第46話 大忙し

 リフォームと殺処分ロッカーの管理で忙しいったらない。

 今日の大船おおぶねさんの討伐はスムーズにいった。

 ヘルプの要請がないのは良いことだ。


 とにかく忙しい。

 藤沢ふじさわに不満があるわけじゃないが、有能な社員が欲しい。

 殺処分部屋の管理も藤沢ふじさわありき。

 死んでいるか開けないと確認できないなんてことになったら、ギャンブルもいいところだ。

 お金の余裕はかなりある。

 ただ、Aランク以上の人と契約するのが難しいだけだ。

 職場がSランクダンジョンだと説明したら、たぶん誰も来ないだろう。


 上溝うえみぞさんとかはかなり有望だが、お嬢様だろ。

 周りも反対するだろうし誘えない。

 何かきっかけがあればだけど。


「先輩、救急センターから手紙が届いています」


 どれどれ。

 『私は交通事故で生死の境をさまよった者です。あなたのからのポーションの提供で命を救われました。幸いにして後遺症もなく。リハビリも済み、社会復帰出来ました。ありがとうございました』とある。


 こういう感謝の手紙を貰うとやって良かったなと思う。


 今日は買い取り業者との話し合いの予定が入っていた。


「このままだとカイザーウルフの買取価格が下がる。出荷調整したらどうかな。それと海外輸出を考えている。ただ、外国は自然保護団体がうるさくてな」

「野生動物の毛皮は使わないでしたっけ」

「そうだ。モンスターは野生動物の括りには入らないと思うんだが」


 動物の毛皮は使わない。

 その考えには俺も賛成だ。

 だがモンスターには当てはまらないだろう。


「モンスター素材マークを作ったらどうですか。他の動物とは違うというのをはっきり示したら」

「面白いな。業界団体に提案してみよう」


 業者が帰って行った。


 いま、カイザーウルフを主にやっているが、オークキングなんかどうかな。

 食肉なら確かに値段が下がりづらいと思うのだが。

 問題は、討伐してからすぐに解体しないといけない。

 殺処分部屋で窒息死させているから、管理が大変だ。


 殺処分ロッカーに、強化ガラスをはめ込んでみたらどうだろう。

 そんでカメラで監視すれば良い。


 なら、監視にAIが使えるな。

 人間は要らないから、人件費も節約できる。


 決まりだな。

 オークキングを養殖しよう。


 監視システムは何千万円も掛かるシステムではないと思う。

 物の形を認識するAIは昔からある。


 殺処分ロッカーをリフォームじゃなくて作れないかな。

 金庫の制作を応用したりして。

 俺が開け閉めするのではないので、かなり有用だ。


「もしもし、モンスター研究所ですか」

『はい、モンスター研究所です』

「以前カイザーウルフの親子のことでお世話になった戸塚とつかと申します」

『覚えてますよ。あの時はどうもありがとうございます。親子は元気に暮らしています』

「今日はですね。モンスターを閉じ込めておける密閉された金庫みたいなものを作るとしたら、どれぐらい掛かります? 窒息させる為に空気を吸い出せたらなおいいです」

『500万円からではないでしょうか』


 意外に安いな。


「設計とか業者の伝手とかお願いできますか」

『仕事とあればいやはないですよ』

「では見積りをお願いします」


 とりあえず、オークキングの養殖はまだやらない。

 スキルではない殺処分ロッカーが作られてからだ。


 橋本はしもとさんに会いに区役所に行く。


「第三セクターの話はどうなりました?」

「区長はやるつもりですが、議会がありますので簡単には行きません」

「最近、モンスター養殖部屋も始めたんですよ」


 俺は殺処分部屋の説明をした。


「死んでいるかの確認にマッピングスキル持ちが必要ですね」

「そうですね。安全を考えたら」

「ですが、オークキングで1日1,920万円は大きい。美味しい商売です」

「第三セクターのポーション養殖事業が軌道に乗ったら、モンスター養殖部屋もやってみませんか?」

戸塚とつかさんはやらないのですか?」

「もちろんやりますよ。でも階層は腐るほどあると思います。何部屋あるのか見当もつきません」

「分かりました。軌道に乗ったらその時はお願いします」

「ええ、任せて下さい」


「モンスター養殖部屋は民間企業がやりたがるかも知れません。私の知っているところに声を掛けてみましょうか」

「はい、お願いします」


 仕事がどんどんいい方向に進んで行く。

 戦い続けた成果が出ているのかな。

 苦労したんだから、それぐらいの報いがあってもいい。

 だが、まだスタンピードの不安はぬぐえない。

 安心するのは100億貯めてからだ。

――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

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繰り越し               24,575万円

依頼金          100万円

上級ポーション2個             610万円

彫像10体                  10万円

カイザーウルフ65体          6,500万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計            100万円 31,695万円 31,595万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン        -84億円


 モンスター養殖部屋は本当に美味しい。

 貯蓄が3億を超えた。

 お金が5億貯まったら、スタンピードの補填準備金として積み立てるつもり。

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