2 戦利品について
「これは廃棄場地下の現場で遭遇したアンドロイドが使っていた武器です」
琴平は一度目を鋭く細めた。高見の顔を見据えてからそれを手に取る。剣の柄のように見えるそれは目立った装飾も無く、これといって使い込まれたような跡もなかった。
「使うところを見てましたが、柄を振るとエネルギーが発生する仕組みのようです。でも、それはまだ真新しい。単純にアンドロイド側の新装備なのか、使ってる方も使いこなせてなかったのかわかりませんけど」
「なるほど、きみはどう思うかね」
「手形が残ってないので、相手も使い慣れてないと思います。だからアンドロイド自体は脅威だとしても、あっちもまだ発展途上なとこがあるんですよね?」
「私もそう思うよ。さすがガレージ。話がわかる」
琴平は淡々とそう告げて、武器をテーブルに戻した。高見は話を続けた。
「でもどうして、今になってこの依頼を事務局にアップしたんですか? 廃棄場地下にあの施設があったって知ってたなら、伊野田さんが居た内に済ませたほうが良かったんじゃないですか?」
伊野田。元アタッカーの男の名前だ。彼は以前、この琴平が同行する形で違法オートマタの破壊をしていた。彼が引退する前に物資を回収すれば良かったのでは無いかと、高見は思ったのだ。
「その情報が入ったのが最近でね。きみも会ったことがあるだろう。笠原工業の後藤晶氏だ」
「後藤晶?」
彼女はその名前を聞いて、指で顎をさすった。やがて視線が斜め上をなぞると、彼女は手を打った。
「あ、笠原工業に乗り込んだ時に会った研究者ですね。このあいだテレビに出てましたよ」
それを聞いて琴平は無言で頷いたが、高見はまた、じわじわと笑みを浮かべてしまった。
この男は、いくら事務局を退いたとはいえ、笠原工業内部にも手駒を置いていたとは。つくづく抜け目ない男だと高見は思った。すると、隣のソファで寝ていた黒澤が、大きな目を開いた。視線の先に琴平がいたので、彼はしばし固まったがむくりと起き上がる。
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