第114話 戦車

 今日の討伐は休み。

 造船所にお邪魔した。


「ファイヤーソード号の航海は順調です」

「それは良かった」

「ただ魔石コーティングしてない箇所が狙われますね。艦橋が軽微な損害を負いました。幸い。魔石砲弾で、大抵は近寄らせませんし、近くは魔石弾搭載の小銃があります」

「国の後押しがあるのは良いですね。モンスター退治に自動小銃が使えたらと何度思ったことか」

「法律には勝てませんからね」


 戦車の試作品ができているというので立ち寄る。


「どうです。自信作です」


 戦車の大きさはユンボの一番小さい奴ぐらいだ。

 当然一人乗り。


「魔石コーティングを装甲に施そう」


 魔石コーティングしてから、乗ってみる。

 操作レバーは二つしかない。

 右と左のキャタピラだけだ。

 前進と後退ができる。

 片方だけ前進とか入れるとターンするらしい。


 操縦にはすぐになれた。

 ただ、制御の精度が30センチぐらいだ。

 10センチぐらいの感覚で操作できるようになりたいものだ。


 ダンジョン、ゴブリンの巣穴に試作品の戦車で入った。

 ゴブリンが出てきたので戦車でひき殺す。


 今のところ不具合はない。

 ゴブリンの武器はどれも装甲に弾き飛ばされた。

 武器はパイルバンカーみたいなのがあるといいな。


 ひき殺すのは難しい。

 ゴブリンはわりと素早いからだ。


 遠くの敵はライフル銃があるから問題ないといえばない。

 丸ノコみたいに回る金属の円盤とかを前面に付けるのも良いかもな。


 少し楽しくなってきた。

 掛かってくる奴だけ相手して、ザコは無視しよう。

 1階層のボス部屋に乗り込んだ。


 敵はゴブリンファイター。

 大剣を持っている。

 戦車で突撃。

 ゴブリンファイターを突き飛ばした。

 転がったので、キャタピラでひく。


 1階層のゴブリンならこんなところか。


 2階層はザコが多い。

 前面の敵以外は無視して、前進する。

 ゴブリンは腕を前に出して、戦車を押しとどめようとした。

 力比べなら負けない。

 でもこれが100体とかなったらどうだろう。

 やはり丸ノコと、パイルバンカーは必要だな。


 2階層のボス、ゴブリンエリートを倒して、討伐を終えた。

 改善点の報告書を農機具メーカーに出した。


 事務所に帰って、各社のSNSをチェックする。

 ウルトラソフトウェアでは、ソーツシステムの名前が早くも登場してた。

 名前変えただけかよという意見もあったが、おおむね好意的だ。


 SLEのSNSは酷いものだ。

 罵詈雑言。

 これでもいくらかましになったのだ。

 利益の半分を救済に充てると宣言したからな。


 辻堂つじどうは大変だな。

 あとで高級ワインでも贈ってやろう。


「イメージ戦略かな」

「ソーツシステムのことですか」

「ああ、そうだ」


「CMしかないですね」

「学者に論文を書かせるかな」

「何か感動話でもあれば良いのですが」

「それだ。意思疎通できない病気の人を思考入力で会話させよう。何組もやれば感動話も生まれるに違いない」

「でも、あざと過ぎるような」

「うーん、じゃあ募集するか。ソーツシステムを使って起こった感動する話を教えて下さいと雑誌なんかに載せればいいな」

「それなら良いのが集まるかも知れません。それをショートドラマにしてCMで流せたらいいですね」

「提案してみよう」


 さて、気は重いがパラダイスサイバーの患者に会ってくるか。

 今回は病院。

 ただ、幻覚などの症状がパラダイスサイバーじゃない可能性もある患者だ。

 症状はボーっとしている。


「やってみてくれ」


 修復士の老人に医者がそう言った。


「【タイムバックリペア】」


 変わらないな。

 薬物でやられているのかもな。


「あなた達でも無理ですか」


 がっくりきたような医者。


「薬物に依存する前まで、巻き戻したら、治ると思いますが、それって幸せですかね」

「医者としては多少の副作用は仕方ないと思ってます」


 俺が尋ねると、そういう答えが。


 10年単位で記憶を失うのが多少なのかな。

 本人に治療の意思があるか確認したい。

 この副作用を背負うのは患者だからだ。


「俺には判断が付かないがやってみてくれ」

「わしも思う所があるが、仕方ないだろう。【タイムバックリペア】」


 患者の目に力が戻った。


「あれっ、会社にいたはずなのに」

「気を落とさないで聞いて下さい。あなたの脳と記憶は20年前に戻ってます」

「えっ」


 何と言っていいか分からないという顔をする患者。

 この患者は浦島太郎になるのだろうな。

 俺にはこの治療が良いのか悪いのか分からない。

――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               23,524万円

上級ポーション1個             303万円

彫像10体                  10万円

弾丸製造                  500万円

魔力買い         506万円

金剛糸                   105万円

癒しの手袋                  35万円

聖水                    155万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計            506万円 24,592万円 24,086万円




ファンド収支メモ


俺の出資1250口       125億円

客の出資8691口       869億1千万円


              支出       収入        収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               226,007万円

カイザーウルフ60体           4,500万円

ドッペルオーク12体             600万円

シャーマンオーク12体            720万円

エンペラータランチュラ12体       1,056万円

メイズスパイダー12体          1,020万円

エレファントスレイヤー12体       1,440万円

オーガ96体               5,280万円

弾丸製造                   500万円

酒                       12万円

転移輸送                   805万円

最下級ポーション               506万円

くず鉄20トンほど              203万円

シャイニングストーン           1,059万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計               0円 243,708万円 243,708万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン        -48億円

出資金          125億円


 2階層から出た癒しの手袋は治療効果のある手袋。

 といっても性能はポーションより劣る。

 ただこちらは繰り返し使えるだけだ。


 俺達の装備は。

俺 追憶のペンダント 不眠の冑 剛力の籠手 モノクル 身代わり人形 祈りの像 ミスリルのシャツ カモシカの足 戦車1号

藤沢ふじさわ 巧みの手 俊足のブーツ 力の腕輪 魅惑の香水 反射の胸当て

上溝うえみぞ 巧みの手 俊足のブーツ

番田ばんだ 不動の盾 猫の爪 堅固の胴鎧

拝島はいじま 祈りの像 足捌きの脛あて 鷹目の冑

御嶽みたけ 幻影のネックレス 耐衝の胸当て カモシカの足 不眠の冑


キープ 亜空間収納 千里眼の目隠し 身隠しのマント 変装の仮面 スキル鑑定の杖

    反射の盾×2 衝撃の盾 浮遊の靴 収納の壺 蛸の手 眠りのオルゴール

    金剛糸×2 オリハルコンの縫い針 熊の爪


 俺の装備に戦車1号が加わった。

 何号機まで開発が進むか分からないが、オーガとやり合える機体ができてほしい。

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