3 オートマタが狙われた理由
「起こしてしまったかな?」
「……、いや、起してくださいよ」
黒澤は居心地の悪そうな顔をして、顔を拭った。出かけた時のままだということを思い出す。薄汚れた姿で琴平に会うのもどうかと思ったが今更仕方ない。
少しぼんやりしていたので、彼はキッチンからサイダーを取ってきた。キャップを捻るとプシュッと音がした。液体を口にすると、二酸化炭素が体内の酸素を奪った。それに抗うように、彼は大きく息を吸った。
「何の話してたんですか」
「ちょうど、さっきまで居た廃棄場の地下施設の話ですよ」高見はそう言って琴平へ話を促した。彼は続けた。
「あの施設については、1年前の違法オートマタ一掃作戦時から調べがついていた。あの大規模な作戦に紛れて私が地下を調査するつもりが、予期せぬ出来事が起きてな」
「伊野田さんが人間にボコられたっていうやつですか?」
高見がそう言うと、隣にいたエルリが「うそ」と声を上げた。彼のそんな姿は想像が付かないと言った顔だ。琴平は頷く。
「左様。あのとき彼は、笠原工業の人間たちに負けたわけではなかった。地下施設を隠そうとしていたアンドロイドにやられたのだよ」
それだったら彼でも負けるかもなと黒澤は思った。アンドロイド達の頑丈さは、今日、身をもって体験したからだ。囲まれればひとたまりも無いだろう。
「アンドロイドたちはその頃から、いやそれ以前から我々を警戒していたのだよ。事務局、大手、笠原工業の三つ巴をな。我々の技術が”北の狭間”のテクノロジーを越えてしまうことを恐れている」
「それでメトロシティの正規品オートマタが狙われたんですね」
高見は腕を組んでソファにもたれかかった。柔らかいソファがぽすっと音を立てる。そしてモーテルで発見した、壊れた清掃オートマタを思い出す。腹部が開閉され、データが取り出されていた。そして現場で取り逃がしたのが”北の狭間”のアンドロイドだとしたら、既にメトロシティの街中にアンドロイドが紛れている可能性が高い。
黒澤に視線を送る。彼も似たようなことを考えたはずだ。仮にも自分たちは、今日、アンドロイドの前に姿を晒している。対応方法を早急に練らねばならない。
ああ、忙しくなりそうだな、と高見は徐々に高まる胸の高揚感を抑えきれずにいた。テーブルに置いたままの”奴ら”の武器もある。解析できれば、有効活用できれば、黒澤や新しく派遣されるアタッカーにとって大きな戦力となる。
すると琴平が何かに気づいたのか、一度ガレージ入り口に視線を向けてから端末を操作する。
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