2 欠かせないポジション

「やっぱたいした仕事はないかぁ」


 今のガレージのチーム構成をいれて検索すると、対応できる案件は限られる。

 違法オートマタの対応には、決め手となる”アタッカー”の存在は必須だ。危険な機体と真正面から対峙し、都度最善の対応が求められる。業界の花形ポジションといってもいいだろう。


 しかし前述したとおり、アタッカーには常に高いレベルの技術が求められるため、業界では慢性的な人手不足が問題視されていた。そんな中で、大手企業がアタッカー育成も兼ねた対応事業を展開すると、安定した実力を身につけたアタッカーが増えた。メトロシティの治安は保たれていったが、逆に高見たちのような民間対応業者が対応できる案件は絞られていき、業種内で格差がうまれてしまった。


 高見は、数ヶ月前の案件で仕事を共にしたアタッカーの顔を思い出した。少しだけ怠そうな表情を浮かべた琥珀色の瞳の男だ。違法オートマタには恐ろしく強く、人間相手には弱い変わった男だった。


 あれほどの技術を持ったアタッカーとは、今後そうそう組めないだろうな、今頃何をしているのだろうか……などと思いつつ、ガレージ内の棚をみやる。彼が観光都市であるテグストル・パールクから自分宛に送ってきた貝殻の置物が飾ってあった。


 その棚にはもともと高見のお気に入りの貝殻があったのだが、黒澤らと一悶着あった際に壊れたのだ。それを気にしていたらしく、荷物が届いた際に高見は驚きと喜びのあまり笑ったのを覚えている。そういった行動とは無縁に見えるのに、本当につかみ所の無い男だった。


 モニタをスクロールしていくと、自分たちにも対応可能な案件を見つけた。場所はメトロシティの郊外というより、圏外といってもいい。片道何時間かかるだろうか。燃料代、装備代などもろもろ差し引いての報酬を試算する。まずまずであった。

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