第5話 平和な島に犬を放つ所業

さて、今日も元気に襲撃されているようだ。

さすがは最前線の街である。


私は早速馬を走らせ、魔物の中に突っ込んだ。



「ウォーホッホッホ! ウォーホッホッホッ!」


 お洒落な傘でどんどんホームランしていく。


「ウォーホッホ! ウォーッホッホッホ!」


 扇で切り裂いていく。お、竜発見! やったね!


「ウォーホッホ! キャッハハハハハハ!」


 鞭で引き裂いていく。


「お掃除! 完・了!」


 もちろん、敵の死骸は全てアイテムボックスである。


「き、貴様何者だ!?」


 城壁の上から見ていた騎士の隊長っぽい人が声を掛ける。


「リリアンヌ。この地の新たなる領主のリリアンヌですわ!! 今日より、よろしくお願いしますわね」

「新たなるジョブ、プリンセスの持ち主! 退屈姫、本当は切れ者、誰一人味方のいない嫌われ者、王国始まって以来の浪費家……!」

「ちょっと! 友達はいなくても味方はいてよ!」

「めっちゃくちゃじゃねぇか……! こんなやつがお姫様やってたってのかよ!?」


 なんだか感銘を受けているようだった。


「ま、まあ、この町の維持、ありがとうございます。貴方達は役目を立派に果たしてよ。欲を言えば、一ヶ月くらいいて欲しいけれど……お願いできるかしら?」

「陛下からは二ヶ月の任期を与えられています」

「良かった! ありがとう、とっても助かるわ。早速案内をしていただける?」

「街の者もほとんどが逃げて、神殿と屋敷ぐらいしかありませんが」

「あら、神殿と屋敷が残っているのなら完璧よ」


 そうして、私は案内を受けたのだった。


「素晴らしいわ」


 小さな神殿に感銘の声をあげる。ゲーム通りである。

 早速私はゲートを開いた。


「マダム・アリス」

「ショーは成功よ! ドレスが飛ぶような勢いで売れているわ!」

「私も、無事最前線の戦地に着いたわ。それで、マダム。貴方のお友達の中に、屈強で狩猟や魔法に興味のある殿方はいないかしら? 信仰を変える覚悟があるならなおいいわ。プリンセスは信仰なくともなれるけれど、戦士や魔法使いは信仰が必要なの。プリンセスももちろんご招待するけれど、それだけではね。マダムも大量のドレスの材料が必要なんじゃない?」

「そうねぇ。大いに心当たりがあるわ。でも、依頼には報酬が必要よ?」

「ひとまず、私が得た獲物を提供して活用方法の教室を開くわ。無料で、お土産付きでね。後は自由に森を開拓して資源を持っていってちょうだい。ただし、ここ以外の人里の方には行かないで欲しいの。帝国への侵略になってはいけないわ。私の権利はあくまでこの土地だけなのよ」

「領地の中なら開拓OKってこと?」

「5年。5年の間、自由な開拓と開拓地の所有を許すわ。税金も今から5年間なら驚きの0よ。ただし、真っ当な商売に限ってだけどね。帝国は10年税金を無料にしてくれると言っているわ。ちなみに帝国の平均的な税金は50%らしいから、気をつけてちょうだい。参入して稼げるだけ稼いで5年後に撤退するのでもいいし。5年後には、税金を取れるように権利関係を整理して街を建て直してちゃんとした区画にするけれど、それだって開拓者の意思は考慮するわ」

「ふぅん。それはちょっと難しいじゃないかと思うけど、税金0は魅力ねぇ。その条件で話してみるわ。ゲートは開きっぱなしでいて頂戴」

「ええ」


 即日で「害獣災害国際援助」の条約を我が領地と結んだ各国との会議の元、新しい街が建てられる事となった。

 名だたる建築家達が一ヶ月で丈夫で異世界に即していて魔物に襲撃されても大丈夫で美しい町を設計している間、とりあえず仮の陣地を構築する事になった。


 この間1週間である。


 その間、私は昼はゲーム知識で魔物の捌き方(何故かスイスイ捌けた)とアイテム活用方法をひたすらレクチャーし、夜はハイパー頭のいい官僚集団(ただし国際色豊かで裏で常に足を踏み合っている)の作った書類に判をおす作業である。


 方法としては、現代兵器で陣地を守りつつ、ダンジョンや魔物退治でレベル上げを頑張ってジョブを上げていく方式である。


今は職人と軍人しかいないが、いずれ観光業も盛大に盛り上げていきたい。


なお、早馬で皇帝陛下の元に告げ口に騎士が出発したが、戻ってくる二ヶ月後には新しい町の建設が終わっていると思うよ?


さて、不妊から1週間経ったわけだが、自衛隊のジョブ持ちと、海外のプリンセスジョブ持ちがめちゃくちゃ増えてカオスな空間が生み出されている。


うーん、プリンセス以外のジョブも早めに作ってあげた方がいいな。悩む……。


あ、プリンセスレベル4は武器へ属性を付与させて盾にできる。

属性は何を取得するか選択式だ。

生産はドレス作成。


プリンセスレベル5は武器へ属性を付与して攻撃できる。

生産は、ハイヒール。


プリンセスレベル6は、更に武器へ属性を付与して飛ばせる。

生産は装飾品。


今の所、最高レベルは6である。私も6。ただし、7レベルも近い。

7レベルのスキル何にしようかまだ決めてないのよね……。

歌にしようかしら?



それと、私の小神ジョブも上がった。

小神レベル3。

ダンジョン作成と奇跡が可能になった。

大豊作とか災害とか。奇跡っていうか半分祟りじゃないですかね……?



まあいい。



とにかく、皆勉強熱心で、一ヶ月後には予定通りプリンセスタウンの建築も始まり、私がこの領地に来た際の魔物も無事アイテム化されて分配された。


魔物を捌く時間がなくなったので手が空いたと思ったら、映画プリンセスの脚本が回ってきた。

素晴らしいわ。これで行って頂戴。

アイテムについて質問? ああ、それはポーションを作るのに必要でね。

そんなこんなで、更に一ヶ月後。


人種のサラダボウルが出来てたし、警察機能は各々の国家が自警団を作ってるし、街の第二弾の計画は立ってたし、とりあえずで立てた軍事施設はバリバリ現役だし、大規模薬草農場は出来てるし、民間人達は大はしゃぎしているし、目端の聞く帝国商人はなんとか街に入り込んで商売をしようと必死だし、既にカオスの様相を見せていた。


5年後、これから税金取るんだぜ……?


まあいいわ。


その辺は、全て未来の私に任せましょう。


私はマダムのお友達に誘われ、映画館に行くのに忙しいのだ。

16年間娯楽に飢えていた私にとって映画や音楽やアニメやドラマを見ること以上に大切なことなどない。


「なんじゃこりゃああああああああ!!」


 派遣されてきた文官が悲鳴を上げてるが、ないったらないのである。仕事いやー。

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