7 エルリの言いたかったこと

「佳奈さんが拾ってきた武器、使えそうですか?」

「ああ、あれか。さっき少し触ってみたけど。どうだろうね。使い方があるみたいだけど、説明書なんてないし。俺には難しいと思うよ」

 彼はお手上げという風にそう言った。わざとゆっくり話しているな、とエルリは気づいていた。


「あの人だったら、使えちゃうんでしょうね、どうせ」

 無意識に皮肉を言ったことに、エルリは自分でも驚いたが、黒澤が「ふふふ」と笑ったことに後から気づき、思わず彼の方へ顔を向けてしまった。彼は同意した。


「そうだな、こんなトリッキーな物扱えるのは、あいつくらいだろうな。どうせ、掴んだ途端に使いこなしちまうんだろうよ。そういう奴だ。本当にムカつくよ」

「私もあの人、ムカつきます」

 エルリはそう言って舌を出した。そう、どうせ彼は使いこなすのだろう。いとも簡単に想像がついた。そして、ふと、思っていたことを聞いてみた。


「アタッカーとして戻ってほしいですか、あの人に」

 すると黒澤は、笑みを引っ込めてエルリの方へ顔を向けると、少し俯いた。しばし腕を組んで考えていたが、鼻から息を漏らし「わからない」と答えた。顔を上げて、そのまま続ける。


「忍くんと組んでどうなるかにもよるけど、いないもんはいないんだ。考えたって仕方ないよ」

 そう言って、また優しく微笑む。まるで自分に言い聞かせてるみたいだな、とエルリは思った。そして、また少し緊張しながら続ける。


「私でよければ、ガレージの力になります。私だって、あの人と同じデザイナーベイビーだし、特色の使い方は……、人捜しなんで地味ですけど。でも私、がんばりますよ」

 それを聞いて黒澤は目を丸くしたが、エルリがずっと自分に伝えたかったことだと察して、何度も頷いた。彼はエルリにお礼を言った。


 その後はどちらも気恥ずかしくなったのかしばし無言になったが、高見が元気よく戻ってきたので、ガレージはすぐにいつもの色を取り戻した。3人で簡単な食事を済ませた後、黒澤は眼鏡をかけ、再びモニタに向かった。


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