主人公視点

「パンはパンでも食べられないパンはなーんだ」

「✕✕✕✕✕✕」【スライスチーズです】


 パンですらない。そりゃパンとしては食べられないだろうけど……


「ふ、フライパンです……」


 なぞなぞを出してから思ったが、この手のダジャレは外国の人に通じるのだろうか……これからは控えよう。


「えっと……りんさんって、なぞなぞが好き?」


 僕は結構好きである。得意なわけじゃないが、好きなのは好き。

 

「✕✕✕✕✕✕」【ナウマンゾウと比べたら、同じです】


 わからない……りんさんがナウマンゾウをどれくらい好きなのかを知らない。


「……ナウマンゾウが好きなの……?」

 

 というかナウマンゾウってなんだっけ……ゾウの種類なんだろうけど……


「✕✕✕✕✕✕」【インドゾウと同じくらいです】


 だからインドゾウの好感度を知らない。結局何もわからない。


「ぞ、ゾウが好きなんだ……?」

「✕✕✕✕✕✕」【この会話がお気に入りです。繰り返しなさい】

「な、なぜ……?」


 なぜこの会話を気に入った……? どうして? どこに気に入る要素があった?


 ……ともあれ……言われたからには繰り返そう……


 会話ってどこからだろう……最初のなぞなぞは……いらないよな。


「えっと……りんさんって、なぞなぞが好き?」

「✕✕✕✕✕✕」【それは良い】


 これで良いらしい。というか会話気に入ったのに、りんさんは違う言葉を返すのか……


 で……確か次は……


「……ナウマンゾウが好きなの……?」

「✕✕✕✕✕✕」【それはそれですが、サンバのようなものです】


 ……


 ……?


「ぞ、ゾウが好きなんだ……?」

「✕✕✕✕✕✕」【素晴らしいです。もう一度。私は望みます】

「な、なぜ……?」


 なんでこの会話に、そこまでの執着心があるんだ……? どこに執着する要素があるんだ?


 ……りんさんの好みはよくわからんな……


「えっと……りんさんって、なぞなぞが好き?」

「✕✕✕✕✕✕」【それはフライパンです】


 なぜ急に冒頭のなぞなぞに答えた? なんでこのタイミング?


「✕✕✕✕✕✕」【これが究極の一撃です。パスタです】


 あれ……なんか会話の順番が変わってるような……

 しかし、ここまで来たら繰り返したい。やめたら、なんだか負けた気分になってしまう。


「……ナウマンゾウが好きなの……?」

「✕✕✕✕✕✕」【クリスタルの導きは、トンボです】 

「ぞ、ゾウが好きなんだ……?」

「✕✕✕✕✕✕」【素晴らしいです。もう一度。私は望みます】

「な、なぜ……?」


 気が狂いそうである。なんだか変なループに巻き込まれてしまった……いや、僕がやめれば済む話なんだけど……


「えっと……りんさんって、なぞなぞが好き?」


 言ってから、正気に戻る。


 ……ダメだ……このままじゃダメだ……なんとかして別の話題を探さないと……本当に無限ループしそうだ……


 なにか……なにか別の言葉を……!


「パンはパンでも食べられないパンはなーんだ」

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