第87話 分譲完売

 今日は討伐が休みだ。

 ウルトラソフトウェア社に押し掛けている。


「どうです。思考入力は?」

「慣れると手より早いですね。それとAIを複合させれば複雑な操作も一瞬です。例えばファイルAを開けとかこういうのが一瞬で出来ます」

「ほう、良いですね」

「先輩、羨ましそうですね。前の仕事に戻りたくなりました?」

「いいや。ダンジョンを放り出すわけにはいかない。俺にしか出来ないことをやっているから、やりがいはある」

「そうですか」


「残念そうだな。いつでもパーティを抜けていいんだぞ」

「ついて行くと決めましたから」


「羨ましいですね。仲のよさそうなカップルで」

「俺は弱いから、色んな人の助けがいる。仲良くもなるさ。ところで俺の魔力はいま無尽蔵に近い。俺のネットワークライイングスキルをコピーする下地は出来た」

「いよいよ始まりますね」


 上溝うえみぞさんを呼んで、俺のスキルをウルトラソフトウェア社の社員に植え付ける。

 これで社員は魔石とお客さんを繋げられるはずだ。


 モンスターと繋いで魔力を吸い取るのは条例待ちだな。

 きっと凄く時間が掛かるに違いない。

 それにAランクモンスターが反抗しないでいてくれるかどうか。

 甘噛みしても大惨事になりそうだ。


 区長に電話したら、身体強化系スキル持ちから始めるつもりらしい。

 力負けしないようにするためか。

 区長も考えているな。


 モンスターを弱体化させられればもっといいかも。

 魔力を抜いただけじゃちょっと心許ない。

 呪いやデバフは欠点がある。

 呪いはレジストされるし、デバフは時間で効力が切れる。


 待てよ。

 ダンジョンはモンスターを支配しているよな。

 それを俺のスキルでリフォームできれば。


 思い立ったが吉日。

 福生ふっさ達の部屋を訪ねた。


「モンスターの支配をやってみたい」

「痛くないならどうぞ」

「【リフォーム・ネットワークライイング】、この部屋に繋がれて、飼い主の指示に従え」


「カイザーちゃんが凄く安定しました。いつもより穏やかです」

「まあな。元からある機能をリフォームして使っただけだからな」


 これはダンジョン内しか出来ないな。

 ダンジョン内に住んでもらうのが一番良い。

 他所のダンジョンで捕まえたモンスターをここに連れて来てもいいな。

 ペットにできそうなのは狼系と猫科系と爬虫類系か。

 そう言えば妖精系とかもいるんだったな。

 ピクシーの系統だ。

 魔法を使うから暴れると手が付けられないらしい。

 といってもCランクだ。

 ベテラン冒険者なら捕獲できる。


 俺は久しぶりにメッセージを配信することにした。


「ピクシーとダンジョンで暮らしませんか。ただ危険もあるので冒険者に限ります」


 そういうメッセージと福生ふっさが飼っているカイザーちゃんの映像を撮った。

 反応はあった。

 ピクシーは前から飼ってみたかったという男冒険者が圧倒的に多い。

 動くフィギュアだものな。


 分譲マンションが5部屋も売れた。

 男性4人に、女性1人。

 みんなピクシーの籠を手に持っている。

 テイムスキルはその5人に付与済みで、魔力の吸い取りの繋がりも作ってやった。


 ピクシーは暴れないで、大人しく鳥かごに入っている。

 飼い主から蜜を貰って満足そうだ。


 こんな需要があるとはな。

 ピクシーなら反抗されても不意を打たれたりしない限り冒険者なら平気だろう。

 いいモデルケースになったな。

 データを取らせてもらうとしよう。


 プチウルフを連れてきた人がいた。

 プチウルフは小型犬ほどの大きさでFランクモンスターだ。

 テイムスキルでもない限りは人には慣れない。

 可愛いモンスターだというのは言えるけどもな。


 その人も部屋を買ってくれた。

 爬虫類と蜘蛛のモンスターの申し出があったが、断った。

 逃げ出すと大騒動になるからな。


 プチウルフの映像を撮ったところ、追加であと2人部屋を買ってくれた。

 プチウルフの飼い主は全て女性冒険者だ。

 ホーンラビットという問い合わせがあったが住める部屋はもうない。

 2階層制覇に期待してと言って断った。


 ペット需要があるとは思わなかった。


「我々の願いを叶えてくれてありがとう」


 福生ふっさに感謝された。


「俺にも得になっているから」

「モンスターとの共存が叶う日が来るなんて、夢のよう」

「まだ分からないさ。1年、問題が無かったら、この方法を推し進める。それに一般家庭にこの方法を普及させるにはダンジョンによる支配ではない別の方法が必要だ」

「私達もいろいろと模索しようと思います」


「全てのモンスターと共生できる日が来るといいな」

「ええ」


 ドラゴンとか従えてみたいな。

 まあ無理だろうけど。

 だけど、夢は大きくだ。

――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               41,721万円

上級ポーション2個             610万円

彫像10体                  10万円

弾丸製造                  500万円

金貨19枚                 219万円

分譲8部屋              40,000万円

ファンド投資    50,000万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計         50,000万円 83,078万円 33,078万円



ファンド収支メモ


俺の出資1250口       125億円

客の出資2415口       241億5千万円


              支出       収入        収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               22,645万円

カイザーウルフ60体          4,500万円

ドッペルオーク12体            600万円

シャーマンオーク12体           720万円

エンペラータランチュラ12体      1,056万円

メイズスパイダー12体         1,020万円

エレファントスレイヤー12体      1,440万円

オーガ96体              5,280万円

くず鉄22トンほど             223万円

弾丸製造                  500万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計               0円 37,993万円 37,993万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン        -48億円

出資金          125億円


 住めるようにリフォームした部屋が完売した。

 ペット需要は強いということが分かった。

 ピクシーを飼いたい女の子とかもいるはずだ。

 安全性が確認されたら。

 一般でも募集してみよう。

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