幽霊視点 3

 保健室の洒落しゃらく教員と話して、なんとなく状況は把握できた。


 盧羅のらちゃんは機械翻訳の彼に『月がキレイですね』という告白をした。


 しかし機械翻訳の彼は、告白に気が付かなかった。

 どうやら彼は今、お月見の準備をしているらしい。


 機械翻訳の彼は、かなりアホであるようだ。月がキレイという言葉の意味を知らなくても、いむさんから手紙を受け取ったなら……その言葉の意味くらい調べても良いだろうに。


 しかし、どうしたものか……


 洒落しゃらく教員と相談をして、なんとか打開策を探ろう。


”どうする?”

「……なんとかして、いむさんが告白をしたんだってことに気づいてほしいよね……」機械翻訳の彼が告白に気がつけば、すべて解決する。「とはいえ……どうやって伝える?」

”直接?”

「……いむさんは……どうだろう。それを望んでいるかな……」


 たしかに……

 盧羅のらちゃんが直接わかりやすく伝えたいのなら、手紙に『好きだ』と書けば良い話だった。


 しかし、彼女はそれを選ばなかった。月がキレイという遠回しな告白を選んだのだ。


「シチュエーションを大事にするタイプ、なんだと思う」ただ告白するのではなく、その過程も大切。「なら……できる限り、機械翻訳の彼本人に気がついてほしい」

”それが良いと思う”


 問題は……どうやって気がついてもらうか。


「あの子……すごく鈍感だから……」洒落しゃらく教員は頭をかいて、「それが、彼の良いところなんだけどね……」


 鈍感だからこそ、できることもある。

 例えば、孤立している外国人に臆せず話しかけられたりとか。


 ともあれ……彼が無理なら……


盧羅のらちゃんに言う?”

「それしかないと思うけれど……」シチュエーションを重視するなら……「告白が届かなかった、というのは……ちょっとかわいそうだね……」


 きっと盧羅のらちゃんの告白は、かなりの度胸を要しただろう。勇気を振り絞って、考えに考えての告白だっただろう。


 そんな告白が届かなかった……ちょっとばかり残酷だ。


「だから……もう一度告白してもらうのが、最善かな……」

”どうやって?”

「……わかりやすい方法で。鈍感な彼でも、すぐに気づくような方法で」

”どんな方法?”

「……それは、いむさんに任せるしかないね……私達が口を出せることじゃないし」


 すでに、かなり口を出しているけれど……まぁ、それは言うまい。


 ともあれ……当面の目標は決まった。


「もう一度、告白してもらう。それも鈍感な彼が簡単に気がつく方法で」


 どんな方法なのか……それは盧羅のらちゃん任せ。


 問題は……どうやってもう一度告白してもらうか、である。


 盧羅のらちゃんはもう告白しているのだから……このままなら、もう一度告白なんてしない。返事待ちの状態だろう。


 となると……


「……」


 二人共、無言になってしまった。


 方法がわからない……なんとかして2人をくっつけてあげたいのだけれど……というか、くっついてもらわないと私が成仏できない。恋の結果が気になって成仏できない。


 ……


 うー……


 うまいこと、焚き付けるしかないか……

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