4 支援者の正体
「どうかしましたか?」高見が訊いた。
「ああ、きみたちに紹介するはずのアタッカーが到着したようだ」
「あの人、ちょっと変わった人ですね」
「だが腕は立つ」
琴平はそう言って席を立った。ガレージの扉に向かおうとした時だった。真夜中だというのに、バァーン! と大げさに扉を開け放ち、銀髪の男が姿を見せる。しかし、彼が放った一言が、高見たちの神経を凍らせた。
「遅くなってごめんね! パパ!」
銀髪の男はそう叫んで、ガレージに駆け込んできた。琴平に抱きつきそうな勢いだった。黒澤も高見もエルリも、彼が何と言ったのか理解できずに目を点にさせていた。
確か彼はこう言ったのだ「PA,PA」と。
パの音が二つ並んだ文字の意味を、3人は徐々に取り戻していった。エルリは呆然と一点を見つめ、黒澤は持っていたサイダーのボトルを床に落とし、ついでに自身もソファに倒れ込んだ。やがて高見が悲鳴をあげた。有名な絵画よろしく、両手を頬に添えている。
「パパぁ!?」
すると、頬を少し膨らませた銀髪の男は……、彫刻のような堀の深い顔つきに精悍な瞳、よく見れば190センチは有りそうな筋肉質の男は、髪を掻き上げて高見の元へ歩いてくる。どこか挑戦的な瞳で彼女を見下ろした。琴平は無表情のまま話を繋いだ。
「うむ。紹介しよう。せがれの忍だ。今日からきみたちガレージに派遣された”アタッカー”だ。上手に使い給え」
すると紹介された男、琴平忍は両手の拳を振り、半ば不服そうに苦言を漏らした。
「パパ! なんでこんな二流チームの支援をこのボクがやるんだい!? 釣り合わなさすぎてお話にならないよ。なんとかならないの!?」
「仕方あるまい、これも仕事だ。社会勉強だと思って頑張ってきなさい」
「パパがそう言うなら……」
忍はそう言って、しぶしぶ了承したように思えた。高見は唇を噛んで、目の前の琴平(父親の方)を睨めあげた。この世の終わりをもたらす死に神を見上げるかのように。
当の本人はそんな視線を完全に無視し、ソファに戻ってハーブティーを啜った。そして、ニヤリと口元をつり上げる。まるで、「きみたちのチームに大手の正規メンバーをやれるわけがあるまい」と言っているようで、高見は地団駄を踏んだ。
一方の忍といえば、また一人で話続けている。既に誰も聞いていないが、本人は気づいていないらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます