5 物資の回収、はいります
背後に紫の閃光が弾けるのが見えた。次いで衝撃音が響く。小走りで移動しながら、高見は振り向かずに口を開いた。
「あの人なんですかね」
「銀髪のほう?」
”あの人”に該当する物が三人いたため、黒澤は髪の特徴を挙げた。最後に現れて馬鹿げた大槌を振り回していたのが銀髪の若い男だった。
「はい。支援者っていっても、めちゃくちゃ変な人来ましたね。見た目めちゃくちゃカッコイイけど」
「だが彼が着てたのは、あれは大手の制服だぞ」
「大手の? よくそんなとこまで見る余裕ありましたね。それにしても来てくれたのにお礼言うの忘れましたね」
「それどころじゃ無かったし、琴平さんの紹介ならそんなに気にしなくてもいいだろ」
「そうですね」
黒澤と高見は、洞穴の入り口付近まで戻って来た所で身を潜めた。”奴ら”がもう一人いたはずだ。
「誰もいないな」
「どこに行ったんですかね、ボブカットの方」
「いないなら、それに超したことはない」
黒澤は手短にそう言って、ボウガンを構えた。立ち上がり、警戒しながらゆっくり進む。
「もうシールドも壊れそうだし、早く回収して戻りましょう」
「そうしたい。物資はあの奥か?」
彼は丸くて大きな瞳を洞穴の奥へ向けた。高見が返事をする。黒澤が先に回収ポイントへ進んだ。遠くからは再び轟音が響いた。空気がチリチリ凝縮されているように、皮膚が突っ張ったような気がした。
洞穴の奥は、潜水艦の小部屋のような造りになっていた。そこにも誰も居ないことを確認し、高見に道を譲る。彼女は素早く小部屋に入り、そこに置いてあったケースを手に取った。端末を操作し危険が無いとわかると、そっとケースを開いた。そこには一見ただの石ころのような物質が埋めこまれていた。彼女はそれをスキャンし、振り返る。
「ありました。これですね。えっと、”ワニの歯”? ほんとに歯形かと思ったら、ちゃんと素材だったのでよかったです。黒澤さん、戻りま……」
言い切る前に彼女の視線の先に紫の閃光が走った。稲妻が真横に走ったような勢いに、彼女は思わず尻餅をつく。
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