第53話 住人交流会

 今日は休みにして、住人交流会を開くことにした。

 参加者は、俺と藤沢ふじさわ、あとは上溝うえみぞさんと、番田ばんださんと、香川かがわさんと、片倉かたくら少年と、橋本はしもとさんと、御嶽みたけ青年と、拝島はいじまさんだ。

 空き部屋の中で一番広い部屋を会場とした。

 おおよそ20畳はある部屋だ。


「忙しい中、お集り頂きありがとうございます。飲んで大いに喋り交流してみて下さい。では乾杯」


 みんなから乾杯の声が聞こえた。


 番田ばんださんはビールのジョッキを一気飲みすると俺の所に来た。


「階段、作れませんかね」

「2階が欲しいということですか」

「猫が階段が好きなんだよ」


「私も猫ちゃんが器用に階段を下りる仕草が見たいです」


 猫の話が好きなのか、上溝うえみぞさんが寄って来た。


「ええと、意味のない階段を作るのも芸がないな。ロフトではどうでしょうか。ダンジョンの天井は、オーガの背より高さがあります。2階は無理でもロフトなら」

「いいね。階段の勾配は俺に設計させてくれ。猫ちゃんにちょうど良い、階段というのがあるんだ。それに滑り止めも必要だ」

「俺のスキルでダンジョンと接続すれば、階段に張ったカーペットがボロボロにならないで済む」

「それはいい」


「猫ちゃんの爪が痛まないでしょうか?」


 心配そうな上溝うえみぞさん。


「試験的に作ってみたらいいかもな。後で空いた時間にやろう」


 ダンジョンと何かを一体化するのは考えてなかったな。

 応用の利きそうな技だ。

 これを思いついただけで、今回の会をやった意味がある。

 殺処分ロッカーもあとでダンジョンと一体化しておこう。


 二人が去って行き、香川かがわさんと、拝島はいじまさんが、ワイングラス片手と小皿に蜘蛛肉を持って、こっちへ来た。


「カニの肉美味しいですね。カニのモンスターというと海ですか。海はモンスターの巣窟で船で出ると瞬く間に沈められると聞いてます。どうやったのです。何か有用なスキルでもあるのですか」

「海産物が取り放題のスキルがあったら良いのですが、手に持っているのは蜘蛛の足です」

「そうですか。カニの代替品として売れそうですね」


 香川かがわさんは見かけによらず図太いらしい。

 パクパク蜘蛛肉を食っている。


「ふむ、カニの養殖場の株が下がるかな。いかんいかん、株はもうできないというのに」


拝島はいじまさん、どうかしたんですか?」

「私のスキルはインサイダー取引にあたるそうなのですよ。私名義で株の取引はできません。香川かがわさんから聞いて法律を調べたらそうなっていました」

「友達に上がる銘柄を教えたりすると、抜け道になりそうですね」

「それが、スキルで監視しているらしいですよ。ねぇ、香川かがわさん」


「ええ、神託系や盗聴系のスキルを駆使しているともっぱらの噂です」

「それは大変だ」

「目下のところ私は失業中なわけです。まあ貯蓄は何十億とあるので、働かなくて食ってはいけるが、生きる張り合いがない」


「モンスター退治なんかどうです?」

「私、運動はからきしでして、たぶんモンスターの餌になるのが関の山かと」


 指示して貰えるだけでもありがたいのだけど、無理は言うまい。


「機会があればその時は」

「ええ」


 御嶽みたけ青年は橋本はしもとさんと話している。

 この二人がカップルになるのか?

 何でも色眼鏡で見るのは良くない。

 でも、御嶽みたけ青年が立ち直る切っ掛けができたら良いと思う。

 邪魔しないでおこう。


 片倉かたくら少年は藤沢ふじさわと一緒に回って、色んな人に話しをしているようだ。

 藤沢ふじさわは子供にも優しいな。

 感心したよ。


 海産物か、海のフィールドがあったというダンジョンの話を聞いたことがある。

 それをリフォーム出来たら、一攫千金も夢じゃないな。


 プライベートビーチなんか持てたら、大金持ち気分だ。

 浜辺に別荘を建てたりして、そんでフィールド内で育てた魚を釣りまくるんだ。

 サザエやアワビなんかもいいな。

 ウニとか子供の頃に食べたきりだ。


「先輩、何か楽しそうですね」

「海のフィールドをリフォームしたら楽しいだろうなと」

「いいですね。裸で泳いでも誰も見てないわけですか。先輩、顔が赤いですよ。想像しました」

「こら、からかうなよ」

「えへへ」


 殺処分ロッカーのリフォームに取り掛からないとな。

 やることが一杯ある。

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俺の収支メモ

              支出       収入       収支

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繰り越し               54,559万円

上級ポーション2個             606万円

彫像10体                  10万円

カイザーウルフ60体          6,000万円

ドッペルオーク12体            600万円

シャーマンオーク12体           720万円

エンペラータランチュラ12体      1,056万円

メイズスパイダー12体         1,020万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計               0円 64,571万円 64,571万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン        -74億円

スタンピード積み立て金  100億円


 蜘蛛は味も美味しいし、金銭的にも美味しい。

 2階層にも出現しないかな。

 いや、蜘蛛だけに限らず、2階層にはもっと美味しいモンスターがいるに違いない。

 そう考えると、先行きは明るい。

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