7 正体不明
高見は”人型”と言っていたが、明らかに人ではないか……?
仮に対象が正規のオートマタだとすれば頭上に円環が回っているはずだ。
それに違法機体だとした場合でも、あれでは精巧すぎる。碌なプログラムも施されていない機体が、自分がモーテルに入ってから出るまで息を潜めて隠れているという行動をとっていたとすればかなり高度な代物で、笠原工業が製造した違法機並みの機能を備えたものといってもいい。
しかし笠原工業は既に違法機体の製造から手を引きつつある。あの会社が今更こんな僻地でテスト機体の試運転をするなど考えられず、黒澤はスリンガーを下ろした。ここから見える後ろ姿は、まるで自分と同じ人間そのものに見えた。
とはいうものの、このまま何の収穫も得ずに拠点に戻るわけにも行かず、黒澤は、左腕を再度構えた。直線距離で狙うのではなく、放物線を描く軌道で電磁グレネードを破裂させれば、何かしら反応を示すだろう。直撃させるのは避けたいと思った。
上空をめがけて放つと、グレネードはちょうど対象の頭上5メートルほど上で破裂し、霧雨の中を蜘蛛の巣状の光線が走って行く。その光に驚くことも目立った反応も見せず、対象は姿をくらませた。黒澤は走っていた足を止め、数歩進んだところで追うのを止めてモーテルへ引き返した。こちらを攻撃してこなかったことも、腑に落ちなかった。
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