第17話 ダンジョン分譲の始まり

 今日も部屋のザコ敵討伐とリスポーン潰しだ。

 敵はカイザーウルフだったが、床を変形して囮を作って、飛び掛かったところを止めを刺した。


 これで宝箱の養殖部屋は5部屋だ。


「空き部屋勿体ないですよね。ここって高級住宅地じゃないですか」


 と藤沢ふじさわが言う。


「まあな。でも宝箱の養殖部屋にしておくのが効率が良いと思うんだ」

「住めたらいいのに」

「えっ、ダンジョンの中に住むの?」

「室温は一定だし、壁が厚くて防音効果もありそう」

「ここに住むなんて物好きがいるかな」


 でも普通のことをやっていたんじゃジリ貧だ。

 いまも間引きの討伐数は足りてないはず。

 やらないで後悔するよりやって後悔だ。


 よし、ダンジョンの部屋を住めるようにしよう。

 一番近い部屋まで共同溝みたいなのを作る。

 ここに電気や水道を通すつもりだ。


 その様子を藤沢ふじさわが撮影する。


「そんな撮ってどうするんだ」

「失敗しても、こういう記録って面白いと思うんです」

「まあいい。好きにしろよ」


 共同溝を作ってから、俺は企画書を作り始めた。

 ダンジョン分譲計画。

 ダンジョンを分譲販売するのだ。

 べつに中に住まなくていいんだ。

 宝箱の養殖部屋でもいい。

 投資の1形態だと思ってくれたらいい。

 買ったり部屋を借りたりする人が出て来るに違いない。


 ダンジョン部屋の利点。

 宝箱が定期的に湧いて来る。

 冷暖房費が要らない。

 月の冷暖房代が平均して2万円だとすると、年間で36万円のお得。


 トイレと風呂とかの排水をゴミ回収機能で処理できる。

 下水代だと年間多くて1万円ぐらいか。

 これはそれほど得ではないな。


 そういえばダンジョンは虫がいないな。

 これは虫嫌いな人にとっては大きな利点だ。

 でも利点としては弱いな。


 まあいい。

 企画は何度でも出せる。


 賃貸の家賃を考える。

 1ヶ月に2回ほど宝箱は湧くらしいから、月に600万の収入になる。

 でもそこはギャンブルだから、200万円で貸すのが適当か。


 ダンジョンのスタンピード補填の義務も借りた人に応分の負担をしてもらうつもりだ。

 できれば区に太鼓判を押して貰いたいと思う。


 俺は手早く企画書を作って、区役所に行った。


「企画書持ってきました」

「拝見します」


 職員はじっくりと隅から隅まで読んだ。


「ええと区としましては、大したお力添えは出来ません。ただ、応援はしたいです。上の方に掛け合ってみます。区の推奨事業に入れるどうかはこれから次第ですね」


 どうやら様子見の感じが強い。

 駄目で元々だ。

 次に行こう。


 魔力が回復したのでもうひと狩りいく。


 今度の敵はオークキングだった。

 オークキングは刃渡り2メートルはある大剣を持っていた。

 オークキングがブンブンと軽く振ると風切り音が聞こえてくる。

 剣の動きは早すぎて見えない。


 パワーファイター相手は得意だ。


「【リフォーム】」


 近づかれる前に地面から槍で串刺しにした。


「オークキングの剣がレアメタルとかだったらな」

「ただの鉄なんですよね」

「オークキングが持つと魔力が通って、物凄く硬くて頑丈になるけど、ただの鉄。売るけど、安いんだよな」


「あれっ、宝箱が出たみたいです」

「本当だ。ラッキー。でも罠があるかも。ダンジョンの宝箱って張り付いて取れないんだよ。おまけに魔力が通っているから、不壊と言われるほど硬い」

「私、やってみます【マッピング】。この宝箱の罠の構造が分かりました。ここをこうすれば」


 藤沢ふじさわが針金で罠を解除する。

 カチッと音がして宝箱が開いた。

 お宝はポーションだった。

 前に見た上級ポーションと一緒だから、300万円ゲットだ。

 宝箱は魔力が抜けて、動かせるようになっている。

 このまま置いておけば、ゴミ回収で消える仕組みだ。


 それにしてもマッピングスキルで罠を解析できるとはな。

 よく考えたらリフォームスキルで宝箱をリフォームできる。

 今度からそうしよう。


 出入り口に一番近い部屋にリフォームスキルで扉を作る。

 ドアノブなどの機構はリフォームスキルで埋め込んだ。

 ダンジョンの魔力が通っているから、モンスターの一撃にも耐えるはずだ。


 俺は冒険者協会に行った。


「これの換金を頼む」


 俺は上級ポーションを出した。


「【アプレイズ】。上級ポーションですね。今の相場だと312万円です。いかがします」

「売ります。依頼を出したい。大工、水道工事、電気工事の資格を持った冒険者にリフォームを頼みたい。場所はダンジョンの中で戦闘行為は必要ない。ひとり100万円ずつの300万円でどうか」

「承りました。その条件で依頼を出します」


「それとダンジョン中に安全な部屋があるんだが、貸し出したい。手続は不動産屋に頼むつもりだが、借主募集の紙を貼らせてくれ」

「そういうことでしたら、10万円で承ります」

「じゃあ頼む」


 俺は300万円で、大工、水道工事、電気工事の資格を持った冒険者に依頼を出した。

 俺のリフォームスキルじゃ無許可になってしまうからな。

――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し                  539万円

カイザーウルフ               100万円

オークキング                 80万円

上級ポーション               312万円

工事依頼金        300万円

広告費           10万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計            310万円  1,031万円    721万円


相続税        2,000万円

示談金        3,000万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン       -100億円


 ほんとうに冒険者は儲かるな。

 ウハウハだが、調子に乗っていると痛い目に遭いそうだ。

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