1話②


***


「あれ誰? どこの新人? 凄く可愛くなくない?」


あわわ、メイクで化けた私をみんなが見てる! 恥ずかしい。


「でも、隣にいるのって如月景じゃない? 何で? 人気アイドルが女の子の手を繋いでテレビ局に?」

「さあ……? オーディションで勝った子だとして、景の事務所的には無名の女の子とあまりかかわらせなくない? 売れっ子ならとにかく」

「と、思うよ」


 ざわ、ざわ。なんか色々言われてるけれど、ここってテレビ局? あの後車で運ばれて、気がつけば有名テレビ局っぽいとこに連れてこられた。怖い。


 あちらこちらに芸能人がいる、あー。あの子今日の朝テレビで見たばかりのアイドルだ! 可愛い。


 あああ! あれはお昼の番組のベテラン司会者だ!! あわわわ。凄すぎてやっぱりここにいるのが怖い。目が回りそう。


「ルリ。深呼吸して落ち着け、俺がいる」

「景」


 そんなこと言われても、赤の他人じゃん。

どう落ち着けと。無理、絶対無理。むしろ余計緊張するよ!

当然でしょ。景はフレンドリーだけれど、国民的アイドルだよ!?


「ここ、入ってルリ」


 景に手招きされて、私は彼のそばに歩み寄る。

 と。


「え」


 眩しい!!

 大量のカメラが私を見てる。え、ええええええ!? 何これ。


「記者会見だ。お前は横に立っているだけでいい」

「へ!? 帰りたいんだけど」

「頼む。そもそも警備員がいて盲導にもならないが。本当悪い」

「えええ!?」

「お待たせしました。如月景より重要なお知らせの会見を今から開始します」


 景のマネージャーさん!? めっちゃちゃんとしたスーツだけれど、今までどこにいたの!?


「「よろしくお願いします」」


 マネージャーさんや景も頭を下げてるし。ああ。テレビで見たことある風景だ。

 有名人が何かやらかしたりした時に、頭を下げた後インタビュー受けるやつ!!


 それに、何で私も混ざっているの!?


「今回お集まりいただきありがとうございました。改めまして如月景です。いつも応援ありがとうございます」


 わあああ、その場が盛り上がる。


「今回は僕からお知らせがありまして、それが二つあるんです。まず一つ目はファッションブランドの開発。隣の女の子が着ているような、誰でもお姫様になれる服を作ろうと思っています」


 ああ。なるほど。私はマネキン役として呼ばれたのか。納得。


 そもそもそれこそマネキン本体で良かった気もするんだけれど。

 一応私も頭を下げてくるりと一回転すると歓声が響いた。

 すると、景が私を手招きする。そして抱き寄せた。


「ちょ!? 景」


 やば。テレビの取材中に下の名前で呼んじゃった。


「もう一つは、この隣の子と真剣交際するために、アイドルを引退することです。このブランドを作ろうとしたきっかけも、アイドルを目指した理由も、すべてこの女の子なんです。すみません」


 嘘!? そんなバカな。でっちあげでしょ?


「って、えええ!? 景!?」


 私が目をパチクリしていると景はまさかの土下座を始めた。


「どうか、暖かく見守ってください。なお、まだ僕の片想いですが……凄くいい子なんで、幸せにしてあげたいんです。どうか、お願いします。芸能活動は続けますので」


 空いた口が塞がらない私。ええええええ!? 私、やばい数の女の子を敵に回したよね!?

 ぎゃああああーー!! 最悪、地味に生きたいのに!! もう消えたい。


「!? ルリ!?」


 景があわてて近づいてくるのが見える、

 ああ、もうダメ。もう無理。


 私はその場で気絶した。


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