第39話 蜘蛛
『俺も焼きが回ったかな。ちょっと来てくれ。41号室だ』
「分かりました」
駆け付けると
部屋の天井を見ると蜘蛛の巣だ。
それだけなら、
「【マッピング】。先輩、この部屋はトラップだらけです」
「ええと上は蜘蛛のモンスター、下はトラップというわけか」
「その通りだ。どっちか片方なら対処はできた」
「リフォームスキルでトラップを潰してから蜘蛛ですかね」
「まあ、それがいいだろう」
「トラップのある位置をナビします。まずはここです」
「【リフォーム】」
そうやってトラップを全て潰した。
さて大蜘蛛退治か。
天井から突き刺すと、下に逃げるかな。
糸がレーダーの役割をして、攻撃を避けるかも知れない。
「蜘蛛は俺だと少し手間がかかりそうです」
「じゃあお手本を見せてやるか。【ストレングスアップ】、【シャープエッジ】、【スラッシュ】」
強靭で柔軟性のある蜘蛛糸がところてんを切るように切り払われていく。
見本も何も俺じゃ真似できない。
「【スラッシュ】、【スラッシュ】、【スラッシュ】とくらぁ」
蜘蛛の巣の領域がどんどん狭くなる。
そろそろ蜘蛛が焦れるかな。
2メートルはある大蜘蛛が飛び出してきた。
「【スラッシュ】。ほいよ、いっちょ上がり」
「今日はこいつを食うか。こんななりだが美味いんだぜ。1本足を持って行けよ」
「まあ、カニだと思えば食えないこともないです」
「私はパスします」
蜘蛛の足を1本貰ったのでノコギリで30センチぐらいに切る。
そして包丁で唐竹割に。
そして七輪で焼いた。
香ばしい匂いが広がっていく。
そして蜘蛛の足の色が鮮やかな赤に変わった。
カニだと思えばいいか。
醤油を上から掛けた。
さらに匂いは香ばしくなる。
でもでもと繰り返し言っている。
カニが好きなのは知っている。
蜘蛛は嫌いなんだろう。
「目をつぶって食えばいいんだよ」
「分かりました。これはカニ、巣を張るタイプのカニ。陸上で暮らすカニ」
どれどれ、俺も。
うん、カニよりずっと美味い。
まだ足は1メートルぐらい残っている。
ガンガン焼くぞ。
リフォームスキルはトラップの類にはめっぽう強い。
ダンジョンの所有権さえなければ、きっと俺はトラップ解除屋をやっていただろう、
蜘蛛の足を食ってビールを飲みながらそう思った。
インターホンが鳴った。
出ると
蜘蛛の足はまだあるので
「美味しそうなカニですね」
「よかったら
「ご相伴に与ります」
「ところでなんか用ですか」
「上の方が、要らぬ色気を出しまして。すいません、追加で部屋を借りて来いと言われました。こうなったら飲んでやる勤務中だって構うものか。ビール下さい」
「おう」
「ぷはぁ」
そして、3本ほど飲んで。
「ばきゃぁろう。私腹を肥やすことばかりかんがえるなよぅ」
「ええと話が見えないんですが」
「私が馬鹿だったんですぅ。今朝、ポーションが出たんですよぅ。それを報告したら、君の借りている部屋から出たのだから、収めておきなさいだとぅ。横領じゃないですかかかぁ」
「でどうしたんです」
「圧力に負けてしまいましたぁぁぁぁ」
図式が見えた。
ただで部屋を借りると定期的にポーションが湧く。
本来ならポーションの所有権は区になるのかな。
よく分からないけど。
それを懐に入れたいらしい。
で新たに何部屋かただで借りて、ポーションを定期的に得たいと。
庭付き一戸建てを職員用に区で借りたとする。
庭の柿の木に柿が生った。
住んでいる人がそれを売ったりする。
アウトなのか。
アウト臭いような気もする。
だいいち、公務員はアルバイト禁止だろう。
ええと、働いてないから、アルバイトではないのか。
でもかなり黒に見える。
どうすべきだろう。
区で借りるからややこしいんだ。
個人で借りれば何も問題はない。
デメリットを負わずにメリットだけを追求するのは我慢ならん。
「
「そんなことしたらぁ」
「いいんですよ元から無いような評判ですから」
今の話をマスコミに訴えることにした。
戦うと決めたからな。
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俺の収支メモ
支出 収入 収支
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繰り越し 19,791万円
依頼金 100万円
上級ポーション3個 912万円
彫像10体 10万円
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計 100万円 20,713万円 20,613万円
相続税 2,000万円
遺産(不動産) 0円
ダンジョン -84億円
上級ポーションが3個も出ると笑いが止まらない。
俺も稼げると。
良くない輩は今後もどんどん湧いてくる気がする。
金に集るハエみたいなものか。
しょうがないことなのかもな。
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