第103話 サイボカロ

 今日の討伐はオーガ2体だった。

 慣れたものだ。

 接近戦ではないので緊張もしない。

 サクッと倒した。


 宝物は『反射の胸当て』。

 魔法を反射するらしい。

 反射の盾より使える。

 あっちは手がふさがるからな。

 サイズ自動調節はありがたい機能だ。


 次の部屋はカイザーウルフ2匹。

 特殊個体でもないのでやっぱりサクッと倒した。


 宝物は『星のきらめき』。

 ぶっちゃけるとプラネタリウム。

 オークションに出したら天文学者が興味を示した。

 星の位置を調べると異世界の場所が分かるらしい。


 異世界ではなくてこの銀河の別の星かも知れない。

 天文学者にとっては居住可能な惑星の位置は価値あることだと思う。


 ワープ航法ができた時に目的地があるのはいいことなのだろう。

 俺はそんな遠くには行きたくないが、転移で日帰りできるなら行ってみたい。

 ダンジョンの転移の有効距離はどれぐらいかな。


 部屋でテレビを点けると西府にしふ議員がダンジョン全ての国有化法案を提出すると息巻いていた。

 懲りないやつだな。

 献金なんかして甘やかすからそうなる。


 今回は協会に寄付したりしないぞ。

 村八分になっても構わない。

 イヤミを言われたら、言いたい事を言おう。


 トラップ鉄回収ロボットが完成した。


「何やらぼったくりしたようで申し訳ないです。0.1ミリ単位の精度が要求されない仕事は簡単でした」

「余った金はメンテナンス費用に回すということで話はついている。気にすることはないよ」

「では始動スイッチをどうぞ」


 俺は赤い色のボタンを押した。


 ロボットが動き始め、アームがトラップのスイッチを押す。

 別のアームが突き出された鉄槍を回収した。

 それを運搬ロボットが運んで行く。


 見ている分には楽しいな。

 でもこうやって人の仕事がロボットに取られるのを見ると何か考えさせられる。


 ウルトラソフトウェアに顔を出した。


「思考入力を使ったVRシステムを考えてます」


 説明する社員。


「ほう、面白いな」

「将来的にはVRMMORPGが作れたらなと思ってます。表情の思考入力はもう既にできています。病気の人用のロボット操作もできていますし。合体させればゲームは容易いと思います」

「なかなか良い考えだけど、手っ取り早く商品化出来るものとかないのかな」

「よくぞ聞いてくれました。思考入力で歌うという行為を考えまして。人工声帯に代わる物としてはもちろん。思考入力アイドルなんてものも考えてます。思考入力音声の良いところはどんな高い声も低い声も自由自在です。息継ぎの必要もありません」


「あー。熱意は分かった」

「いいえぜんぜん分かってません。熟練になれば一人コーラスなんてのもできるんです。VTuberの新時代が来ますよ」


「思考入力音声の恰好良い呼び方が必要だな」

「もちろん考えてます。サイボカロです。これは売れますよ。プログラムで男の声も女の声も自由自在」


 落ちが見えた。

 すぐに飽きられる可能性大だ。

 淘汰されると、リズム感だったり、感情を上手く込めたりするのが上手い人が生き残りそうだ。

 結局普通の歌手と変わらない。

 楽器のひとつとして認知されて終わりだな。

 そうなると生歌じゃないとという人が出てきたりするから、天辺は取れないな。


 最初は物珍しさで受けるだろうけどね。

 俺はAIが歌うようなのは好きじゃない。

 人工音声はどこか心が通ってない気がするんだ。

 サイボカロが流行らない事を祈る。


「あまり気乗りがしてないようですね。思考入力を使ったアートなんかどうですか」

「絵具で描いたのと違うのか」

「イメージを動画として出力できます。実はこれの裏技があって、寝る時に付けると、夢が録画できるんです」

「夢は忘れるから良いと思うが、悪夢なんか繰り返し見せられたらおかしくなりそうだ」

「そういうデータは消去して楽しい夢だけをコレクションするんです。デザイナーやクリエーターの人にはアイデアを夢に求める人もいて、好評だったですよ」

「色々と考えているのは分かった」


 夢を録画するのはいいかもな。

 犬とか猫の夢とか見てみたい気もする。

 だが、そういうのが全部分かると興ざめな気もする。


 売れる商品にはなるんだろうけど。

 エロい夢とかおちおち見れないな。

 そういうのを録画されたら死にたくなりそうだ。

 この商品が製品化されたらパスワードや生態認証のロックを掛けることを強く進言しよう。

 他人に夢を荒らされたくないと思うのはまともだと思う。

 でないと夫婦間のトラブルとか勃発しそうだ。

 あんな女性が好きだったのかと、目が覚めてからないなと思うこともしばしばだ。

 そんなのが暴露されたらたまらない。

――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               54,040万円

上級ポーション2個             608万円

彫像10体                  10万円

弾丸製造                  500万円

火球の杖                  108万円

オアシスの壺              2,874万円

金貨23枚                 265万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計               0円 58,404万円 58,404万円


パーティ収支メモ


              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               44,734万円

オーガ2体                 102万円

カイザーウルフ2体             102万円

星のきらめき                975万円

弾丸60発          6万円

弾丸用魔石        150万円

付与魔法依頼        50万円

魔力買い         258万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計            464万円 45,913万円 45,449万円


ファンド収支メモ


俺の出資1250口       125億円

客の出資5934口       593億4千万円


              支出       収入        収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し                69,706万円

カイザーウルフ60体           4,500万円

ドッペルオーク12体             600万円

シャーマンオーク12体            720万円

エンペラータランチュラ12体       1,056万円

メイズスパイダー12体          1,020万円

エレファントスレイヤー12体       1,440万円

オーガ96体               5,280万円

弾丸製造                   500万円

酒                       12万円

転移輸送                   803万円

最下級ポーション               528万円

くず鉄20トンほど              204万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計               0円  86,165万円  86,165万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン        -48億円

出資金          125億円


 空き部屋から出たオアシスの壺という魔道具は高値がついた。

 これは魔力を水に変えるという物。

 日本では災害時ぐらいしか活躍しないが、海外ではこの手の需要がある。

 藤沢ふじさわに渡した魔道具の本でコピーが作れれば大儲けなのだろうな。


 火球の杖はファイヤーボールが撃てるだけ。

 要らないので売った。

 銃の便利さより確実に下だ。

 それに魔法なら上溝うえみぞが使える。

 困ったら彼女に頼もう。


 俺達の装備は。

俺 追憶のペンダント 不眠の冑 剛力の籠手 モノクル 身代わり人形

藤沢ふじさわ 巧みの手 俊足のブーツ 力の腕輪 魅惑の香水 反射の胸当て

上溝うえみぞ 巧みの手 俊足のブーツ

番田ばんだ 不動の盾 猫の爪 堅固の胴鎧

拝島はいじま 祈りの像 足捌きの脛あて 鷹目の冑

御嶽みたけ 幻影のネックレス 耐衝の胸当て カモシカの足


キープ 亜空間収納 千里眼の目隠し 身隠しのマント 変装の仮面 スキル鑑定の杖 反射の盾 衝撃の盾


 反射の胸当ては、藤沢ふじさわが装備。

 星のきらめきはただのプラネタリウムなのに975万円の値が付いた。

 異世界の星が見れますという施設を作ったら人が呼べそうだから、元は十分取れるのだろう。

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