3 こんなの相手に勝てるかよ 

 高見佳奈はとっさに隣にいた黒澤を蹴り飛ばした。彼女自身も反動で逆に転がる。同時に、彼が居た場所に光の筋が降り注ぐ。火花のように飛び散る紫の閃光は数秒岩場にとどまった後ではじけ飛んだ。


 ロープガンを構えた高見の視線の先には、丸顔の男が立っていた。先程遭遇したボブカットの女と顔が似ているが、あちらのほうが細長い。着ている物は同じく衣装のような作りだったが。

 丸顔の男は手にサーベルの柄のようなものを握っており、その先には紫の光の筋が伸びていた。


「……それって、どんな仕組みですか? なんかサイリウムみたいですよね」

 丸顔の男は答えなかった。わずかに首を傾げて光のサーベルの先端を彼女の方へ向ける。高見は息を飲んだ。すると鋭い声色が洞穴に響いた。


「高見さん、シールド!」

 彼女はそれを合図に再びシールドを展開させた。すぐにあたり一帯が閃光に包まれる。近距離にいたため数秒視界を奪われたが、彼女はすかさず後退した。黒澤が前に飛び出してくる。意を決しボウガンを構え、矢を打ちこむ。しかし放たれた矢は、丸顔の男が着ている服にいとも簡単に弾かれて別の方向へ飛んでいった。


 悪態をつく間もなく、黒澤の目前に光のサーベルが振り落とされる。高見は慌てて丸顔の男にロープガンを放った。放射状に飛び出した網の目状のロープは、丸顔の男の動作を少しだけ鈍らせた。おかげでサーベルの直撃は免れたが、黒澤は再び光の帯電に巻き込まれ後方に吹き飛ばされた。


 ああ、どうして自分はこんなに小柄で力もあまりなくて決め手に欠けるんだろうか。もっと筋肉が欲しかった。筋肉、そうワイルドな感じの。


 宙を舞う自分の視界が濁る。それと同時に、ドゴっ! と、まるで地響きにも似た轟音が全身を震わせた。頭から地面に激突した音かと思ったが、違ったようだ。高見佳奈が自分をキャッチしたらしい(重なるようにぶつかったに過ぎないが)。


 やがて閃光が収束する。自分は仰向けに倒れていた。両腕に痺れが残っていたが、高見に声をかけて無理矢理上半身を持ち上げる。すると、轟音の正体がわかった。


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