第89話 鉄貯蔵庫

 今日の討伐は赤いカイザーウルフが2匹。

 赤いカイザーウルフは前にやったので知っている早い奴だ。

 銃弾が当たるかどうかだが、前はスタングレネードで何とかした。


 今回もそれでいこう。


「閃光いくぞ。3、2、1、それっ」


 目をつぶると、キャインという声が聞こえた。


「よし射撃」


 目が見えない赤いカイザーウルフは良い的だ。

 すぐに倒れた。


 宝物はというと本だった。

 めくってみる。

 何やら回路図みたいな物が書いてあった。

 俺は欲しくないが、欲しい人ならこれは凄いお宝なのだろうな。


「先輩、それ意味が何となく分かります」

「じゃあやるよ」


「私もそれにはちょっと興味がある」


 拝島はいじまさんも本を覗き込んでそう言った。


「じゃあ、パーティの持ち物にしよう。ところでこれは何なんだ?」

「魔力回路ですよ。宝箱のと同じ個所があります」

「私もそう思う」


 魔道具の設計図か。

 作れたら大儲けなんだろうな。

 ただ解読には時間が掛かりそうだ。

 何しろ文字が見たことない奴だからな。

 たぶん異世界語だ。


「先輩、ウルトラソフトウェアの会社に個人で仕事を発注しても良いですか」

「構わないぞ」


 ウルトラソフトウェアは制御系の部門もある。

 ハードウェアが分かる人間が少なからずいる。

 魔力回路も電気回路も似たような物だろう。


 次の部屋は青いカイザーウルフ2匹だった。

 こいつはブレスを吐くのは分かっている。

 だけどスタングレネードと魔石弾のコンボに勝てるかな。


 スタングレネードを投げて目をつぶる。

 キャインという悲鳴が2匹分した。


 目を開けると青いカイザーウルフはブレスを吐く体勢になっていた。

 そんなの関係ないね。

 青い炎のブレスを吐かれたが、魔石弾は溶けずに、カイザーウルフを貫いた。

 ほどなくして決着が着いた。


 宝物は、金のスプーンだった。

 まあそれなりだな。

 エリクサーとかに比べるとかなり見劣りがする。

 これも異世界博物館行きだな。


 とにかく、今日の討伐は終りだ。

 今日はくず鉄回収の現場を見る。


 ズシャっという音が聞こえるのは前と同じだ。


「手を休めて良いぞ」

「「「はい」」」

「問題点や改善点はないか?」


「肉体労働なんで1時間ぐらいしか持ちません」

「鉄を回収するだけだが、鉄は重いからな。ロボットにやらせると効率が上がるかも知れないが」

「俺達は首ってことですか」

「いいや、フォークリフトに積んだり下ろしたり、とにかく何か仕事はあるはずだ。ロボットも開発するのに時間が掛かるから、先の話だな。だが、首にはしない、約束しよう」


「俺、ここで働いて、金属探知スキルが芽生えました。ダンジョンのある場所に鉄が固まっているのが分かります。取りに行けないのは分かってますが、もどかしくて、もどかしくて」

「取りに行けるぞ」

「えっ」

「どこだ」


「案内します」


 案内されたのはダンジョンの一角。


「この真下です」


「【リフォーム】穴。深さが足りないか」

「あと1メートルは行かないと」


「小休止するか」


 世間話をしながら魔力が溜まるのを待った。

 だいぶ彼らと仲良くなれた。


「よし、【リフォーム】穴。おお、鉄の色が見える。君、素晴らしいね。年収1000万で雇おう。仕事は今みたいに金属の場所を教えてくれりゃいい」

「上手くやったな。俺のスキルなんて剛力だものな」

「俺のは重量軽減だからな」

「今までは二人のスキルが羨ましかった。何時までも友達でいてくれ」


「社長、この鉄をどうやって採掘するんですか」

「穴を大きくして階段とか作るから、なんとかなるだろう。そうだ、重量軽減の君、君も年収1000万で雇おう。この採掘チームのリーダーだ。この鉄の塊を軽くするのが仕事だ」

「くそう、俺だけか」

「君も年収1000万にしてやろう。君は魔石弾を撃つ殺処分部屋の緊急要員になれ。重要な仕事だぞ。殺処分部屋からモンスターが出た時には対処するんだ」

「やります。やらせて下さい」


 貴重な人材を確保できたぞ。

 どんどん下から人材を引き上げよう。


 さて、魔石弾を製造しますか。

 魔石を前にして。


「【リフォーム】弾」


 これ一回で500万円だものな。

 古里こざとさんは優秀だ。

 たがが、1000万円で弾丸の製造許可なんてどうやったら取れるんだ。

 普通は無理だろう。


 それが人脈ということなんだろうな。

 俺にはない物だ。

 だが、何でもできる人間はいない。

 足りない部分は補って貰えば良い。

 肝心なのは補ってくれる人が協力しやろうという気にさせることだ。

 気持ちよく仕事をさせる。

 これの重要度が最近分かってきた。


 一度社員やアルバイトのスキル調査を実施したほうがいいな。

 隠れた才能がたくさんあるはずだ。

――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               34,490万円

上級ポーション3個             906万円

彫像10体                  10万円

弾丸製造                  500万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計               0円 35,906万円 35,906万円


パーティ収支メモ


              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               22,681万円

カイザーウルフ4体             204万円

弾丸60発          6万円

弾丸用魔石        150万円

付与魔法依頼        50万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計            206万円 22,885万円 22,679万円



ファンド収支メモ


俺の出資1250口       125億円

客の出資2918口       291億8千万円


              支出       収入        収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               53,324万円

カイザーウルフ60体          4,500万円

ドッペルオーク12体            600万円

シャーマンオーク12体           720万円

エンペラータランチュラ12体      1,056万円

メイズスパイダー12体         1,020万円

エレファントスレイヤー12体      1,440万円

オーガ96体              5,280万円

くず鉄115トンほど          1,158万円

人件費        3,000万円

鉄採取の機械       600万円

弾丸製造                  500万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計          3,600万円 69,601万円 66,001万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン        -48億円

出資金          125億円


 ダンジョンの鉄の貯蔵庫からくず鉄を採取する方法に切り換えた。

 どっちが楽かと言えばトラップからの方が楽だ。

 ただ、貯蔵庫からだと大漁に採れる。


 金属探査の彼には期待してる。

 希少金属の貯蔵庫もあるはずだ。

 宝物庫の類もな。

 いい人材を確保出来た。

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