第57話 ケルベロス
さあ、この階層のザコ部屋もラストだ。
俺はみつ首のカイザーウルフにケルベロスウルフと名付けた。
口から火を吐くのは知っている。
あと、頭がみっつあるから、たぶん頭をひとつやっただけでは止まらないのだろう。
視界も目が3対あるから、かなり広いと思われる。
思考もみっつの頭で共有されているぐらい考えた方が良さそうだ。
体もカイザーウルフの2倍ぐらいはある。
これで普通のカイザーウルフと同じAランクでは詐欺だな。
「強敵だな」
「私もそう思います」
さて、どうするべきか。
手数は3倍だから、
俺がフェイントして隙を作れたら良いけど。
床ツルツルはどうかな。
オーガは2足歩行だけど、ケルベロスウルフは4つ足だ。
一つの足が滑っても転ぶとは考え難い。
落石攻撃も駄目だな。
頭がみっつあるから、冷静に処理される未来しか思い浮かばない。
「とりあえず、閃光手榴弾はどうですか」
「やってみろ」
「ではいきます。3、2、1、今」
閃光手榴弾を投げ込んだ。
光が治まったがケルベロスウルフになにかダメージがあったようには見られない。
「いや、効いている。頭ひとつの視線がおかしい。だが、2つは防いだのだろうな」
目の見えないであろう頭から火炎放射器みたいに炎が吹き付けられた。
目を潰しても、他の頭がカバーするんじゃそんなに痛手ではない。
閃光手榴弾もう一度はたぶん効かない気がする。
学習能力は高そうだ。
炎を吐いていた頭の炎が止まったと思ったら、別の頭が炎を吐いて前進を始めた。
息継ぎの時間もないのか。
くそっ隙が見当たらない。
「こうなったら自棄だ。【リフォーム】【リフォーム】【リフォーム】【リフォーム】、槍。上下右左からの4方向同時」
4方向同時はケルベロスウルフの処理能力を超えたのか、見事全ての槍はケルベロスウルフに突き刺さった。
「破れかぶれの策が嵌ったな」
「ええ、俺が戦力外になっても
「先輩、やりましたね。1階層制覇、おめでとうございます」
「ありがとう」
討伐の仕事を終え、事務所でコーヒーを飲んでくつろいでいたら、前の会社の後輩である
『先輩、
「よし、濡れ衣を着せられそうになった社員に、俺が裁判費用を持つから
『分かりました』
遂に俺も動く時がきたな。
俺の示談金は返ってこないが、
示談書には前の会社が俺を民事と刑事で告訴しないという約束だけだからな。
示談金はもったいなかったが、まあいいさ。
金ならある。
「先輩、電話聞いてました。
「そうだ。馬鹿な奴だとは思ったが同じ手口でやりやがった。民事では真偽官を呼ぶつもりだ」
「嘘判別スキル持ちですね」
「あくまでも参考資料にしかならないが、裁判員と裁判官の心証は確実に悪くなる。容赦はしないつもりだ」
「勝てますよね」
「ああ、勝てるさ。金の力を思い知れっていうんだ。少し気が早いが、1階層制覇と
「はい」
100万円もするワインを買って来て開けた。
「乾杯」
「乾杯」
「高いってのもあるが、今まで飲んだ酒のなかで一番美味い」
「私もです」
電話が掛かってきた。
前の会社の社長からだった。
『すまなかった。
いまさらだな。
だが、会社には戻るつもりだ。
社長の意図した形ではないかも知れないけどな。
「まだしばらくは戻りません。戻る時は連絡を差し上げます」
『そうか。その時はよろしくな。待ってるよ』
会社にどうやって戻るかと言えば、会社を乗っ取るつもりだ。
会社のオーナーは経営にタッチしてない。
会社に対して思い入れなどないだろう。
金を積めば株を売るはずだ。
そんなに大きな会社じゃないから、20億もあれば売ると思う。
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俺の収支メモ
支出 収入 収支
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繰り越し 20,854万円
依頼金 100万円
上級ポーション2個 618万円
彫像10体 10万円
カイザーウルフ60体 6,000万円
ドッペルオーク12体 600万円
シャーマンオーク12体 720万円
エンペラータランチュラ12体 1,056万円
メイズスパイダー12体 1,020万円
エレファントスレイヤー6体 720万円
高級ワイン 124万円
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
計 224万円 31,598万円 31,374万円
遺産(不動産) 0円
ダンジョン -74億円
スタンピード積み立て金 105億円
エレファントスレイヤーの殺処分ロッカーからの搬出が重労働だ。
こんなのやってられるか。
体全体で1トンあるんだぞ。
値段を考えると閉鎖しようかと思うぐらいだ。
あとで他の人間に仕事を振ろう。
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