15 パンはパンでも食べられないパンはなーんだ

ヒロイン視点

「✕✕✕✕✕✕」【問題 ななたすよんたすごひくろくは?】

「脳トレですか……?」


 計算問題だよな……ただの計算、だよね?


「✕✕✕✕✕✕」【正解は9876です】


 絶対に違う。確実に違う。もう画面から文字が消えているから証拠はないが、そんな計算じゃなかった。


「✕✕✕✕✕✕」【そんなことより、私は誰ですか?】

「記憶喪失……?」


 なんで先に計算問題を挟んだの? 絶対先に記憶喪失であることを伝えるべきだよね……


「✕✕✕✕✕✕」【私は坂本龍馬ですか?】


 どんな記憶植え付けられてるんだろう……なんで自分が坂本龍馬だと思ったのだろう……

 というか……彼は坂本龍馬が好きなのだろうか。いつかの会話にも登場した気がする。


 そういえば……私は彼の名前を知らないな。本当に坂本龍馬なのだろうか。両親が歴史好きならありえるかもしれない。


「すいません……私は、あなたの名前を知りません……」


 名前も知らない人に、片思いしている。


「✕✕✕✕✕✕」【解決です】

「思い出したんですか……?」

「✕✕✕✕✕✕」【それは正解です】


 短い記憶喪失だったな……3分も記憶失ってなかった。ちょっと寝ぼけてたくらいのものだろうに……


「✕✕✕✕✕✕」【そんなことより、私は誰ですか?】

「またですか……」


 また記憶失ってる……記憶取り戻してた期間が10秒くらいしかなかった……


「✕✕✕✕✕✕」【私は坂本龍馬ですか?】

「……違うと思いますけど……」


 歴史が好きなのかな……


「✕✕✕✕✕✕」【解決です】

「思い出したんですか……?」

「✕✕✕✕✕✕」【それは正解です】


 またまた記憶を取り戻した彼だった。


 ……記憶喪失ってこんなポンポンなるものだっけ……頭でも打ったのだろうか……保健室の先生に相談したほうがいいかな……


「✕✕✕✕✕✕」【そんなことより、私は誰ですか?】

「無限ループ……?」


 選択肢間違えた? 正しい選択肢を選ばないとループするタイプ? RPGとかであるやつ?


「……あなたは……坂本龍馬ではありませんよ……」

「✕✕✕✕✕✕」【私は坂本龍馬ですか?】

「だから違いますって……」


 先読みしたのに……先に坂本龍馬を封じたのに……無視された……


「✕✕✕✕✕✕」【解決です】

「思い出したんですか……?」

「✕✕✕✕✕✕」【それは正解です】


 良かった良かった。記憶が――


「✕✕✕✕✕✕」【そんなことより、私は誰ですか?】


 気が狂いそうである。なんだか変なループに巻き込まれてしまった……


 このループを脱出するには、どうしたら良いのだろう……


 考えていると、


「✕✕✕✕✕✕」【富士山は優しい。次は山です】


 勝手に脱出した。彼の記憶も正常に戻っているようだった。


 ……


 なんだったんだ今の会話……

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