第16話 九死に一生
また宝箱が出ないかな。
モンスターリスポーンを潰した2部屋は毎日見ているけど、宝箱は出ない。
まだ手を付けない部屋に入るとオーガがいた。
ではさっそく。
「【リフォーム】。串刺し」
俺がスキルを発動するとオーガは前にジャンプして、俺に肉薄した。
不味い。
この距離はオーガの攻撃圏内だ。
「【リフォーム】。盾」
オーガのパンチがダンジョンの床を変形して作った盾に阻まれた。
ダンジョンが揺れる。
不味い。
次を外したら、詰む。
瞬時のうちに思考をめぐらした。
「【リフォーム】。おとり」
オーガの後方の床が隆起して倒れた。
パタンという音がする。
オーガは一瞬首を回して後方を伺おうとした。
「【リフォーム】。串刺し」
今度は無事に仕留められた。
ふぃー、危なかった。
おとりを使うことを考えつかなかったら、たぶん死んでた。
助手がいれば、物を投げて気を逸らすぐらいは出来ていただろう。
駄目だ。
100万ぽっちの給料で危険なことはさせられない。
いいや金の問題じゃない。
とにかく駄目だ。
フォークリフトでオーガの死骸を運び。
コーヒータイムしてたら、
「何でひとりで戦おうとするんです」
「もう金がほとんどないんだよ。冒険者は雇えない」
「じゃあ、私に声を掛けてくれても良かったのに」
「あのな。ダンジョンは危険なんだよ。スキルがない一般人は駄目だ」
「スキルがあれば良いんですね。区役所に行ってきます」
どうせスキルなんかないさ。
コーヒーをお替りして、テレビを見ていたら、
「スキルありましたよ。マッピングです」
それはまた微妙なスキルを引き当てたな。
戦闘には役立ちそうにない。
でもさっきスキルがあればと言ってしまった。
「ダンジョンに入るのを許可する。マッピングは戦闘スキルじゃないから、絶対に前に出るなよ」
「分かってます」
「よし、魔力も回復したし、討伐するぞ」
「はい」
今度の敵は、トラより大きな狼だった。
おそらくカイザーウルフだろう。
初めての敵だが大丈夫か。
とりあえずいつものように。
「【リフォーム】」
足を拘束しようとしたら、避けられた。
不味い。
この展開は予想しなかった。
「【マッピング】。危ない」
俺のいた場所を開いた口が通過する。
ふう危なかった。
マッピングスキルを馬鹿にしてごめん。
モンスターのいる場所もマッピング出来たんだな。
「助かった。【リフォーム】」
カイザーウルフのいる場所の天井から槍が出て串刺しにした。
頭上に注意ってね。
今回は危なかったな。
とりあえずリスポーンを潰し、フォークリフトにカイザーウルフを積む。
へとへとだ。
何とか地上まで運び、業者を呼ぶ。
今回は皮の値段が50万円だ。
カイザーウルフなら継ぎ接ぎ無しで毛皮のコートが作れる。
人気なんだろうな。
「さっきはありがとな」
「愛してるって言ってくれたら貸しはなしにします」
「冗談だよな」
「冗談です。儲かったら、毛皮のコートをプレゼントして下さい。それで良いです」
「ああ、カイザーウルフの奴を作ってやるさ」
「約束ですよ」
まだ、Sランクダンジョンを舐めていた。
俺のスキルがあって1対1だと、楽勝だと。
新しいスキルが喉から手が出るほど欲しい。
でもそんなに簡単に生えるわけないんだ。
それにスキルが生えたからといって使えるスキルとは限らない。
とにかく
目に追えない動きも追えるらしい。
危険になったら、
逆に助けられているじゃないか。
何が前に出るなよだ。
「
「パートナーと言ってくれたのは嬉しいですが、給料のことを聞いて少し興ざめです。お前と俺は一心同体だぐらい言えないんですか」
「お前はかけがえのない俺の家族だ」
「それで許してあげます」
俺は
俺の後を追って会社を辞めてくれて、手伝ってくれたのに。
もし、会社を作ったら、
いやそういう考えが傲慢だ。
「
「ええ」
ふたりで危機を乗り越えるんだ。
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俺の収支メモ
支出 収入 収支
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繰り越し 384万円
オーガ 55万円
カイザーウルフ 100万円
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
計 0円 539万円 539万円
相続税 2,000万円
示談金 3,000万円
遺産(不動産) 0円
ダンジョン -100億円
冒険者は儲かるが、ただし命がけだ。
好き好んでやる仕事とは思えない。
今日も2回死にかけた。
もっと、俺のスキルが強ければな。
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