ヒロイン視点

『暑くなってきましたね……』


 座っているだけでも暑いと感じて、汗が流れる季節になってしまった。


 私は暑いのが苦手だ。寒いのなら耐えられるけど、暑いのは嫌だ。

 汗もベタベタするし、生きてるだけで体力を消耗してしまう気がする。


『どうしてこの学校には、クーラーがないのでしょう……』


 私が昔通っていた学校にはクーラーがあった。しかしこの学校には残念ながら設置されていない。


 この暑さの中30人がすし詰め状態……死人くらいでるだろうな。


「✕✕✕✕✕✕」【それは坂本龍馬のせいです】

『すごい冤罪ですね……』


 唐突に罪を被せられる坂本龍馬かわいそう……時を越えてこの学校にクーラーが設置されていない原因にされる坂本龍馬が不憫でならない。


 というか彼……歴史が好きなのかな……坂本龍馬とか、歴史上の偉人がよく出てくる。


「✕✕✕✕✕✕」【最も好きなのが、剛竜我ごうりゅうが主神しゅしんです】


 ご、剛竜我ごうりゅうが主神しゅしん……? なんだその強そうなだけの名前は……


 しかしまさか……日本の偉人にそんな名前の人が……いや、中国の偉人なのか? 

 なんにせよ、興味が湧いた。剛竜我ごうりゅうが主神しゅしん


「✕✕✕✕✕✕」【その伝説は3ヶ月前に遡ります】

『最近ですね……』


 今もご存命なのだろうか……


 ……もしかして、彼の名前が剛竜我ごうりゅうが主神しゅしんなのか? いや……そんなわけないよな。今さら自己紹介する理由も謎だし……


『その剛竜我ごうりゅうがさんは……どちらにいらっしゃるんですか?』

「✕✕✕✕✕✕」【それはあなたです】

『わ、私……?』


 私はいむ盧羅のらなのだけれど……剛竜我ごうりゅうが主神しゅしんじゃないのだけれど……


 ……私の前世が剛竜我ごうりゅうが主神しゅしん……いや、そんなわけがない。彼の伝説は3ヶ月前程度のことのはず……


「✕✕✕✕✕✕」【その伝説は転校により始まりました】

 

 私じゃん。3ヶ月前に転校って私じゃん。


 やはり私が剛竜我ごうりゅうが主神しゅしん……?


 ……なぜ私は自分の存在に疑問をいだいているのだろう……


『私は……剛竜我ごうりゅうが主神しゅしんじゃないですよ……』


 当たり前のように話してるけど、剛竜我ごうりゅうが主神しゅしんってなんだ……


「✕✕✕✕✕✕」【それは間違いです。あなたです】

『……やはり私が剛竜我ごうりゅうがなんですか?』

「✕✕✕✕✕✕」【ちがいます】

『今までの会話はなんだったんですか……』


 結局違うらしい。最終的に私は剛竜我ごうりゅうが主神しゅしんじゃないらしい。


 ……当然だ。


「✕✕✕✕✕✕」【それは非常に珍しいと、私は思います】


 ……


 ……


『あ、クーラーですか?』急に最初の話題に戻った。『たしかに今どき、クーラーがないのは珍しいですよね……』


 気合や根性で乗り切るという時代は終わったのだ。これからは文明の力を利用したほうが良いと思う。


「✕✕✕✕✕✕」【そのため、私は世界を相手に戦います】

『世界を相手にしなくても……』


 文部科学相くらいにしとこうよ。というか世界相手に戦ってもうちの学校にクーラーは設置されないよ。まず学校にかけあおうよ。


『……それで……結局剛竜我ごうりゅうが主神しゅしんって、何者なんですか?』


 もう剛竜我ごうりゅうが主神しゅしんのことが気になって仕方がない。


 ……まぁ、翻訳の過程で生まれた謎の存在だろうけど。

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