第66話 スキルコピー

 通路のモンスターリスポーン潰しの作業は順調だ。

 重さを付与した魔石弾にオークは太刀打ちできない。

 向こうは飛び道具がないからな。


 今日は通路で、キングウルフと出会った。

 キングウルフはカイザーウルフより一回り小さい。

 それでもトラぐらいはあるが、銃の敵じゃなかった。


 あー、魔石弾はオーガにも通用しそうだ。

 通用しないのは亀とかのモンスターぐらいかな。

 何となくそう思った。


 さてと1時間ほどの討伐が終わったから、事務仕事だな。

 状況を整理することにした。


 1階層が54のザコ部屋とボス部屋。

 住める状態になった部屋が31部屋。

 分譲販売したのが11部屋。

 貸しているのが2部屋。


 分譲販売した殺処分部屋が5部屋。

 俺が運営している殺処分部屋が10部屋。


 住めるようにリフォームした部屋に殺処分ロッカーを置けるけど勿体ない。

 第三セクターをやるには部屋数が足りないな。

 早く2階層を制覇しないと。


「セカンドスキルに目覚めました」


 上溝うえみぞさんが報告にきた。


「どんなスキル」


「コピースキルです。スキルをコピーできるみたいなんですが、10分の1ぐらいに劣化するらしいです」

「誰のスキルでもコピーできるの?」

「ええ」


 強いスキルなんだが、使い所が難しそうだ。

 もしかして。


「物に対してもスキルをコピーして付けられちゃう?」

「ええ、可能だと思います」


 特殊な銃弾が作れるな。

 今のところ、パーティメンバーだと番田ばんださんのサンダーナックルぐらいだけど、それでもあると違うよな。


「詳しく教えてくれ。銃弾に番田ばんださんのサンダーナックルを込める時はどうやる」

番田ばんださんに来てもらって、番田ばんださんにスキルを使って貰います。それで私のスキルを使えば、銃弾にスキルが込められます」


 本人にスキルを使って貰わないとコピーできないのか。

 となると回数は限られるな。


「使い道はあとでゆっくり考えよう。素晴らしいスキルだと言っておく。最強かも知れない。猫にスキルコピーとかするなよ」

「分かってますよ。猫ちゃんを戦いに出すなんて猫好きとしては許せません」


 テイマーのスキルに芽生えた人間がいたら、動物にコピーするのを考えよう。


 日用品を買いにダンジョンから出た。

 ありゃ、デモを再開してる。


「ダンジョンは出て行け」

「街の平和を乱す奴を許すな」

「損害賠償に応じろ」


 おー、でも前のデモの時より人数が減っているのかすぐに判った。


「汚い切り崩し工作は辞めろ」


 あー、切り崩し工作が効いているのか。

 デモをしても土地の価格が戻らないのはみんな知っている。

 ただ怒りの矛先がないだけだ。

 デモに参加しないという同意書に判を押すと給付金が貰える。

 俺はこれからも出すつもりだから、時間が経つとどんどんデモの人数は減るんだろうな。


「あのな。そうやって俺にごねても仕方ないって分かっているだろ」


 俺はつい言ってしまった。


「お前のせいでみんな迷惑してるんだ。謝れ」

「可哀想だとは思うよ。でも俺も被害者なんだ。同じなんだよ」

「いや、違う。お前はダンジョンで儲けている」

「俺は前向きにいこうと考えただけだ。行動しなきゃどうにもならない。給付金だって儲けないことには出せない」

「屁理屈だ」


「俺は加害者じゃない。被害者だ。ただ悪足掻きしてその行為が金を生んだだけだ」

「話にならん」


 話にならないのはこっちだよ。

 でもこじれた住民感情は元には戻らないのだろう。

 怒りの矛先として俺がぴったりきてしまった。


 俺としては、儲けて余剰金で給付金をねん出するだけ。

 それが俺の誠意だ。

 ダンジョンコアまでたどり着けたら、また違った解決策もあるのだろうけどな。


 落とし所として、切り崩し工作は良かったのかも。

 少なくとも同意書に判を押せば、デモをやっている時間を他の有意義なことに回せる。


 その方が絶対にいいに決まっている。

 だが、俺の方が悪役みたいなのは何だろな。

 他に良い方法があれば、試している。


「先輩、時間が解決しますよ。きっと分かってくれるはずです」


 藤沢ふじさわがいつの間にか来てそう言って慰めてくれた。


「だといいな」


 罵詈雑言を浴びながらダンジョンから離れていく。

 上級ポーションで救われた人のことをもっとアピールしないといけないかな。

 ダンジョンの負じゃない面も見て欲しい。

 害だけじゃないんだよと。

――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               57,517万円

上級ポーション2個             604万円

彫像10体                  10万円

カイザーウルフ60体          4,500万円

ドッペルオーク12体            600万円

シャーマンオーク12体           720万円

エンペラータランチュラ12体      1,056万円

メイズスパイダー12体         1,020万円

エレファントスレイヤー12体      1,440万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計               0円 67,467万円 67,467万円


パーティ収支メモ


              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し                4,622万円

オーク9体                 585万円

キングウルフ12体             640万円

ライフル6丁       462万円

弾丸100発        10万円

弾丸用魔石        250万円

付与魔法依頼        50万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計            772万円  5,747万円  4,975万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン        -64億円

スタンピード積み立て金  110億円


 パーティの収支は安定して黒字だ。

 コンビニの収支は雇われ店長がしっかりやっている。

 コンビニはダンジョンとほとんど関係ないから俺はノータッチで、POSのデータを流し読みするだけだ。


 そろそろ積立金の運用を考えないとな。

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