第38話 家族来襲
『テレビ見たわよ』
電話はうちの親からだった。
いったい何時の話だ。
その話題はもう古い。
「古いよ」
『あんた、水臭いわね。テレビに出るんだったら報せてくれてもいいのに』
「いろいろと大変なんだよ」
『近所の人から録画を見せられてびっくりしたったら、ないわ』
「それだけなら、忙しいので切るよ」
『今日、そっちに行くから』
「仕事があるから、大した接待は出来ないぞ」
『起こした会社を見学するから』
「好きにしたら」
親が来ることになった。
さて、親が来るまでに仕事を終えようか。
そして、まだ別件がひとつある。
グラトニースライムを閉じ込めたことを覚えているだろうか。
それの後始末にきた。
「
「はい、【マッピング】。ええと仮死状態みたいです」
「なら危険性はないか。【リフォーム】壁解除」
うん、玉が転がっているだけだ。
素手で触ると危険なんだろうな。
俺はスコップですくい上げて、クーラーボックスに入れた。
「どうだ」
「まだ仮死状態です」
よし、スライムの核を売りにいこう。
「グラトニースライムの核を売りたい」
冒険者協会のカウンターで俺はそう言った。
「ええと欠片でしょうか」
「いや仮死状態だ」
「研究所と連絡をとってみます」
受付嬢が電話で連絡を取るのをぼんやりと見ていた。
「1千万で買いたいそうです。オークションに掛けられるのでしたら手配しますが、いかがします」
「研究所に売ってくれ。モンスターの弱点が分かれば人類の役に立つ」
「ではお金は口座の方に振り込んでおきます」
やった。
ちょっとした臨時収入。
リフォームの仕事をしながら親を待つ。
入口まで行く。
「久しぶり」
「この子ったらもう、他に言うことがあるんじゃないの」
と母が言う。
「無事で何よりだ」
と父が言った。
「心配を掛けたくなかったから」
「それより、さっきのお嬢さんとはどんな関係?」
「ええと、部下以上、恋人未満かな」
「あんたも良い歳なんだから、結婚しちゃいなさいよ」
「まあなんだ。結婚する前は避妊はしっかりとだな」
「これだから、うちの親は。とにかく入って。ダンジョンの中を案内するから」
両親を連れて仕事場を見学させる。
モンスターは危険なので見せない。
カメラがあるのでその映像を見せた。
「で会社は上手く行っているのか?」
父さんが心配そうに尋ねた。
「スタンピードさえ起きなければ、たぶん大丈夫。もしもの時は逃げたり隠れたりするよ」
「そうか。どんなことになっても父さんと母さんはお前の味方だぞ」
「分かっているよ」
両親は嵐のように来て、嵐のように去っていった。
「いい両親ですね」
「そうか。普通の親だと思うぞ」
「私の両親は糞親ですから、こないだも100万円の給料の振り込みを見せて黙らせました」
「会社を辞めたから心配だったんだろう」
「うちの親は老後の面倒を見てくれるかだけしか、関心がないんです」
「どこも似たような物さ」
「そうですか」
「
「はい」
「はい」
扉が開けられた。
「どんなスキルが生えたか調べましたか?」
「ええ、
「どんなご商売を?」
「株のトレーダーです。鍛えたら時間は長くなるそうですが、モンスター退治はリスクとリターンが釣り合わない」
「そうですか。安全に鍛えられればどうですか?」
「それなら一考の価値はあります」
予見スキルはかなり使えそうだ。
「
「だんぜん、
「よしっ、ひとり脱落」
「ええと、付き合いは節度を持ってお願いします。トラブルになったら、契約を破棄します」
「もちろん、嫌われるようなことはしないさ。私には予見スキルがついている。失言の類とは無縁のはずだ」
エロが絡むと行動力が半端ないな。
エロゲー選択肢みたいにスキルを使うとは。
モンスターをやっつけるために使ってほしいものだ。
そんなのじゃスキルが泣くぞ。
でも、
人間味があって良いじゃないか。
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俺の収支メモ
支出 収入 収支
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繰り越し 18,578万円
依頼金 100万円
スライムの核 1,000万円
上級ポーション 303万円
彫像10体 10万円
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
計 100万円 19,891万円 19,791万円
相続税 2,000万円
遺産(不動産) 0円
ダンジョン -84億円
上級ポーションを一つ売らないで俺達が使う用に確保した。
こういう必要経費は仕方ない。
それにしても、バンバン金が貯まっていく。
何となく大金がそのうち入って来るような予感がする。
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