第74話 オーク肉祭り

 今日も朝一で通路のモンスターリスポーン潰し。

 キングウルフにもだいぶ慣れてきた。

 この分だとカイザーウルフにも対応できるだろう。


 企業イメージアップということで、買取業者主催でオーク肉祭りを開いた。

 メインスポンサーはダブコーだ。


 オークカツ、オークの角煮、オークステーキなどの様々な料理が並ぶ。

 区の多目的広場で開催したのだが、すぐに人でいっぱいになった。


 ただで美味い飯が食えるのだから、人が集まるのも頷ける。


「先輩、何か食べましょうよ」


 俺は藤沢ふじさわとイベントに来ていた。


「じゃあ、オーク骨ラーメンにするか」

「良いですね」


 オークの背油は臭みがほとんどない。

 なのにオーク骨のコクは絶品だ。

 金を払うとすれば3000円からだそうだ。

 高級ラーメンだな。


 レンゲでスープをすくってゆっくりと味合う。

 まろやかなコクと旨味が口の中に広がった。

 すこしフルーティな感じもする。


「果物の爽やかな感じがする。ユズでも入っているのかな」

「先輩、オークはグルメらしいですよ。果物に目がないそうです」


 オークの肉は美味いから、それで同族の死骸を食っちまうのか。

 理由が分かったところでなんの進展もない。

 2倍体を防ぐには不味い調味料を作り出して死骸に掛けるという手が使えるかもな。


「先輩、考え事ですか。ラーメン伸びますよ」

「すまんすまん」


 食べやすい温度になったラーメンを一気にかき込む。

 ふぃー、ごちそう様。


「あなた達、人型の生物を食べて気持ち悪くないのですか!」


 拡声器でおばさんが怒鳴っている。

 まあな、でもサルを食う所もあるぞ。


 おばさんの周りにはモンスターも保護すべき動物だと書かれたプラカードを持った人たちが多数いる。

 モンスター保護団体だな。

 オークと話し合えると思ったら、やってみると良い。

 それ以前に外来生物だろう。

 駆除すべきものだ。

 駆除したら、食えるなら食ってやるのが礼儀だと思う。


 イベントのスタッフがモンスター保護団体と対峙すると、どういうわけかモンスター滅ぼすべしと書かれたプラカードを持った団体が現れた。

 Tシャツにはモンスター被害者の会と書かれている。

 スタンピードの被害者か。


 二つの思想をもった相容れぬ団体が一触即発の雰囲気を出し始めた。


 やばいな。

 イベントが滅茶苦茶になると企業イメージが台無しだ。


藤沢ふじさわ、冒険者ギルドに行って100人ばかり人を集めてくれ。そうだな一人日当10万でいいだろう」

「はい、すぐに行ってきます」


 藤沢ふじさわが駆け出した。

 そして、冒険者の一団がやってきた。

 冒険者は手を繋いで壁を作って、モンスター保護団体とモンスター被害者の会を会場から押し出した。

 そして、しばらくしてパトカーがやってくる。


 警察が事情を聴いて、二つの団体は解散した。


「先輩、ふたつの団体は無許可で集まったらしいですよ」

「許可があろうがなかろうが、楽しい雰囲気を壊す奴は大嫌いだ。苦情を言うのなら、イベント開始前に買取業者へ言うべきだ」

「ですね。ポスターやらなんやらで告知してますから、当日に押し掛けなくても」


「冒険者の手配、ありがとうございました」


 スタッフがお礼を言いにきた。


「何事も無くて良かったよ」

「本当ですね」


「俺としてはモンスターと共存できるならしたい。だが、害獣は駆除するしかないだろう。モンスターはもれなく人食いだからな。人間の味を覚えた熊みたいなものだ」

「難しい問題ですよね」

「まったくだ」


 神がいると俺は思っている。

 ダンジョンのありようがそれを思わせる。

 地震や火山のエネルギーを吸い取って、そらにゴミ問題解決だからな。

 きっと、モンスターの数が増えすぎてどうしようもない世界があるのだろう。

 だから、それを地球に持ってきたと思う。


 モンスターの殺害を非難するなら、地球に持ち込んでいる神みたいな存在に文句を言うべきだ。

 ダンジョンコアまで辿り着けたら神と出会えるのだろうか。

 それともダンジョンコアが黒幕だったりして。

 それはないな。

 生物が考えたにしては、ダンジョンの仕組みは人を理解しているとしか思えない。

 それに、ダンジョンコアの存在はまだ確認されていない。

 魔力の流れを統括する何かがあるということが推測されているだけだ。

 Fランクダンジョンでも深層になると、ドラゴンクラスがボスとして出てくるらしい。

 らしいというのは入って出てきた者がいないからで。

 ボス部屋の扉の向こうから聞こえてきた叫び声に、ドラゴンが出たという物が記録されているだけだ。


 ダンジョンコアに会えれば、神に繋がる何があると俺は思っている。

 とにかく、ドラゴンぐらい朝飯前に倒せるようにならないと、もろもろの問題は解決しないだろう。

――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               18,658万円

上級ポーション2個             610万円

彫像10体                  10万円

肉祭り協賛金       600万円

冒険者依頼金     1,000万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計          1,600万円 19,278万円 17,678万円


パーティ収支メモ


              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し                6,164万円

オーク5体                 325万円

キングウルフ17体             765万円

ライフル6丁       462万円

弾丸60発          6万円

弾丸用魔石        150万円

付与魔法依頼        50万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計            668万円  7,254万円  6,586万円


ファンド収支メモ


俺の出資1150口       115億円

客の出資368口        36億8千万円


              支出       収入        収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               61,675万円

カイザーウルフ60体          4,500万円

ドッペルオーク12体            600万円

シャーマンオーク12体           720万円

エンペラータランチュラ12体      1,056万円

メイズスパイダー12体         1,020万円

エレファントスレイヤー12体      1,440万円

オーガ96体              5,280万円

くず鉄22トンほど             225万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計               0円 76,516万円 76,516万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン        -64億円

出資金          115億円


 オーク肉祭りは盛況のうちに終わった。

 一般人に対するモンスター食材のイメージアップにつながったと思いたい。

 モンスターは脅威だけど、管理されたダンジョンは脅威ではないと訴えたい。

 配信もしているが、手ごたえはない。

 段々と風向きが変わることを祈る。

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