ヒロイン視点 1

 告白してしまった。告白してしまった。


 いろいろ手紙を書き直しているうちに、なんだかヒートアップして告白する内容の手紙になってしまった。


 もう、渡してしまった。もう後戻りはできない。


 その日は家に帰って布団で悶々としていた。枕に顔を押し付けて、高鳴る心臓と戦っていた。


 返事が怖い。返事が楽しみ。相反する感情が同時に襲ってきて、破裂しそうだった。


 こんな気持ち、1人では抱え込めない。

  

 というわけで、私は学校の空き教室……ユメさんがいる場所に向かった。


 私が空き教室に入ると、あいさつもそこそこにユメさんが言う。


「私の経験だと……✕✕✕✕✕✕」まだ、日本語は完璧には聞き取れない。「だからね……デートに誘ってみて」

「で、デート……?」

「そう。告白✕✕✕✕✕✕返事のときは、ムードが重要✕✕✕✕✕✕」


 ムードが重要……


 彼が告白の返事を私にしてくれるときも、ムード作りが大切らしい。それが日本文化なのだろうか。


「お月見とか、どうかしら」

「オツキミ……?」

「そう。月を一緒に、彼と見るの」


 月を一緒に……


 なるほど……月がキレイという告白に対する返事は、月明かりの下で行うのか。

 風情があって、素晴らしい。


「✕✕✕✕✕✕」


 なんだか今日のユメさんは興奮しているようで、少し早口だった。


「ご、ごめんなさい……スコシ、ゆっくり……」

「……ごめん……」ユメさんは咳払いをしてから、ゆっくりと、「日本の男の子は……結構、奥手な子が多いの。だから、あなたがリードしてあげて」

「リード……」

「そう……言葉じゃなくて、行動でリードしてあげるの」


 行動でリード……?


「ど、どうやる……?」

「それは、あなたに任せることしかできないわ」それもそうか……ユメさんに方法を決めてもらうのはおかしいな。「でもきっと大丈夫。あなたが選んだ行動なら……彼は受け入れてくれると思う」


 そう思う。

 私が変な行動をしても、変なことを言っても……変な翻訳文が表示されても……彼はずっと受け入れてくれていた。

 私にどんな裏の顔があったとしても、彼は受け入れてくれる。なんとなく、そう思う。


「セッティングは、私がするわ」

「え……?」

「大丈夫。協力者がいるから」


 協力者とは誰だろう……まぁ、彼女ほど優しい人なら、友達の1人や2人いるか。


 そういえばユメさんは……どうしていつも空き教室にいるのだろう。授業時間中もここにいるようだけれど……授業をサボって大丈夫なのだろうか?


 気になるけれど、今は別のことを考えなければ。


 行動で、彼をリードする。お月見の最中に……彼からの告白の返事を受け取る。

 鈍感な彼にもわかるよう、ストレートに……


 ……

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