第23話 5部屋リフォーム

 空き部屋の5部屋を改装することにした。

 なので、今日の討伐はお休み。


「依頼を出したい。ダンジョンにある部屋のリフォームだが。水道と電気と床を頼みたい。一人100万円で頼む」

「分かりました。お待ちください」


 やって来たのは前に受けてくれた人だ。


「ええと、部屋が5部屋なんですけど、良いですかね」

「楽な仕事だから、問題ない。前は少し貰い過ぎた」

「そうだな。俺達はスキルがあるから重い物を持っても疲れない」

「この前はモンスターとの戦闘もなかったしな」


「今回もモンスターは出ないと思います」


 工事費が300万で済んだ。

 材料費は1部屋200万で、1千万か。

 必要な投資だと思いたい。


 工事をしてたら、香川かがわさんがやって来た。


「部屋を改装しているのでよね。ひと部屋売って下さい」

「スキル覚醒塾は好調なんですね」

「はい、おかげさまで。ダンジョンの分譲価格は上がるとみています。今は買いです」


 香川かがわさんの目にはダンジョンの部屋がお金の山に見えているようだ。

 売る方の俺が言うのもなんだけど、大丈夫なのか?

 責任は持てないぞ。


 ポーションも定期的に湧くから、やがて元は取れるとはいえ、スタンピードが起こったら、大損害だ。

 説明はばっちりしたけど、どう考えているんだろう。


「スタンピードが怖くないのですか?」

「倒産を恐れては事業は出来ません。スタンピードが起こったら、破産してやり直せば良いんですよ。実はもう会社を2社潰してます」


 この人駄目な人じゃないかな。

 そんな失礼なことは言えないけど。


「何の会社を潰したんです?」

「予測系スキルで株式の予想をやったんですが、お上からお咎めをくらいまして。儲かってはいたのですよ。罰金が偉いことになりました。ははははっ」

「もう一つは?」

「スキルホルダーの派遣業をやりまして、反社が仕事を依頼してきて、それとは知らずにやらかしてしまったのです。もう警察にしょっぴかれるは、大変でした。儲かってはいたのですよ。あれは冒険者協会の陰謀だと思っています」


 何と言うか、懲りない人だな。

 どこから金を集めて来るかは知らないが、きっと人脈凄いんだろうな。


「倒産はしてないように思われるんですが」

「ええ、2回とも解散です。黒字で終わりました」


「今回も黒字で終わると考えているんですね」

「ええ、減税処置があるので」

「そんな制度があるんですか。魔力回復の間に聞いてきます」


 なんと言うか凄い人だな。

 とにかくまたこれで5千万だ。

 部屋を改装するとまた金が出て行くのだろうけど、まあいいや。


 スキルを使い手伝いをして、魔力を空にする。

 それから、回復の時間を使って、俺は税務署に行った。


「あの、ダンジョンを使った事業を起こしたんですが、減税処置があるとかで」

「はい、ダンジョンのスタンピードに備えるために、基本的にダンジョンを管理する会社は無税となってます」

「それはありがたい。ダンジョンを分譲販売しているのですが、こちらも無税になるのですか?」

「ええ、そうなります」

「ダンジョンの固定資産税も?」

「ええ、無税になります」


 夢の物件じゃないか。

 固定資産税が無税になるだなんて。

 じゃあ、香川かがわさんのスキル覚醒塾の利益も無税になるのか。

 なるんだろうな。

 部屋の分譲の契約書にスタンピードの損害の50分の1を補填すると書かれている。

 ダンジョンの所有権もある。

 50分の1だけど。


 香川かがわさんもまるっきり馬鹿というわけではないようだ。

 リスクに見合うリターンは確保していると言えるのだろう。


 リフォームの手伝いをして魔力を使い切った。

 休む間、税金の話を企画書に盛り込もう。

 区役所にダンジョン分譲事業の企画書の改訂版を持っていった。


「税金の面が追加されていますね」

「ええ、抜けてましたので」


「ダンジョンの中に住むというのは画期的で、上の方にも感触は良いのですよ。ただデメリットのスタンピードの補填がネックでして」

「それは分かります。ただ補填の割合は、1階層のみで計算されています。2階層を制覇すれば100分の1です。階層制覇ごとに50分の1、減ります。契約書でそうなってます」

「20階層を制覇すれば、補填のリスクも釣り合うと思います」

「先は長いですね」


 部屋が売れれば、金が入って制覇が進む。

 制覇が進まないとリスクが下がらず部屋が売れない。

 卵が先かニワトリが先かというようなジレンマに陥っている。


 とにかく部屋が5つ改装できた。

 1部屋は売れたから、あと2億の在庫だ。

 とにかく売れれれば大金持ちだ。

――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

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繰り越し                4,698万円

工事依頼金        300万円

木材など材料費    1,000万円

分譲販売                5,000万円

上級ポーション               301万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計          1,300万円  9,999万円  8,699万円


相続税        2,000万円

示談金        3,000万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン        -96億円


 もう少しで億に届く。

 儲かってはいるのだが、スタンピードの不安がのしかかる。

 金はどうでも良いんだ。

 とにかくスタンピードの補填さえできれば。

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