第126話 職人気質
討伐は、問題がなかった。
パーティ間で連携する必要もないが、いまのところ他のパーティがやり易いように動いている。
獲物の取り合いで気まずくなったりもしない。
そこら辺は大人だ。
冒険者だと荒くれ者をイメージしがちだが、現代の冒険者は自営業。
漁師とかが一番近いかも知れない。
だから、横のつながりは大事にする。
板子一枚下は地獄というが、ダンジョンもだ。
モンスターにやられたら、あっという間にお陀仏になることもある。
人の足を引っ張ったりする奴は長生きできない。
だからと言ってなれ合いもしない。
全員が商売敵でありライバルだ。
不思議な関係だとは思う。
とにかく1時間ほどの討伐を終わらせた。
リスポーン地点を潰したのはやはり二つ。
欲張りはしない。
こういうのはリズムを崩すと危ない。
慣れて惰性でやるのは不味いが、勢いに乗ってどんどんと進めるのも不味い。
事務所に帰ると
「何か急用?」
「うんにゃ、ファンドの顧客が、経理データを見て騒ぎ始めてよ」
「どう言った感じ」
「殺処分ロッカーをもっと作れってさ」
「討伐のスピードを早めろって言っているのか」
「まあね」
「反対だ。死人が出るぞ」
「やっこさんらは数字しか見てない。10倍の冒険者をつぎ込めば、10倍進むと考えている」
「説得させるとしたらあれかな」
「何?」
「冒険者は職人だ。繊細な仕事を頭数さえ揃えれば良いというのは傲慢だと言ってやれ」
「そいつはいいね。一流の職人の数は少ない。そういうことね」
「職人の仕事にケチつけるとへそを曲げてもっと仕事が遅くなるぞと言ってやれ」
「そうするよ。外国じゃ、殺処分ファンドを真似て、ダンジョンに殺処分ロッカーを作ったが上手くいってない」
「その光景が目に浮かぶ。殺処分ロッカーを設置しようとするとモンスターが邪魔するんだろう。リスポーンを全部停止させなきゃ危なくて作業は出来ない」
「そうね。死者が多数出て諦めた所もある」
「かと言って、Fランクで殺処分ロッカーを設置しても実入りは少ないな」
「Cランクで試したそうだけど、上手くいってないね。そういう歯がゆさもあって、うちとこに冒険者を大量投入しろなんて馬鹿なこと言ってきたんだろね」
「とにかく、大フィールド型は厄介だ。モンスターが集まってくるからな。気の合う奴しか入れたくない」
「分かってるよ。職人と同じだと言って黙らせる」
焦りは禁物だ。
大量に冒険者を集めたらきっと同士討ちとか始めるぞ。
そんな気がする。
俺は魔力銀行を訪れた。
一回視察にいかないとなと思ってた。
魔力銀行は見た目は普通の銀行だった。
中の作りもほぼ同じ。
違うのは、魔力のレートがでかでかと表示されているところだ。
このレートってのは誰が決めているのかな。
まあいいや。
俺は整理券の番号札取った。
俺は
驚いたことに魔力銀行と取引がある。
おっと呼ばれている。
番号を呼ばれたので受付に近寄った。
「売りですか買いですか」
「買いだ」
「何MPでしょうか?」
「ええと、1MPが120.6円か。じゃあ100MP」
「その場でしばらくお待ちください」
受付嬢の後ろの人が伝票を手に奥に入った。
魔力貯蔵室にでも行くのだろう。
ほんの数分でコイン型魔道具がトレーに載せられて差し出された。
俺は祈りの像を出すと、その中に魔力を注ぎ込んで俺の中の魔力を空にした。
そして魔道具をつまむと魔力を吸い取った。
うん、満杯になった感じはないな。
だが、9割ほどは満たされた感じがする。
コイン型魔道具を受付嬢に返す。
「この魔道具は貸し出したり売ったりしないのか」
「貸し出しは致しません。売買だけです。お買い上げの際は1魔道具、1万円になります。こちらで買い取るときは、9800円になります。中に残留している魔力は別途計算致します」
「ありがと」
魔力銀行の商売は美味しいな。
魔道具の売買で1個あたり200円か。
これは実質手数料と言ってもいい。
それにレートがあるから、ギャンブル性があるな。
国が規制に乗り出さなきゃいいけど。
もっとも
心配になってきた。
いいや、法を犯すようなことはしないに違いない。
――――――――――――――――――――――――
俺の収支メモ
支出 収入 収支
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繰り越し 43,911万円
上級ポーション2個 604万円
彫像10体 10万円
弾丸製造 500万円
魔力買い 589万円
分譲販売3部屋 9,000万円
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
計 589万円 54,025万円 53,436万円
ファンドメモ
俺の出資1250口 125億円
客の出資22854口 2285億4千万円
俺達の装備は。
俺 追憶のペンダント 不眠の冑 剛力の籠手 モノクル 身代わり人形 祈りの像 ミスリルのシャツ カモシカの足 戦車1号 力の腕輪
キープ 亜空間収納 千里眼の目隠し 身隠しのマント 変装の仮面 スキル鑑定の杖
反射の盾×2 衝撃の盾 浮遊の靴 収納の壺 蛸の手 眠りのオルゴール
金剛糸×2 オリハルコンの縫い針 熊の爪
魔力銀行と提携した事業が何かできそうだ。
明日詳しく聞いてみて、何か考えてみよう。
それにしても、ファンドのほうはあと何日かで3650億円に届く勢いだな。
そうなると枠を増やせと圧力が掛かるんだろうな。
第3階層の殺処分ロッカーを設置できるようになるまではまだ掛かるな。
それが目に見えるようだ。
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