第2話
彼女は静かに座っている。
「怪鳥の群れに襲われ、騎士二名が首を裂かれました。その他騎士五名が聖堂で回復を行っています。兵士の死者は十名です」
淡々と彼は報告をした。
今回の遠征もさしたる成果は出なかった。
ますます人間側は防戦を強いられることが多くなっている。
「貴方はどこへ行くの?」
「仲間の回復を見に行きます」
美しく響く神の声に、彼は答える。
「心配だわ。私も行きましょう」
「いいえ、彼らは貴女に与えられた体に傷をつけられたことを恥じています」
「そう」
騎士が損傷しているところを魔女に見せることは規律により禁じられていた。
彼は部屋を出て仲間のいる聖堂へと向かう。
扉を開けると、そこには無残の光景が広がっていた。
聖堂とは名ばかりで騎士達の休息所となっていた。以前は並んでいた長椅子が取り払われ、等間隔にベッドが置かれている。窓からは今日も太陽の光が注ぎ込んでいる。
壊れた騎士達がベッドに寝かされている。
怪我などと生やさしい言葉では表現することができない。
彼らは足をもがれ、臓腑が飛び散り、喉を潰されたのだ。
「頼む、頼む、俺を殺して、首を刎ねてくれ」
両腕のない騎士が通りかかった彼に叫ぶ。
「安心しろ、気の迷いだ。すぐに落ち着く。魔女の加護を」
騎士は勝手に死ぬことは許されない。
騎士は魔女の加護を受け、国民の期待を背負った道具だ。
それが彼らの価値だった。
彼は鳥を追い払い、四散した仲間の部品を集め、街まで撤退してきた。
彼自身も仲間を庇うために左腕を折った。しかし加護で骨はすでに修復されている。
一晩経てば、彼らも傍目には五体満足に見えるだろう。
そうすれば、また戦地へ赴くことができる。
地獄だ、彼は誰にも聞かれないように呟いた。
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