第14話 ライブ配信

 今日も通路のモンスターリスポーン潰し。

 確実に通路は解放されてっている。

 オークに挟み撃ちに出会うなんてのはなくなった。


 油断してたのがいけないのだろう。

 足ががくんと地面がないのを伝えてきた。

 落とし穴だ。

 一瞬で事態を悟った。


「【リフォーム】。ふぅ」


 落とし穴の壁から棒を出してそこにつかまった。


「大丈夫か。今助ける」


 大船おおぶねさんが落とし穴を覗き込みそう声を掛けてくれた。

 一人でなくて良かったよ。


 大船おおぶねさんがロープを投げてる。

 這う這うの体で穴から上がる。

 ふぃー、それにしても今回は危なかった。


「注意力が切れているな。トラップのスイッチは分かるはずだ」

「すいません。考え事してました」

「悩みか、言ってみろ。言うことで楽になる」


「100階層あるとして、危険水域を回避するには10階層は制覇しないといけません。俺に出来るのかなって」

「スタンピードは色々と酷いからな」

「そうなんですか」


「被害者の中には、大切な人が生きたまま食われたのを目撃した人がいる」

「そうですね。目の前で大切な人を失ったら立ち直れなくなりそうです」

「だから、スタンピードは起こしちゃいけない。本当ならこの仕事もただで受けてもいいんだが、他の冒険者の手前もある。相場は守らないといけない。冒険者のやつらだって命を掛けている。もし死んだら家族に金を残さにゃならん」

「分かりますよ。ダンジョンの危険は、ここ1週間でいやというほど知りました。金が見合っていないと思います」


「とにかく、できるだけやろうや。スタンピードの心配なんかする暇ないぐらい討伐に集中しろ。そして仕事が終わったらダンジョンのことを忘れるんだ」

「いえ、常にダンジョンのことは忘れません。忘れたら後悔が残るような気がします」

「お前さん、そんなんじゃもたないぞ」

「でもやらないと」

「とにかく今日は駄目だ。落とし穴の後始末をしたら上がれ」

「いやでも」


「死にたくなかったら、上がるんだ。いいか分かったな」

「はい、そうします」


 コーヒーを飲みながら考える。

 リフォームスキルは良いスキルだ。

 必殺とも言える。

 Aランクモンスターともやり合えているのが証拠だ


 大船おおぶねさんが持っている3つのスキルのうちのどれかだったら、たぶんこうはいかないだろう。


「先輩、何か物憂ものうげですね」


 一仕事終えたのだろう、藤沢ふじさわがパソコン部屋から出て来てそう言った。


「俺ってもしかして恵まれている?」

「どこがですか。おかしくなったわけじゃないですよね」

「なんか上手く回っている気がするんだ。駄目なのかなと思ったけど、よく考えたらもう少しで1階層の通路を制覇だ。目標の5%達成。短期間にこれって凄いことじゃないのか」

「凄いですね。モンスターをダンジョンから永遠に追い出しているわけですから」

「よし、動画撮るか」

「急に何を思いついたんですか」


「携帯の電波は届かなくても、WANケーブルを引っ張って、Wifiルーターを繋げば、ダンジョン内でもスマホや色々な機器が使える」

「いいですね」


 俺はWifi接続をしたカメラを設置した。

 まだ討伐してない部屋の様子を24時間ライブ配信するためだ。

 3台買ったが、合計で1万円をきった。

 コスパが非常に良い。


 物珍しさもあってライブ配信は少し受けた。

 現在、登録者数は459人だ。


 オーガやカイザーウルフがうろうろするライブ配信が何で受けるのかな。

 ああ、動物園のカメラを見ている感じか。

 それが珍しいモンスターときては人気がでるのも分かる。


『オーガは図体のでかさに、かかわらず素早い。その動きは残像ができるほどだ』


 俺はテロップを入れた。


『オーガ、カメラで見ても迫力がある』

『ダンジョン24時間、面白い』

『他のモンスターが現れないと飽きる』


 コメントが寄せられる。

 他のモンスターが入れ代わり立ち代わりしないといけないのか。

 となるとフィールドタイプの階層だな。


『フィールドタイプの階層に到達したら、カメラ設置予定』


 俺はテロップを入れた。


『期待してる』

『そうしたら毎日みてやる』

『ワクテカ』


 ダンジョンの危機をもっと伝えられる映像が撮れたらなぁ。

 モニター越しじゃ伝わらないし。

 モンスターと戦わないと本当の脅威は伝わらない。


 どこか他人事なんだと思う。

 どうやったら伝わるのかな。

 答えがでたらきっと世間が動く時だと思う。

――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し                  684万円

依頼金          150万円


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計            150万円    684万円    534万円


相続税        2,000万円

示談金        3,000万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン       -100億円


 配信で億とかの金額を稼ぐのは夢のまた夢。

 でも新しいことを始めると、何か少しずつ進んでいる気がする。

 この調子でやっていこう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る