第36話 尻手《しって》の引き抜き
15部屋のリフォームが終わった。
追加で10部屋リフォームしようと思う。
それにしても、テレビの影響力は半端ない。
あんなに若者というか馬鹿者が来るとは思わなかった。
ダンジョンの入口のインターホンが鳴った。
ダンジョンに用のある人が来たらしい。
部屋を出て階段を上がる。
扉を開けると塩を撒きたくなるような人物が立っていた。
こいつ、よく俺の前に顔を出せたな。
「何の用だ?」
「そんな口を利いて良いのかな」
「会社はもう辞めたんだ。赤の他人にどんな口を利いてもいいだろう」
「まあ、いい。このダンジョンに入らせろ」
「断る」
「横領の噂が立ったら、分譲の事業にもイメージダウンになるのではないかな」
くそう、脅してきたか。
だが、こんな脅しには屈しない。
「お断りだ」
「そうか。たぶん気が変わると思うがな」
そう捨て台詞を吐いて
ほんとうに塩を撒きたい気分だ。
職人とリフォームの打ち合わせをして、
遅いな。
やることはたくさんあるから別に良いけど。
3チームが全員遅刻とは不思議な事もあるものだ。
待っても来ないので、留守番を
冒険者協会に行って、端末でまず確認したのは討伐依頼だ。
俺のダンジョンの討伐依頼は誰も受けてない。
待っても来ないはずだ。
依頼を受けてないんじゃな。
連絡先を冒険者協会に聞こうとして辞めた。
だって、彼等にも生活がある。
割の良い依頼が来たら、そっちを選ぶ権利はある。
俺の都合に合わせるわけにはいかない。
こうなったら俺が一つずつ部屋を解放するかと思って席を立とうとしたら、
「遅くなってすまんな。
あいつの仕業か。
「どんな依頼です」
「愛人にプレゼントを贈りたいので、その素材を採って来てくれとさ。断ってやったぜ。愛妻なら受けてやったかも知れないがな」
「そうですか」
「どらにゃんと灼熱のやつらはその依頼を受けるってさ」
「それは仕方ないですね」
「やつらこうも言ってたぜ。俺達にはSランクダンジョンは荷が重いって。そろそろ限界が近いと。俺もそう思うぜ。もっと早く手を引いても良かったぐらいだ」
「それも仕方ないですね」
「俺はあのぐらいが、ちょうどいい。今日も頼むぜ」
「分かりました。よろしくお願いします」
ダンジョンに戻ると、
「すいません。お待たせしました」
客は神経質そうな黒縁眼鏡の男だ。
七三分けにしてポマードをべったりつけている。
今風の恰好になったら、それなりのイケメンになりそうだが、趣味をとやかくは言うまい。
仕事は出来そうな感じだ。
5千万円出せるのだから、そうとう稼いでいるに違いない。
「部屋を見せてもらいました。一番重要な確認です。Gは出ますか?」
「Gっていうとゴ……「その先を言ったら契約しません」
俺は言葉を遮られた。
「あの黒い奴ね」
「それ以上は聞きたくありません。その奴です」
「出ませんよ。ダンジョンが即座にゴミとして処理します」
「よろしい。契約しましょう。契約書にGが出たら、契約違反として購入金額を返却して、解約できるとして下さい」
変わった客だな。
でも気持ちは分かる。
あれは忍び寄られたらぞわっとくる。
昔、寝ていて顔に集られたこともあった。
俺だって悲鳴を上げてしまったぐらいだ。
客は
これで一部屋売れた。
「
「許せませんね」
「俺の横領の話でイメージダウンを謀ってくるらしい」
「それは心配いらないです。うちにダウンするようなイメージはありません」
「だな。スタンピードの補填のことを考えたら、マイナスイメージしかないものな」
「ですね」
気になってネットでエゴサを掛けたら、
俺と
やられるだけだと思うなよ。
あとで名誉棄損で訴えてやる。
金なら多少持っているんだ。
裁判ぐらい起こせる。
それと冒険者もやっている私立探偵に
金ならあるんだよ。
――――――――――――――――――――――――
俺の収支メモ
支出 収入 収支
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繰り越し 16,658万円
工事依頼金 600万円
木材など材料費 2,000万円
分譲販売 5,000万円
調査依頼費 1,000万円
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
計 3,600万円 21,658万円 18,058万円
相続税 2,000万円
遺産(不動産) 0円
ダンジョン -84億円
順調すぎるぐらい順調だ。
それにしてもGのために5,000万円をポンと出す感覚が分からない。
スタンピードを起こしたら、少なくても2億だぞ。
売っておいて俺が言うのもな。
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