20 ツボ

ヒロイン視点

「✕✕✕✕✕✕」【あなたは今、幸せですか?】


 ツボでも売りつけられるのだろうか……


『……ある程度は……』


 嫌なことも多いけれど、こうやってあなたと会話できるから。


「✕✕✕✕✕✕」【それは良かったです】


 終わった。宗教勧誘かと思ったら、あっさり引き下がってくれた。


「✕✕✕✕✕✕」【私は今、幸せです】

『そ、それは良かったです……』

「✕✕✕✕✕✕」【すべて、幸運のツボのおかげです】

『それ大丈夫ですか?』


 彼のほうが怪しい宗教に引っかかっていた……?


『か、買ったんですか……? ツボを……?』

「✕✕✕✕✕✕」【それにより、ストレスからの開放です】

『騙されてますよ……』

「✕✕✕✕✕✕」【柔軟性がアップし、さらに肩こり解消】

『偶然ですって……』


 ツボを買ってから良いことが起こり始めた、という偶然が積み重なっているだけだって……完全に騙されてるって……


「✕✕✕✕✕✕」【それは芸術的です】


 マズい……彼が怪しい宗教に捕まってしまったようだ。


 なんとかして目を覚まさせないと……だけれど、強い否定は逆効果かもしれない。


『……し、神秘的な力とかは、ないはずですよ……?』

「✕✕✕✕✕✕」【それはゴッドハンドです】


 神の力……? そんなのまで信じちゃった?


『そのツボを売ったのは……あんまり良くない人たちかもしれません……』

「✕✕✕✕✕✕」【多くの人が彼を信じます】


 そんな大きな宗教なのか……別に他人の宗教観を否定するわけじゃないが……話を聞いてる限り良い宗教とは思えない。


「✕✕✕✕✕✕」【ポイントカードをくれます】

『そんなのに釣られて……』

 

 ポイントカード程度で宗教に入ったのか……? 宗教も最近はポイントカードを取り入れているのか……?


 宗教そのものが悪いわけじゃないのだけれど……ツボを売りつけるような宗教は危ないだろう。


 なんとかして止めないと……


『ポ、ポイントカードなら銭湯でもありますよ』

「✕✕✕✕✕✕」【彼のほうが良い。彼の指が至高です。気持ち良いです】

『ゆ、指……?』


 まさか……まさか、あんなことやこんなことも? ツボだけに飽き足らず、彼の身体に手を……?


『ダメですよ……!』思わず声が大きくなる。『そんなこと……ダメです。今すぐ……やめてください……!』


 これは洒落しゃらく先生にも相談しないといけないかもしれない。悪徳宗教から彼を救わないと……


「✕✕✕✕✕✕」【次の予約があります】

『よ、予約って……』

「✕✕✕✕✕✕」【ツボです】

『だからツボは……』

「✕✕✕✕✕✕」【ツボを押してもらいます】

『……押す……?』


 ……


 ツボを押す……?


 ……


 ……


『あ……そっちのツボ……?』


 マッサージ的なやつ? 


 ……

 ストレス解消、肩こり解消、ゴッドハンド、指が気持ち良い……


 言われてみれば……全部マッサージだった……

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