第54話 視線誘導
『くっ、面目ねぇ。救援を頼む』
駆け付けるといたのは、棍棒より太い杖を持ったオーガが部屋の中にいて、離れたところの物陰に
「状況は?」
「一当てしてみたが、魔法使いのオーガでよ。おまけに杖を上手く使って近接戦闘もこなすときてる」
「先輩!」
俺は慌てて物陰に隠れた。
「あんな感じだ。隙を見せると撃って来る。突っ込むところまでいけるんだがな。遅延魔法まで使いやがる」
魔法で罠も仕掛けるのか。
遠距離からリフォームして串刺しが安全だな。
だが避けそうな気がするんだよな。
強敵にすんなりいったためしはない。
盾職でもいればな。
盾というか壁は作れるが、回り込まれるだけだ。
頭は良さそうだから、唐辛子スプレーも効くかどうか。
閃光手榴弾さえ効くか怪しい。
こっちの手数は限られている。
確実に仕留めないと。
手品師の話を思い出した。
手品の基本はいくつかあるが、その中に視線誘導というのがある。
思わずそちらを見てしまって、タネを仕込んでいる手を見逃すというわけだ。
よし行くぞ。
「【リフォーム】、石の欠片と埃と軋む音」
天井から軋む音がして、パラパラと石の欠片と埃が落ちる。
オーガメイジは上を向いた。
はったり成功。
天井が崩せるわけないじゃん。
「【リフォーム】、槍」
下への注意がおろそかになっていたオーガメイジは槍に刺し貫かれた。
「俺の依頼金を返そうか」
「
「すまんな。ではありがたく貰っておく」
オーガメイジは頭が良いのが逆に仇になったな。
普通のオーガだったら、こっちに突撃してきただろう。
オーガの杖を見ていたら、こぶし大の青い宝石が嵌っているのに気づいた。
「ほらよ」
「えっと」
俺は受け取って、ちょっと戸惑った。
「欲しそうだったからな。きっと嬢ちゃんにプレゼントしたいんだろ」
「ありがとうございます」
「礼を言われる筋合いはないよ」
「先輩、婚約指輪ですか」
「このサイズだと首飾りから、イヤリング、指輪と一式作れるな」
「細かくカットすると勿体ないですよ」
俺は宝石を透かしてみた。
「中に傷があるようだ。専門家じゃないけど、細かくカットするだろう」
「そうですか。じゃあ一式頂きます。ラインナップに指輪は外せませんからね」
「分かっているよ」
討伐の仕事も終わり、
「ダンジョンと一体化のテストに来たよ」
「待ってました」
まずはキャットタワーからだな。
「【リフォーム】一体化」
キャットタワーがダンジョンの一部になった。
ナイフでキャットタワーの木を削ろうとしたが、硬くて削れない。
どうやら成功したみたいだ。
「じゃあ次はキャットタワーのステップに布を一体化してみよう。【リフォーム】一体化」
糊で貼り付けたみたいに強固にくっついた。
「これなら、接着剤の匂いもしないし、猫ちゃんも嫌がらないな。後で感想をまとめておくよ」
「そうしてくれ。何か要望はないかな?」
「猫ちゃんに危険があるので、そういう家電が置いてある部屋は猫ちゃん立ち入り禁止にしてあるんだが、何時間にかに入り込む。それと色々な欠片とか飲み込むから、それも何とかしてほしい」
「マッピングスキルを部屋の機能として持たせるか。出来たら夢の住宅だな。ゴミとゴミじゃないものの区別は難しい。そのうち何かいいアイデアが浮かぶかも知れない。考えてみるよ」
「ゴミは極端な話、猫ちゃんの部屋だけ全部回収しても良い」
「キャットタワーとかはダンジョンの一部だからゴミ扱いされない。タンスも宝箱だから大丈夫だとして。テレビとかは壁に埋め込んで一体化だな。食べ物はしばらくは回収されないから、回収されるまでに食べると大丈夫だ」
「じゃあ、猫ちゃんの部屋だけすべての品物を回収してもらおうかな」
ゴミ回収機能にAIを搭載できたらな。
それか、一品目ごとに指定していくか。
全部のパターンを網羅すれば。
いや、抜けはある。
プログラムもたいてい網羅したと思っても抜け穴というかバグが潜んでる。
新たなスキルが芽生えるのを期待しよう。
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俺の収支メモ
支出 収入 収支
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繰り越し 64,571万円
依頼金 100万円
上級ポーション3個 921万円
彫像10体 10万円
カイザーウルフ60体 6,000万円
ドッペルオーク12体 600万円
シャーマンオーク12体 720万円
エンペラータランチュラ12体 1,056万円
メイズスパイダー12体 1,020万円
アクセサリー加工代一式 50万円
スタンピード積み立て金 5億円
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計 50,150万円 74,898万円 24,748万円
遺産(不動産) 0円
ダンジョン -74億円
スタンピード積み立て金 105億円
資金が貯まったのでスタンピード積み立て金を増加した。
月100万円の給料でも払えるかどうか。
そのうち給与体系も見直さないといけないな。
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