2 ”簡単な”仕事 - 物資の回収
1 仕事リサーチ
朝がくる。
雲の切れ間を鋭く切り裂く閃光は、ガレージにはめ込まれた磨りガラスの壁をいとも簡単に貫き、容赦なく瞼をこじ開けていく。そんな強制的な朝を、高見佳奈は結構気に入っていた。
その光を浴びて彼女はむくりと身体を起こす。高見佳奈の朝は早い。しん、と静まった空気が好きだ。部屋の中には光の筋が何本も通っていて、どこか幻想的だ。その筋を横切ってスウェット姿のまま自室を出る。
柔らかい手触りのニットは同業者の知人が贈ってくれたものだ。彼女らしく質の良いもので高見は少し気が引けたが、これを着てすごす間は、普段着よりも所作を心がけている自分がいた。
隣の部屋に居候しているエルリはまだ寝ているから起こさないようにゆっくり部屋の前を通り過ぎ、1Fへ降りる。肩まで伸びた髪をざっくりと束ね、顔を洗い、キッチンへ向かう。エプロンをつけた。これも(彼女にとっての)高級部屋着を汚さぬための意識向上効果だろう。
朝食はいつも多めに作って保存し、1日中同じものを食べて過ごすことが多い。日中になると作業に没頭しているため、作るのが面倒になるからだ。エルリの分と、今日は深夜業務から戻ってくるはずの黒澤の分も見越した材料を冷蔵庫から抱えてキッチンに広げた。
ストックが減ってきたから、昼前にエルリに買い出しを依頼しよう。そう考えつつ、卵をボウルに割り入れて、フライパンに流し込む。オムレツをたくさん焼いたがバターを忘れた。他にもいくつか副菜を作っておく。
食事を終えると、朝イチで事務局のポータルサイトをチェックする。ここにはオートマタに関するさまざまな案件が投稿され、高見たちのように利用登録をすませた業者が対応可能な案件を受注するのだ。高見は条件検索で”アタッカー”のチェックを外して一覧を眺めた。前日までにエルリがピックアップしてくれた案件にも目を通しておく。
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