久石さんと心の友

久石あまね

第1話 脱走

 閉鎖病棟の三人部屋。

 久石さんはベッドでスヤスヤ昼寝をしていた。寝返りを3回ほどうつ。久石さんは夢の中だ。 

 久石さんは2時間ほど寝て起きたらもう夕方になっていた。

 入浴の時間になり、大浴場に行った。着替え場で久石さんは裸になった。この閉鎖病棟には温泉があり、それが患者に人気を呼んでいる。久石さんは湯につかった。温泉には久石さんだけだった。久石さんは窓から顔を出し外を眺めた。一羽のツバメが飛んでいた。もう5月だからだ。ふと久石さんは温泉から出て窓から抜け出た。裸で素足の久石さんの足裏に砂利がめり込んだ。痛い。久石さんは顔を歪めた。久石さんは裸のまま、病院の敷地内のけやきの植木によじ登った。植木には緑の葉が茂っており、久石さんの裸体を隠した。

 久石さんはサザエさんのエンディングテーマを歌いながら、けやきの木の上で日が暮れるまで待機した。途中、2回、木の上から放尿した。キレイな尿だった。けやきの木から塀を挟んで細い遊歩道がある。遊歩道に小学生の集団下校の一団が通りかかったが、なぜか気づかれなかった。気づかれたら確実に笑われていただろう。久石さんはそのことに安堵した。

 やがて日が暮れて、月が光りだした。

 久石さんは木から、遊歩道へ飛び降りた。

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久石さんと心の友 久石あまね @amane11

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