第106話 償いの始まり

 今日の討伐はオーガ3体だった。

 サクっと片付けて終わり。

 宝は蛸の手という天井にも張り付ける魔道具の手袋だ。

 キープしておく。


 次の討伐はカイザーウルフ2体。

 こちらも苦戦はしなかった。

 でた宝物は、眠りのオルゴール。

 聞いた者を眠らせる効果がある。

 ゼンマイが切れるまでだから永遠ではない。


 不眠の冑とセットで使えばそれなりに使える。

 だが、不眠の冑は全員分ない。

 とりあえずキープだ。


 西府にしふ議員を調べることにした。

 俺は身隠しのマントを身に着けて、議員会館に潜入した。

 出入りが激しいので簡単に中に入れた。

 意外に部屋は狭いな。

 簡単な応接室はあるが。

 待つ事、二時間。


「なにっ、献金を出さないダンジョンオーナーがいるだと!」


 西府にしふ議員が電話で怒鳴っている。


「暴力組織の者を向かわせて脅せ」


 俺はその様子をばっちり映像に収めた。

 ネタとしてはこれで十分だ。

 だが、盗撮は証拠にならない。

 捏造だと言えば、シラを切れる。


 スキャンダルにはなるだろうが、失脚するまでにはいかないかもな。

 話していた相手は秘書のようだから、秘書の尻尾切りで終わる可能性もある。

 暴力組織は俺の所に来るかな。


 俺はダンジョンの事務所で、書類仕事をしながら待ち構えた。


「おらぁ!!」


 怒号と共に扉を殴ったようだ。


「くそっ、何で出来てやがる」

「開いてるよ」


 扉を開けて入ってきたのは、スキンヘッドの曲がった金属バットを持った男がひとりと、パンチパーマのサングラスの男。

 金属バッドの男は手をさすっている。


「ケチるからこうなる。恨むなよ」

「【リフォーム】拘束」


 ダンジョンの壁から触手みたいな物が出て二人を拘束した。

 ダンジョン内の交番に行き事情を話すと、牛浜うしはま巡査が応援を呼んでくれた。


「協力ご苦労様です」


 二人を逮捕しにきた警察官がそう言った。


「うち以外にも被害が出たんじゃないですか」

「ああ、そう聞いている」

「参考までにこれをどうぞ」


 俺は西府にしふ議員が命令している動画データを渡した。

 西府にしふ議員が逮捕されるかと思いきや。

 刑事が話を聞きに来た。


「議員会館に不法侵入したな」

「なんの事です」

「動画データだ」

「ああ、あれ。協力者に撮ってもらいました。誰とは言えませんが、内部告発したかったようですよ。俺のところに相談が来ました。あなた達が、襲われるかも知れないと」

「誰だ?」

「言えませんよ。危害が及ぶかも知れないですから」

「言え!」

「やだな脅すのですか。この様子も録画してますよ」

「邪魔したな」


 刑事が帰って行った。

 本物の刑事か分からないが、まあどっちでもいい。

 録画したから顔は割れている。


 西府にしふ議員には敵として確実にロックオンされただろう。

 戦いだ。

 戦わないと。


 俺は久しぶりに、大船おおぶねさんの部屋に遊びに行った。


「むさくるしい所だがまあ座れ」

「はい」


「何か相談か?」

「俺がどうやら麻薬の元を作ってしまったみたいなんです」

「それは大変なことをしたな。償いたいのか?」

「償いは被害者を少なくすることでしようと思ってます。それしか出来ないですから」

「全部は無理かも知れないが、多くの被害者と面会するんだな。そしてそれを目に焼き付けろ。それが償いの出発点だ」


「やってみようと思います」


 俺は覚悟が足りないらしい。

 上っ面しか見てなかった。

 被害者がどれほど酷いのか見てない。

 そんなので償いなどちゃんちゃらおかしい。


 俺は顧客名簿を元に彼らの下を訪れた。

 修復士の老人を連れてだ。


 呼び鈴を鳴らす。


「はーい」

「パラダイスサイバーの被害者救済のために回ってます」

「そうですか。わざわざご苦労様です。お入り下さい」


槍太そうたさんに会えますか」

「暴れたりはしないので平気だと思います」


 槍太そうたさんがいる部屋に入ると、槍太そうたさんは壁を見て笑っていた。

 そして恐怖に顔を引きつらせ怯えた様子を見せる。


「やってみてくれ」

「こんなのだとは思わなかった。酷いな。わしのスキルのが役立つなら【タイムバックリペア】」


 修復士の老人がスキルを使う。


「あれっ? 俺、何してたっけ?」


 槍太そうたさんが正常に戻った。

 記憶が若干消えたらしいが、これぐらいの副作用は仕方ないのだろう。

 家族には感謝された。

 廃人を作り出してしまったんだな。

 俺は今日のことを心に刻んだ。

――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               43,731万円

上級ポーション2個             608万円

彫像10体                  10万円

弾丸製造                  500万円

花のブーツ                  22万円

反射の盾                  300万円

金貨22枚                 253万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計               0円 45,424万円 45,424万円



パーティ収支メモ


              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               45,124万円

オーガ3体                 153万円

カイザーウルフ2体             102万円

金剛糸                   105万円

弾丸60発          6万円

弾丸用魔石        150万円

付与魔法依頼        50万円

魔力買い         241万円

反射の盾         300万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計            747万円 45,379万円 44,632万円


ファンド収支メモ


俺の出資1250口       125億円

客の出資6985口       698億5千万円


              支出       収入        収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               121,219万円

カイザーウルフ60体           4,500万円

ドッペルオーク12体             600万円

シャーマンオーク12体            720万円

エンペラータランチュラ12体       1,056万円

メイズスパイダー12体          1,020万円

エレファントスレイヤー12体       1,440万円

オーガ96体               5,280万円

弾丸製造                   500万円

酒                       12万円

転移輸送                   844万円

最下級ポーション               538万円

くず鉄20トンほど              203万円

シャイニングストーン           1,284万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計               0円 139,216万円 139,216万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン        -48億円

出資金          125億円


 花のブーツと反射の盾がふたつ目だ。

 花のブーツはハズレだが、反射の盾はいずれ役に立つと思われる。

 シャイニングストーン事業が好調だ。

 単価の高い物は魅力的だな。

 ダイヤモンドに更に付加価値を付けるのだから、加工賃も上がるというもの。


 俺達の装備は。

俺 追憶のペンダント 不眠の冑 剛力の籠手 モノクル 身代わり人形

藤沢ふじさわ 巧みの手 俊足のブーツ 力の腕輪 魅惑の香水 反射の胸当て

上溝うえみぞ 巧みの手 俊足のブーツ

番田ばんだ 不動の盾 猫の爪 堅固の胴鎧

拝島はいじま 祈りの像 足捌きの脛あて 鷹目の冑

御嶽みたけ 幻影のネックレス 耐衝の胸当て カモシカの足


キープ 亜空間収納 千里眼の目隠し 身隠しのマント 変装の仮面 スキル鑑定の杖 反射の盾×2 衝撃の盾

    浮遊の靴 収納の壺 蛸の手 眠りのオルゴール


 蛸の手と眠りのオルゴールは何かの場面で役に立つに違いない。

 特に眠りのオルゴールは解析して複製してみたい。

 不眠症の解消に役に立つと思う。

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