第28話 回収機能

『19号室SOS、頼みます』


 緊急要請はどらにゃんの尻尾からだ。


「今行きます」


 俺はやっていたリフォームの仕事を放り出すと、いつも通りスクーターで駆け付ける。

 すると、棍棒を2本持ったオーガが仁王立ちしていた。


「ええと、どんなモンスターですか?」

「オーガの棍棒二刀流だ。気を抜くと棍棒を投げてくる」

「じゃあ、その隙に攻撃すれば」


 言ってるそばからオーガが棍棒を投げた。

 それは俺のヘルメットに当たって、俺は目から火花が出たのが見えた。

 くそう、念のためポーションを呷る。


「ほら、もう二本もっているでしょ」


 見るとオーガは二本の棍棒を手に持っていた。

 特別な武器か、スキルみたいな力だろう。


「遠近、どちらもいけるのか」

「近接は二刀流なので手数が多いです」


「見てて下さい。【リフォーム】」


 床から出た槍はオーガを刺し貫いた。

 が最後の攻撃というわけか、俺は頭と腹に棍棒の投擲を食らった。


「ぐふぅ」

「先輩、しっかり。ポーション飲んでください」


 ポーションを飲ませられた。


「げほげほっ、大丈夫だ。それにしても強烈な一撃だった。プロテクターとヘルメットが無ければ怪我じゃ済まなかったかも」


 どらにゃんの尻尾は地面に転がった棍棒を見ている。


「金になりそうですか」

「硬いけど普通の木だね。鑑定してもらうまでもなさそうです。100円ぐらいしか値が付かないかも」


「じゃあ、その棍棒貰って良いですか」

「何に使うの?」

「俺のスキルって調度品も出来るから、椅子でも作ろうかと」

「じゃあ、あげます」

「では頂きます」


 椅子が2脚出来上がった。


「先輩、ひとつ椅子を下さい」

「うん、あまりいい出来ではないけど貰ってくれるなら嬉しい」

「えへへ、お揃いですね」


 さてと、討伐と片付けも終わったし自由時間だ。

 気になっていることがあるんだよな。


番田ばんださんの部屋に猫の毛とノミのゴミ回収機能をつけたけど、埃はどうかなと」

「先輩、グッドアイデアですね」

「そうだろ。掃除要らずだ」

「もっと細かく色々と弄れば、最強の部屋になりそうです」


 色々とアイデアを練っている時に番田ばんださんが訪ねてきた。


「猫の毛を自動で回収しているが、あれを俺に返してくれないか」

「何でです」

「猫の毛で、小さいぬいぐるみを作っている動画を見て、俺もやりたくなった」

「抜けた毛でも宝物というわけですね」


 ええと、ゴミを回収したのを返却か。

 そう言えば、ダンジョンで死んだ冒険者の遺品が宝箱の中に入っている時があると聞いたな。

 回収した猫の毛を宝箱に入れられるかも。


 番田ばんださんの部屋に宝箱を設置して、部屋の設定をリフォームスキルで弄った。

 何回か蓋を開けて確かめる。

 確かに猫の毛が集まってきている。


番田ばんださん、ナイスアイデアです」

「だろ、抜け毛と言えど猫の毛は宝物だ。宝箱に出現するにふさわしい」


 ええと、宝箱をリフォームしてタンスを作って、服を自動回収すれば、ついでに汚れをゴミ回収する。

 脱ぎっぱなしにして床に放っておけば、洗ってタンスの中に自動的に入る。

 なんてずぼらな機能なんだ。


 食器バージョンもできるな。

 テーブルの上に置いておけば、綺麗になって食器棚に入っている。

 夢のような部屋じゃないか。


 自動料理とかが出来たら、もっと良いけど、アイテムの生成までは弄れない。

 付加価値としてはこれ以上のものはないだろう。


 宝物の出現を早くしたかったが、魔力を溜めて作り出すようで、ダンジョンの大元の魔力の流れは弄れなかった。

 出来ないことがあっても仕方ない。

 俺達の部屋をリフォームした。


「先輩、とても良いです。もう違う部屋に住みたくないです」

「こうなると空の宝箱も貴重だな。家具を作るにはいくらあっても良い」

「依頼を出したらいいと思います。Fランクダンジョンとかだとしょぼいアイテムしか出て来ません。宝箱を1万円ぐらいで、引き取れば、売りにくる冒険者はいるはずです」

「よし、空の宝箱を買い占めよう。部屋で欲しい機能はあるか」

「ドライヤーだと髪が痛むんですよ。水気を回収するスペースを作って欲しいです」

「そんなの簡単だ。脱衣所に付けよう」

「それとトイレの匂いが」

「ああ、脱臭ね。部屋全体はどうかな」

「香水とかアロマオイル好きな人だと匂いが全くなくなると困るかも」

「そこは○×アンケート形式で要望を聴くか。俺は部屋全体を脱臭したいな。そう言えば猫は匂いがないと落ち着かないかも。番田ばんださんあたりは×を付けそうだ」


 俺は追加機能を企画書に付け加えた。

 それを持って、区役所に行った。


 職員はそれを読んで。


「あの、モデルルームとかないですかね」

「ええと視察したいと」

「違います。実際に住んでみたいのです。あなたの熱意に上が負けました」

「家賃を払って頂けると」

「それが」

「ただでというわけですか。スタンピードの時に50分の1を補填して下さるのなら、ただでいいですよ」

「それは構いません。どのみちスタンピードが起こったら、区が建物や人的損失の穴埋めをやらないといけませんので。全部ではないですが」

「どうせ払うのなら部屋を借りても一緒ですか。でも一歩前進ですね。よろしくお願いします。次はお買い上げ頂くと嬉しいですね」

「はい、前向きに検討します」


 一部屋ぐらいただで貸しても問題はない。

 区の方でこれはいい事業だと分かってくれる人が出たら、めっけものだ。

――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

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繰り越し               11,102万円

依頼金          300万円

宝箱100個       100万円

上級ポーション2個             612万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計            400万円 11,714万円 11,314万円


相続税        2,000万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン        -92億円



 やった。

 初めて、1日にポーションが2個出た。

 解放した部屋は24部屋で、俺の所有は20部屋だ。

 このぐらい部屋数があると2個出てもおかしくない。

 なんにしても、これからは依頼金の心配が要らないどころかお釣りが出る。

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