第81話 モンスター保護団体

 今日の討伐は休み。

 俺はモンスター保護団体を訪ねることにした。

 やつらの言い分も聞かないとな。

 アポを取ってみたところ、すぐに会えるというので、モンスター保護団体の事務所にお邪魔した。


 事務所は雑居ビルの4階にあって、入口の扉にはウルフ系モンスターのポスターが貼られていた。

 ノックしてから開ける。

 小さいカウンターがあり。

 呼び鈴が置かれていた。

 御用の方は鳴らして下さいか。

 呼び鈴に手を置くとチリンと音がした。


「はーい」


 奥から人が出てきた。


「約束とした戸塚とつかです」

「はい、うかがってます。応接室にどうぞ」


 こぢんまりとした応接室入る。

 4人入れば一杯になる広さで、家具も安っぽい物だった。


「お待たせしました」


 代表と思われる男が出てきた。


福生ふっさです。モンスター保護団体『愛の甘噛み』をやってます」


 福生ふっさは名刺を差し出してきた。


戸塚とつかです。ダンジョン分譲コーポレーションの社長をしてます」


 名刺交換をしたところ相手の顔が険しくなった。


「何か?」

「その名刺入れモンスター素材ですよね」


「オーガの革です」

「気にいりませんね。プラスチックかビニールで良いじゃないですか」


 さっそく、議論になるな。

 そういう展開を待っていた。


「オーガは人食いです駆除するのにためらいはないですよ。殺したならその素材を余すところなく使うのが供養だと思ってます」

「ダンジョンのモンスターの討伐は必要ですか?」

「スタンピードが起こりますから必要です」

「スタンピードなら起こしたら良い。あれは神の罰です。甘んじて受け入れるべきかと」

「ダンジョンの中に宝物を置いてあるのはなぜです。討伐して手に入れろと言わんばかりじゃないですか」

「あれは誘惑です。誘惑に耐えろと言っているに違いありません」


 相容れないのが分かったよ。


「人間を犠牲にしてまで、モンスターを救う価値はありますか」

「あります。モンスターは友達です。友は尊重すべきです」

「友ですか。まるでテイマーみたいなことを言いますね」

「分かりますか。公然の秘密にしてますが我々の団体加入資格はテイムスキルです」


「そのテイムスキルでモンスター同士を戦わせたりしないのですか?」

「なんとおぞましいことを」


 この団体がどういうものか理解した。

 テイムしたモンスターをペットや家族として見ているのだな。

 モンスター素材に対して思うのは、愛猫家が三味線を見て不快に思うのと一緒か。


「あんたらの言い分は分かった。俺達のことは放っておいてくれ、俺もそっちには干渉しないからと言うのでは駄目か」

「駄目ですね」

「じゃあモンスター全てをテイムして管理しろよ」

「出来ないのは分かっているでしょう。魔力には限りがあります」


 頭ごなしに否定するのは文化の違いを受け入れないのと一緒だ。

 ならば。


「俺は提案したい。ダンジョンの中にモンスター動物園を作る。ダンジョンはモンスターが暮らす環境としては自然だ。いうなればサファリパーク。これで手を打たないか」

「ふむ。モンスターが人類の友だとアピールできる場ですか。よろしい、協力しましょう。ですが、モンスターの殺処分事業を認めた訳ではないですよ。モンスター動物園でそのことをアピールさせてもらいます」

「そのくらいなら、良いさ」


 福生ふっさと話し合いがついた。

 モンスターを見世物にするのは抵抗がないのだな。

 2階層のボス部屋はモンスター動物園だな。

 3階層のザコ部屋全部をモンスター動物園にしても良い。


 モンスター動物園に通うとスキルが芽生える。

 人類を強化するって意味でも良いことかもな。

 ただ教育制度を変えないといけない。

 小さい頃からスキル使用のモラルとか叩き込まないとな。

 ただスタンピードの被害者は減るだろう。


 対抗手段としてスキルがあれば、スタンピードに巻き込まれても、生き残る可能性は高くなる。


 モンスター動物園に見学に来る資格は小学校高学年からにしよう。

 幼稚園児が戦闘スキルを持って暴れるのは見たくない。


 このダンジョンの入場資格も10歳以上にしないといけないかな。

 モンスター動物園が完成したら考えよう。


 俺は会社のホームページとSNSにモンスター動物園を計画中との記事を載せた。

 反響はあった。

 近距離でカイザーウルフを見たいなんて声が多数上がった。

 俺はテイマーが管理する予定なので、毛皮に埋もれたり撫でたりも出来ますよと書いた。


 反響は広がった。

 許可の申請とかは全部福生ふっさに振ろう。

 区長も味方についているし、申請は通るはずだ。

 2階層の制覇まで、まだだいぶ掛かる。

 それまでに準備は整うと思う。

――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               28,712万円

上級ポーション2個             610万円

彫像10体                  10万円

ファンド配当             36,000万円

配布金の寄付    26,140万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計         26,140万円 65,332万円 39,192万円



ファンド収支メモ


俺の出資1200口       120億円

客の出資1161口       116億1千万円


              支出       収入        収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               73,119万円

カイザーウルフ60体          4,500万円

ドッペルオーク12体            600万円

シャーマンオーク12体           720万円

エンペラータランチュラ12体      1,056万円

メイズスパイダー12体         1,020万円

エレファントスレイヤー12体      1,440万円

オーガ96体              5,280万円

くず鉄22トンほど             228万円

配当3%      70,830万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計         70,830万円 87,963万円 17,133万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン        -64億円

出資金          120億円


 ファンドで3%の配当を配布した。

 それと1世帯辺り給付金10万円だ。


 これで、住民の反対運動がさらに減るだろう。

 自然消滅するのも時間の問題だな。

 いま塀の前で声を上げている人はいない。

 給付金と引き換えの誓約書がこれほど効果を発揮するとは思わなかった。

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