第4話 湯水のように予算を注ぐ(他国に)。そうよ私は浪費姫!

キラキラと輝くドレスに、私は喜びに震えていた。


パワー! まさしくこのドレスはパワー!


「ま、こんなものね」

「素晴らしい、素晴らしいわ、マダムアリス」

「当然でしょ。パワー・プリンセスショーの主催、ありがとう。リリー」


 そう、私達は共同でプリンセスジョブオンリーのショーを開く事としたのだ。

 しかも、その売り上げで映画プリンセスを撮るのだ!

 男も女もプリンセス。時代はジェンダーレス!

 私のジョブは刺繍に加護を与えるので、デザイナーの間に刺繍ブームが到来していた。

 小神のスキル第二弾は職業斡旋所とチュートリアルダンジョンだった。これで私がいちいちジョブを斡旋しなくて済む。

 そうそう、ジョブ持ちとの念話も出来る。

 ちなみにジョブはレベル10までである。

 神殿? それを言ったら宗教問題になるからダメなのよ。私はプリンセスジョブの紹介者。いいね?


 チュートリアルダンジョンでは気品ある立ち居振る舞いをしつつ、刺繍や戦闘をこなせればクリアできる。


 そして、プリンセスジョブのレベル2。

 プリンセス技がいくつか選択できる感じだ。戦士でいう強打である。

 後は化粧品の作成である。ぶっちゃけポーション作成なのだが、回復力はそうでもない。お肌がプルンプルンになる。質のいい化粧品と混ぜて使うとなお良。


 プリンセスジョブのレベル3。動物を従える事と、宝石に魔法を込められる。


 マダムアリスはプリンセスレベル3である。

 既にプリンセスの特技である滞空も使いこなしておられる。


「それにしてもリリー。貴女、食べ過ぎよ。いくら美味しいからって、節制ができないのはプリンセスに相応しくないわ。気をつけなさい」 

「はい」


 私はしょげる。だって今世で初めて美味しい物を食べたのだ。ハンバーガーが美味しすぎる。


 そして、ショーは大成功となった。

 上空から傘とドレスを広げてふわりふわりと降りてくるモデルのプリンセス達は幻想的で、大ウケだった。


 その場で職業斡旋所とチュートリアルダンジョンの位置をアナウンス。

 皆さんからの売り上げは映画プリンセスに使用させていただきます。


 当然ながら大騒ぎとなった。


 一方その頃、私は舞踏会にデビュタントを果たしたのだった。

 お色直しは三度。伝説ドレス、流行ドレス、そして普段着ドレスである。

 そして、パーティ会場にプロジェクターで私のプロモーションビデオを流した。

 最強無敵絶対可憐な私が巨大な魔物と戦い、困難を超えて街に一人着任する様子を描いた10分ほどの動画である。マダムアリスの人脈に感謝。若干悪役姫様っぽくてパワーでしかしプリンセスな所がグッド。


「皆さん、私はこの後、帝国の最前線の町で新たなる波を興してご覧に入れますわ。20年! 20年後には、私の街はこう呼ばれる事になるでしょう。荒々しくも豪華絢爛な街、プリンセスタウンと! そのために私、手段は選びませんわー! ウォーホッホッホッ!! ゲッホゲホ」


 人々は、呆然としつつ、兎にも角にも拍手をしたのだった。


 








「お姉さまは面白い人だったのですね」

「それ褒めてるのかしら? 貶してるのかしら?」

「帝都の最前線の領地に一人で赴任なんて、絶対上手くいきませんわ」

「あら、あれは単なるイメージ動画よ。政治は落ち着くまでは適当でいいって言ってくれたし、こんな私にも力になりたいと言ってくれるものがいるの。特に豊富な予算がある今はね。向こうで合流予定なのだけど、魔物素材を欲しがっていて、むしろ私の招待を喜んでくれていたわ」

「先ほど着られていた素晴らしいドレスを用意できるくらいだから、それはそうなのでしょうね。ねぇお姉様、紹介してよ」

「するわけないでしょ、彼女がもっと素晴らしいドレスを作ってしまったら、私がみんなの記憶から消えるじゃない」

「あれを忘れるのはとても困難ですよ」

「そうよ、私だったらあんなドレスを着られたら一生忘れられない思い出になるわ」

「まあ、退屈な人生を送る予定なのね。私はもうちょっと刺激的な生活がいいわ」


 そうして、私は旅立った。

 馬を一人走らせて、街が見えなくなったらさっさと赴任先にワープ。

 馬旅で一ヶ月なんてだるくてやってられない。

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