
「国に盾突くつもりかね」
「別に反政府運動するつもりはない。だが、美味しい所だけもっていこうという意図がみえみえで、不快だ」
「ふん、そんなことを言っていられるのも今のうちだけだ」
こいつは敵だな。
「話がそれだけなら帰る」
「気が変わったらいつでも来ていいぞ。菓子折りを持ってくるのを忘れずにな」
腐ってるな。
菓子折りには札束を敷き詰めて来いと言うのだろう。
「失礼します」
秘書が誰か連れてきた。
「これはつまらない物ですが」
ああ菓子折りにね。
「少ない」
そう言って、菓子折りを突き返し、指を3本出した。
「それでは暮らしていけません。1本で何とかなりませんか」
こんな場面を俺に見せるなんて、俺が騒いでも別に問題ないのだろう。
「
「じゃあ、帰るよ」
俺はそう言ってその場を後にした。
官邸を後にして、身隠しのマントを羽織る。
さっき菓子折りを持ってきた人が出てくるのを待って写真を撮る。
そして、事務所に帰り、知り合いの記者に写真のデータを送った。
写真の人物が誰なのかすぐに判った。
建築会社の社長だった。
公共工事を請け負ったらしい。
さっきの3本というのは仲介の手数料、マージンの類だろう。
3000万か3割か、どっちかは分からないが。
「
俺は話し合いの内容を話した。
『区議会選挙とも連動しているな。国政と区議会じゃ勝負にならないが、100兆円産業というところが本音だな。これから事業とダンジョン党は伸びると思われたんだろう』
「何か仕掛けて来るかな?」
『表だっては動けないはずだ。野党の目もあるしな』
「後手に回るのは嫌だが何かあってから対応するとしよう」
『こちらでも情報は集めておく』
扉を荒々しく叩く音がする。
怒鳴り声もだ。
「俺が出る」
俺は応対に出ようとする藤沢をとどめるジェスチャーをした。
「どちら様?」
扉を開けると作業服を着た初老の男が立っていた。
「あんたらか、壊れない包丁を作ったのは?」
「魔石コーティングか」
「おうそれだ。あんなのを作られたら俺らは食っていけない」
あー、俺はまたやらかしたか。
こういう問題が起きても不思議ないよな。
「中に入ってくれ。詳しい話を聞く」
男を応接セットのソファーに座らせる。
男は危機感を述べた。
確かに包丁の切れ味が落ちないと商売上がったりだな。
「どうしてくれるんだ」
「今、100均レベルの包丁を使っているが、高い物を使うとしよう」
「それじゃ不十分だ」
そうだよな。
「あの、包丁の柄は壊れるんじゃないでしょうか」
確かにそうだ。
「そんなの包丁じゃない」
「あの、本当に壊れないものなんでしょうか」
また
「どういうこと?」
「魔石が硬いのって魔力があるからですよね。魔力は散るんじゃないかなと思うんです」
「おー、もしそうなら、船の魔石コーティングとか危ないな。
魔石コーティングの包丁を
「結論から言うと魔力が僅かに抜けてますね。ダイヤモンド以下の硬さになるまで5年ぐらいですかね。鋼鉄ぐらいだと10年ですか」
「10年でなまくらになるのか。それなら許してもいい」
これは大変だ。
でも対策ならある、魔力を再充填すればいいんだ。
ネットワークライイングのスキルを使えば魔力は再充填できる。
包丁の再充填が出来ることは黙っておこう。
SLEに再充填はやらせないように言っておけば良いか。
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