主人公視点

りんさんは……ストレス発散とかどうしてるの?」


 昨今のストレス社会において、ストレス発散法は重要だ。

 自分なりのストレス発散法があれば良いのだけれど……僕にはなかったりする。


 りんさんには、あるのだろうか。


『✕✕✕✕✕✕』【70年前のテレビからの情報です】


 古い……しかし、情報は劣化しないはず。


「どんな方法?」


 ……なんだろう……なぜかりんさんが警戒している気がする。


「あ、ごめん……詮索しようとしたわけじゃなくて……」


 いきなりストレス発散法を聞くのは、少し配慮が足りなかっただろうか?


『✕✕✕✕✕✕』【それは巨大なツボです】

「巨大な……ツボ?」


 ……


 ああ、なるほど。ツボに向かって大声を出して、ストレス発散をするということか。


 なんだかかなり昔に、そんなツボが流行っていた気がする。大声を出しても吸収してくれるようなツボだ。


『✕✕✕✕✕✕』【まず、ツボに入りました】


 入るの……? ツボに向かって叫ぶんじゃなくて?


 ……入ってから叫ぶのか……? そんな構造のツボなのか?


『✕✕✕✕✕✕』【息が苦しくなる場合があります】

「出たほうがいいよ……」


 ツボの中にいるから苦しいんだよ……


『✕✕✕✕✕✕』【しかし、それくらいが最高です】

「息苦しいのが良いの……?」


 結構Mなのだろうか……酸素が足りなくなって頭がボーっとするのが好きなのだろうか……ちょっと気持ちはわかるけれど……


『✕✕✕✕✕✕』【しかし、大声を出しすぎるのは、好みではありません】


 大声を出すためのツボなのに……?


「大声でストレス発散するツボじゃないの……?」


 なぜかりんさんが困っている。困っているのはこっちなのだけれど……


『✕✕✕✕✕✕』【そのツボの場所は、人によって異なりますが、誰にでもあります】

「あるの……?」


 そんな普及してるの? 関西人のたこ焼き器みたいな……?


『✕✕✕✕✕✕』【そのツボは、自分でもどこにあるかわかりません】

「なぜ……?」


 なくしたの? どこいったかわからなくなったの……? 結構大きなツボだろうに……


「小型化が進んでるのかな……?」

 

 持ち運べるレベルのツボになっているのだろうか。消音マイク的な……


『✕✕✕✕✕✕』【それにより、困ることもあります。大事な場面では、封印】

 

 ふ、封印……? ツボに封印? 

 ……大魔王でも封印するのかな……魔を封じるのかな……


『✕✕✕✕✕✕』【私のツボは、主に会話にあります】

「会話の中に……?」


 会話の中に、ツボ?

 

 ……?


『✕✕✕✕✕✕?』【お気に入りのものがあります】


 お気に入りのツボがあるのか……やっぱりツボによって効果が変わるのかな……防音効果に差があるのかな……


『✕✕✕✕✕✕……!』なんだか彼女の声が大きくなった。『✕✕✕✕✕✕』【それはテレビから出てきました】


 テレビから出てきたの? ツボが? 3Dプリンターなの?


 今の技術は進んでいるんだなぁ……機械音痴の僕としては驚きだ。


「もう、テレビから直接商品がもらえるんだ……」

『✕✕✕✕✕✕』【主に音声です】

「音声は最初から、出るよね……?」


 テレビなのだから、音声と映像があるはずだ。


『✕✕✕✕✕✕』【その音声は、私のツボでした】

りんさんの、ツボ?」

『✕✕✕✕✕✕』【大笑いしました】


 ……


 大笑い……?


 ……


 ……


 あ……そっちのツボ……?

 笑いのツボ的なやつ?


『✕✕✕✕✕✕』【テレビの漫才です】


 答え合わせされた。どうやらりんさんのストレス発散法は……テレビのお笑い番組で笑うことだったらしい。


 ……

 笑いすぎて生きが苦しくなる……笑いのツボは人それぞれ……場面によっては笑ってはいけない。


 言われてみれば……全部笑いのツボだった……

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