第88話 オーガパーティ

 今日の討伐は剣を持ったオーガと、杖を持ったオーガとのペア。


「後衛から狙おう」

「基本だな」


 番田ばんださんも賛成してくれた。


「よし、撃て」


 攻撃を察して杖を持ったオーガが吠える。

 そして血の海に沈んだ。

 だが、魔法は発動された。

 剣を持ったオーガは光をまとっている。


「どんな魔法かは知らんが、撃て撃て」


 剣を持ったオーガは剣をきらめかせると銃弾全てを弾いたようだ。

 当たった銃弾がない所と火花が散ったところからの想像だ。


「【フォァサイト】。駄目だ。防がれる未来しか見えない」


 予見スキルを使った拝島はいじまさんが焦った声を出した。

 慌てる必要はない魔法ならいつか切れる。


「一時撤退」


 俺達が部屋の外に出ると、オーガも部屋の外に出てきた。

 背中を見せるとばっさりやられる。

 予見スキルがなくても分かる。


 じりじりと後退り後退。

 間合いは徐々にせばまった。


「【リフォーム】槍」


 槍を生やしたが、オーガは飛び退いて避けた。

 間合いが開いたのは嬉しいが、このままだとやられる。


「【リフォーム】糸」


 とりあえずダンジョン構成物で糸を張った。

 嫌がらせにはなるだろう。


 オーガが構えて力を溜めている。

 糸を切るつもりなのだろう。


 オーガが剣を振るった。

 そのタイミングで全員が一斉射撃した。

 言わなくても通じたらしい。

 考えることは一緒だ。


 弾丸はオーガを貫き、オーガは息絶えた。

 強敵だった。


 モンスターがパーティの連携をみせると脅威度が増す。

 今後は厳しい戦いになるんだろうな。


 オーガの部屋の宝物はエリクサーだった。

 強敵に相応しい宝だ。


 次の部屋はオークキングとオーククイーンとオークベビーがたくさんだった。


「フゴォ」


 オーククイーンが前に出てベビー達を庇う。

 容赦なく蜂の巣にした。

 藤沢ふじさわ上溝うえみぞさんは顔を背けていた。

 オークを飼育するつもりはない。


 オークキングはなんとオークベイビーを前面に押し出した。


「卑怯者からやるぞ」


 顔を背けていた藤沢ふじさわ上溝うえみぞさんは鬼のような形相で銃を撃っていた。


「女性陣はしんどいだろうから、男性陣でベビーをやるぞ」

「ですね」

「おう」

「はい」


 ベビーは弱かった。

 動きも鈍いし、反撃するという気概がない。


 ほどなくしてベビーは死に絶えた。

 子供を殺すのはためらわれる。

 だが、そんなことも言ってられないんだよな。

 難しい問題だ。


 宝物は宝石の嵌ったバックラーだった。

 高く売れそうだがこれも異世界博物館行きだな。


 今日の討伐はこれで終りだ。


 事務所に帰るとオーガの革が値上がりの予兆と業者からメールがあった。


「もしもし、メールみたけど、オーガの革が上がりそうなんだって」

『ええ、なんでも太鼓に使うとかで。良い音が出るらしいですよ』


「へぇ、あの頑丈なだけの皮がね。太鼓になるとは意外な用途だな」

『オーク革も良いそうですが、やはり一番はオーガみたいです』


「そのうちオーガも増産できるから期待しててくれ」

『ええ、待ってますよ』


 電話を切ると事務所に来ていた番田ばんださんが、こんなことを言いだした。


「三味線の革をモンスターで代用したい」

「よし売り込んでみるか」


 業者に革のサンプルを用意して貰った。

 三味線作りの工房に押し掛ける。

 サンプルを出すと、これが良いと言って出したのは、キングウルフの革だった。


番田ばんださん、良かったな」

「おう、合成革が使われたりするけど、猫の革は我慢できない」


「犬も使いますが」


 工房の職人さんがそう教えてくれた。


「犬は別に良い。気にしない」

「俺は犬も可哀想だと思うよ。キングウルフも犬みたいなものだけど」

「確かにペットを飼われている方は思う所がありますよね。ですが文化なので」


 まあ、牛も豚もペットとして飼っている人は可愛く思うか。

 太鼓には馬の革とかも使うんだよな。

 乗馬の趣味の人は嫌だろうな。


 犬とか猫を食う場所もあるんだよな。

 馬肉とかクジラ肉は俺も食ったことがあるが。

 とにかく難しい問題だ。


 モンスター保護団体の『愛の甘噛み』からはまた何か言われそうだが、通行の邪魔にならない場所に、キングウルフの殺処分ロッカーを2階層の通路に設置するか。

――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               33,078万円

上級ポーション2個             602万円

彫像10体                  10万円

弾丸製造                  500万円

上級解毒ポーション             300万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計               0円 34,490万円 34,490万円


パーティ収支メモ


              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               12,531万円

オーガ2体                 102万円

エリクサー              10,000万円

オーク                   254万円

弾丸60発          6万円

弾丸用魔石        150万円

付与魔法依頼        50万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計            206万円 22,887万円 22,681万円



ファンド収支メモ


俺の出資1250口       125億円

客の出資2697口       269億7千万円


              支出       収入        収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               37,993万円

カイザーウルフ60体          4,500万円

ドッペルオーク12体            600万円

シャーマンオーク12体           720万円

エンペラータランチュラ12体      1,056万円

メイズスパイダー12体         1,020万円

エレファントスレイヤー12体      1,440万円

オーガ96体              5,280万円

くず鉄21トンほど             218万円

弾丸製造                  500万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計               0円 53,324万円 53,324万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン        -48億円

出資金          125億円


 弾丸製造は美味しい。

 だが、スキル付与で銃に硬化を掛けるのが間に合わない。

 俺達が前にやってたように銃身を削って使っているのが現状だ。

 切り札として配備してる警察や自治体もある。

 こちらの銃のスキル付与は追々やっていくのだろうな。

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