第24話 オークキング

『みんな34号室に集合してくれ』

『灼熱の剣、了解』

『どらにゃんの尻尾、了解』


 朝いちでさあこれからという時に大船おおぶねさんから無線が入った。

 部屋にスクーターで駆け付けると、部屋の中はオークで一杯だった。


大船おおぶねさん、これは」

「オークキングが通路にいたオークを引っ張り込んだらしい」

「通路を制覇する前に部屋を全部チェックはしてませんでした。もっと早く気がついていれば、手も打てました」

「たらればを言っても仕方ない。でどうする。依頼を変更してみんなでこの部屋を攻略するか」

「そうするしかないですね。後回しにしても仕方ないですし」

「私のミスですね。マッピングスキルで把握していれば」

藤沢ふじさわのせいじゃない。藤沢ふじさわのスキルが分かったのは通路の制覇をしてからだ。俺が通路のリスポーン潰しをする前に、調査しとかなきゃいけなかったんだ」


 灼熱の剣とどらにゃんの尻尾が遅れてやってきた。


「えー、依頼を合同依頼に変更させてもらいたい。今日はオークキングと取り巻きをやりたいですが、どうですか?」

「厄介なネタは早めに潰しておくに限る」

「ですね」


 賛同が得られたところで作戦会議だ。

 藤沢ふじさわのマッピングスキルによると、オークは前衛4、後衛4、リーダー1だ。


 こっちも人数では負けてない。

 13人いる。


「後衛から潰すか、前衛からかで作戦が変わるな。ちなみに入口は狭いから、攻城戦みたいな感じだ」


 大船おおぶねさんがそう言った。


「攻撃を通す穴を壁に開けられますよ。そのあとに塞ぐことも自由自在です。ただし回数は何回も出来ません」


 俺がそう述べる。


「俺ら前衛のみのパーティだから、こういうのは苦手だ」


 と灼熱の剣のリーダー厚木あつぎさん。


「問題は相手に回復役がいるかどうかですよね」


 社家しゃけさんが言う。


藤沢ふじさわどうだ、分かるか」

「ええ、ヒーラーが一体います」

「じゃあそいつから潰そうか。あとはちまちま削るというのでどうですか?」


 俺がそう提案する。

 みなが頷いて作戦が決まった。


「【リフォーム】」


 壁にのぞき穴を開ける。


藤沢ふじさわどいつだ」

「白い腰布をしている固体です」

「分かった。【リフォーム】」


 槍の穂先を十文字のしたものが、オークヒーラーを貫いて持ち上げる。

 モズの早贄みたいになった。

 これで死骸に手が届かないから2倍体は生まれない。


「せいやっ、引きずり出せ」


 厚木あつぎさん達に、タックルされたオークナイトがそれを受け止めたが、ナイフで膝の裏を斬られ、通路に引きずり出された。

 そして寄ってたかって止めが刺される。


「どけっ、おりゃ。そらよ、引きずり出せ」


 オークシールドが蹴り倒され、足を持って引きずり出される。

 やはり寄ってたかって止めだ。


「オークナイトなんてのはな」


 腋の下にナイフが差し込まれ、痛みに喘ぐオークナイトが引きずり出された。

 そして止めが刺される。


「どりゃあ」


 前衛最後のオークナイトは一本背負いで、通路に投げ出された。

 やはり止めが刺される。


 あとは後衛3体とオークキングだ。


 火球の魔法が3つ飛んで来る。


「【リフォーム】」


 俺は盾を作って防いだ。

 火球は盾に当たって火の粉をまき散らす。


「【リフォーム】。今です」


 盾を解除すると前衛の人達がなだれ込んで、オークメイジ3体を討ち取った。

 そして、後衛の魔法使いから、オークキングに火球が放たれる。

 火球はオークキングの剣の一振りで消された。


 そこに滑るように大船おおぶねさんが進み剣を一閃。

 オークキングは腹を斬られて死んだ。


「お疲れ様でした」


 お疲れの声がみんなから上がる。

 オーク、一体を捌いて、昼飯のバーベキューが始まった。


「なんかこういうのは盛り上がるな。みんなで協力してやった文化祭を思い出すよ」

「物騒な文化祭ですね」


 藤沢ふじさわの呆れた顔。


「でも一緒に何かやり遂げるのは達成感がある」

「ですね。私のスキルも役に立ったようですし」


 大いに飲んで食った。


「先輩、送ってくれますよね」

「どこにだ? ダンジョンの部屋なら階段降りてすぐだぞ」

「もう、分かっている癖に」


「酔った勢いで結ばれるのは良くないと思っている。こういうのはしらふの時にするもんだ。だが、ダンジョン問題が片付くまではお預けだ」

「いけずですね」


 さあ、今日はこれから引っ越しだ。

 今日から、本格的にダンジョンに住む。

 さらば石の床。

 さらば冷たい便座。

 風呂のある部屋カモン。

――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し                8,699万円

依頼金          300万円

上級ポーション               298万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計            300万円  8,997万円  8,697万円


相続税        2,000万円

示談金        3,000万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン        -96億円


 今日は部屋がひとつしか解放できなかったが、依頼金は300万円掛った。

 しゃあない、こんな日もあるさ。


 上級ポーションが毎日、出るようになった。

 依頼金がチャラになるのは嬉しい。

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