第20話 ヘルプとスキルの使い方

『16号室、ヘルプ頼みます』


 無線でさっそく呼び出しが掛った。


『了解、すぐに駆け付けます』


 呼び出したのはどらにゃんの尻尾。

 スクーターに乗って現場に到着。

 現場はオーガとの対戦だった。


 オーガの片足と腹には傷がある。

 どらにゃんの尻尾は3人が戦闘不能。


「【リフォーム】」


 オーガは槍に刺し貫かれた。


「ありがとうございます。依頼を受けておいて情けないです。これじゃ依頼金泥棒ですね」

「べつにいいよ。片足を潰してくれたから俺の攻撃が通った。俺の攻撃は一撃必殺だけど、かわされたりすると弱い。数が撃てないからな」

「そう言って頂けると嬉しいです」

「ポーション使ったら赤字ぎりぎりじゃないか」


「ええ、装備も直さないとだし、踏んだり蹴ったりです。今日はこれで上がります」

「お疲れ様」


 フォークリフトでオーガの死骸を運ぶ。


 灼熱の剣も1部屋解放してから上がった。

 大船おおぶねさんも1部屋だ。


 今日だけで3部屋解放できた。

 どらにゃんの尻尾は明日も来るかな。


「【リフォーム】手ごたえがない?」

「亡くなった人が出なくて良かったですね」


 解放した部屋のモンスターリスポーンを潰していたら、藤沢ふじさわがそう言った。


「まあな。危険な仕事だから。1部屋100万円でも安いかもな」

「【マッピング】リスポーンの位置違いますよ」

「マッピングスキルでリスポーンの位置が分かるのか?」

「ええ」


 そういうことは早く言ってくれ。

 もっともそんなことは言えない。


「頼りにしてるよ」

「リスポーンはここです」


 指で差された場所を10センチぐらいリフォームする。

 手ごたえあり。

 これなら、魔力が切れるまですべての部屋のモンスターリスポーンを潰せるな。


 ゴミ回収機能を潰すのも藤沢ふじさわに手伝って貰って、潰すのがかなり楽になった。

 マッピングは役に立たないと思っていたが、嬉しい誤算だな。


 俺のスキルも使い方次第ではもっと役に立つのかな。

 戦闘の方は改善の見込みは薄い。

 槍の太さを細くしたいけど、脳天まで貫通しない気がする。

 ダンジョンからの魔力の供給が太さによるような気がするんだ。

 戦いの中で検証するほどの余裕はない。


 どう思うか藤沢ふじさわに聞いてみた。


「太さによるという解釈は間違っているかも知れませんね」

「何でそう思う?」

「ダンジョンの地形によって頑丈さが違うという話は聞きません」

「でも、そういう研究をしてないだけだろ」

「では調べたら良いんじゃないですか。香川かがわさんに聞いてみたら」

「そうだな。香川かがわさんなら」


 香川かがわさんの部屋のチャイムを押した。


「はーい、どなた?」

戸塚とつかです」


 部屋から香川かがわさんが出てきた。

 ちらっとみたが、香川かがわさんの他に大学生だろう3人がいた。

 塾生かな。


「俺のスキルは部屋の変形ができるんですが、ダンジョンを変形した場合に、魔力の流れがどうなっているか見て貰えますか」

「良いですよ」


「じゃあ早速。【リフォーム】【リフォーム】」


 通路の床を太さの違う柱に変形してみた。


「【マジックアイ】。太さが変わっても魔力の密度は変わらないですね」

「硬さ的には一緒になるのか? でも太くなると強度は増すよな」

「ほらね。私の言った通りです」


 今まで1メートルの4分の1計算で、25センチぐらいの太さの槍を出していたが、5センチでも良いのかもな。

 これは大きな成長だ。


 5センチならかなりの回数攻撃出来る計算だ。

 単純計算で4×5倍の20回。

 2.5センチなら40回。


 もっと早く気づけよ俺。

 あれっ、何か計算がおかしい。

 何だろ何か引っ掛かる。

 むっ、分からん。

 別にいいや。


 人間は一度した成功体験を踏襲するというが、馬鹿の極みだな。

 これなら俺が部屋全部を討伐できちゃう。


「先輩、危険なことを考えましたよね」

「いや、考えてない」

「嘘です」

「ほんのちょびっと無敵かもと考えた」

「連続で攻撃できても、避けられたら、どうにもなりませんよね」

「かも知れない。依頼は出し続けるよ」


 避けられるのが不味いなら、槍でなくて2.5センチのまきびしみたいなのを多数設置するのはどうだ。

 藤沢ふじさわとのパーティならこっちは動く必要がない。

 いい戦術だと思う。


 今度、カイザーウルフとかとやる場合に使ってみよう。


香川かがわさん、ありがとう。おかげで戦術が広がった」

「お役に立てたようで何よりです。貸し一つにしておきます」

「無理なお願いでなければいつでも言って下さい」

「ではのちほど、お願いしに参ります」

「お手柔らかにお願いしますよ」

「ええ」


 無敵なんて思っちゃいけないのだな。

 そういう慢心は死を招きそうだ。


 なるべく危険は減らす方向でいこう。

 俺だけのパーティじゃない。

 藤沢ふじさわもいる。

 俺が戦闘不能になったら、たぶん藤沢ふじさわは。

 二人分の命なんだから、臆病なぐらいがちょうどいいのかも。

――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し                5,673万円

依頼金          300万円

緊急用ポーションセット   56万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計            356万円  5,673万円  5,317万円


相続税        2,000万円

示談金        3,000万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン        -98億円


 依頼金が痛いが仕方ない。

 だが、懐はまだ温かい。

 1階層の全部屋解放しても、お金が余る計算だ。

 リフォームして部屋を住めるようにするのに1部屋200万円の材料費は高い。

 だが、照明、システムキッチン、ユニットバスを入れているから、このぐらいはしょうがない。

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