第83話 会社乗っ取りの策

 今日の討伐はオーガ2体だった。

 銃弾の雨を前に、呆気なく血だまりに沈んだ。


 宝箱は分からない銀色の金属インゴットだった。

 貴金属なら当たりだ。


 次の部屋はカイザーウルフ3体だった。

 ステップを踏まれると当てづらいが、部屋の広さは10メートルほどだ。

 狭いから、駆けまわったりは出来ない。


 今日も討伐は問題なかった。

 宝物は上級解毒剤だった。

 これは当たりかな。


 さて、前に勤めてた会社の乗っ取りに動くとするか。


 オーナーとアポを取った。

 オーナーの倉見くらみは少し頭がはげた中年の男性で資産家だ。

 100棟を超える不動産を持っている。

 なんでソフトウェア会社をやろうと思ったかと言えば、恰好良かったからだ。

 飲み会でそう話していた。

 最先端みたいな気がしたんだそうだ。

 若い頃、飲み屋のおねーちゃんに自慢したかったとも言っている、


 今やソフトウェア会社は珍しくもない。

 続ける意味などないだろう。

 買収に応じると踏んでいるがどうなるか。


「お会い下さり、ありがとうございます」

「おう、会社を辞めたとは聞いていたが、大した出世だな。あのファンドな。俺も出資してる。きょうは良い話を聞かせてもらえるとありがたい」

「ソフトウェアをやっているサイバーリーディングエッジ社、SLEを私に売りませんか?」

「いくら出す」

「20億」

「これでもね。先を見る目は持っているんだ。不動産業界は厳しい。進出するならコンピューターとくにAIだろう」

「あの会社にAIを作るような技術はありません」

「だが技術は進歩している。真似事の劣化版なら1時間で出来ると聞いているぞ」

「ええ、既存の技術の本を読めばたしかに可能です」

「だろ。将来性を考えるとソフトウェア会社を手放すのは惜しい。黒字だからな。不動産には赤字ギリギリの物件もあるんだぞ。とにかく将来性はあると見てる。それに金じゃないんだよ。AIを開発してるっておねーちゃんに自慢したい」


 これは駄目そうだな。


「そういうことなら、出直します」

「次は儲かる話を持って来てくれ」

「ええ、失礼します」


 しょうがない。

 プランBでいくか。

 俺はライバル会社のウルトラソフトウェアに行った。

 この会社を買収するつもりはない業務提携してSLEの業績を下げるのだ。

 どのネタでいくかと言えば。


「我が社が開発した思考入力機器です」


 なんのことはない、俺のもっているスキルであるネットワークライイングを使って魔石と繋ぐのだ。

 そして魔石から微弱な電気を発生させる。

 それを読み込むだけだが。

 読み込み機器は出来てない。


 出来ているのはスキルで魔石と繋げるまでだ。

 テスターで電気が発生しているのは確かめてある。


「ほう、私がやっても」

「はい、【ネットワークライイング】。どうぞ」


「おお、何か思考すると電気が出るね。これは凄いな。細かい思考を読み取れなくても、それなりに効果を発揮しそうだ」

「事務処理の入力作業がこれで出来るようになると、それに付随するソフトで物凄く儲けられます」

「なるほど。シェアを大きく奪えるね。だが、魔石と繋ぐのは君しか出来ないのだろう?」


「ええと、仲間にスキルをコピーできる者がおります。その者のスキルで私のスキルをコピーすれば」

「おお、魔石と繋ぐことができる者を育成できる。その者が会社を辞める時はスキルを返還する契約にすればいい」

「ですね」


 好感触で提携の話は進んだ。

 思考として魔石の発する電気を読み取る装置だが、数時間のうちにできた。

 だよね。

 電気信号を受け取るだけだから。

 だだ、受け取った電気信号をどう思考として読み取るのかはまだデータが足りない。

 だが、そのうち出来ると思われる。

 そして、その日のうちに困ったことが起こった。

 ウルトラソフトウェア社に駆け付けてみると。


「魔石から火が出たのです」


 ああ、魔石からはエネルギーが放出させるのだったな。

 電気だけとは限らんわけか。


「【ネットワークライイング】。これでどうです」


 ネットの情報を電気を出す思考だけに制限した。


「火は出ないね。でもあれはあれで凄い技術なんじゃ。スキルなしに魔法が使えるんだよ」

「安全を考えたら攻撃魔法はないですね。我が社としてはそういう目的で販売するつもりはございません」

「そうですね。銃刀法みたいに法律が必要になります。スキルをコピーされた社員の教育をしっかりやらないと」


 俺は魔石を消費することで魔法が使えるらしい。

 リフォームスキルと銃があるから要らないが、護身用に魔石と思考を繋いで持っておこう。


 夢の技術を一つ発明したようだ。

 SLEを買収したら、思考入力対応のソフトウェアとハードウェアを開発させよう。

 その日は遠くないはずだ。



インゴット

上級解毒ポーション

討伐を終えた部屋からマントが出た

――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               40,120万円

上級ポーション2個             606万円

彫像10体                  10万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計               0円 40,736万円 40,736万円


パーティ収支メモ


              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し                3,627万円

オーガ2体                 102万円

ミスリルインゴット          10,140万円

カイザーウルフ3体             153万円

上級解毒ポーション             300万円

ライフル9丁       693万円

弾丸60発          6万円

弾丸用魔石        150万円

付与魔法依頼        50万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計            899万円 14,332万円 13,423万円



ファンド収支メモ


俺の出資1200口       120億円

客の出資1487口       148億7千万円


              支出       収入        収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               32,013万円

カイザーウルフ60体          4,500万円

ドッペルオーク12体            600万円

シャーマンオーク12体           720万円

エンペラータランチュラ12体      1,056万円

メイズスパイダー12体         1,020万円

エレファントスレイヤー12体      1,440万円

オーガ96体              5,280万円

くず鉄23トンほど             231万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計               0円 46,860万円 46,860万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン        -64億円

出資金          120億円


 ミスリルのインゴットが高すぎる。

 そりゃ、魔力で硬くなる夢の金属だものな。

 高すぎて弾丸には向かないが、F1や宇宙船には使われている。


 それと2階層の空き部屋からマントの宝物が出た。

 異世界博物館行きだな。

 キープしておこう。

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