8 我が名を示せ! 聖剣マヨネーズ!

主人公視点

 りんさんが疲れから高熱を出して倒れて、そのまましばらく経過した。


 あの日、僕はりんさんを家まで送った。まだ体調は万全じゃないだろうから、1人で帰らせるのは不安だった。


 歩いている最中にスマホを使うのも気が引けたので、帰り道で会話はなかった。気まずい思いをさせてなければいいのだが……


 2日ほど、りんさんは学校を休んでいた。あれ程の光熱が出ていたのだから、当然だろう。


 そして久しぶりに登校したりんさんに、僕は声をかける。


「おはよう。体調はどう?」

「✕✕✕✕✕✕」【我が名を示せ! 聖剣マヨネーズ!】

「元気そうで良かった」


 何を言っているのかはわからないけど、いつものりんさんに戻っている。

 でも……まだちょっと顔が赤いだろうか。目もあんまり合わせてくれないし……まだ完全復活というわけじゃなさそうだ。


 ……


 聖剣マヨネーズってなんだろう……


「……ごめん……僕は、ケチャップ派なんだ……」

「✕✕✕✕✕✕」【伝説の剣にトッピング】


 罰当たりすぎる……なんで伝説の剣にケチャップをトッピングするんだ……


 ……というか、聖剣マヨネーズってそういうこと? 聖剣にマヨネーズかけたの?


「……聖剣には、トッピングしないほうがいいと思うよ……」


 僕が言うと、なぜか彼女は慌て気味に、

 

「✕✕✕✕✕✕」【よって守備力の低下が見込めます】


 守備力下がってる。マヨネーズトッピングしたから……

 というか、守備力が下がるのか……せめて攻撃力下がってよ……あるいは天罰くだって……


「✕✕✕✕✕✕」【選ばれしものは結果として私です。市販のマヨネーズです。伝説のマヨネーズです】

「で、伝説のマヨネーズ……?」

「✕✕✕✕✕✕」【勇者にしか装備が許されません。使えません】


 使い勝手の悪いマヨネーズだ……売上悪そう……というかりんさんも使えないのか……


「マヨネーズ……好きなの?」

「✕✕✕✕✕✕」【それは世界を救います】

「荷が重いよ……」


 さすがのマヨネーズも世界は救わないよ……美味しいけど……


 いや……それとも……


「好きなものが世界を救うってこと?」

「✕✕✕✕✕✕」【いいえ。バンジージャンプです】


 今日のりんさん……絶好調だな。絶好調で会話が飛びまくる。きっと頭が良すぎて会話が飛ぶのだろう。僕がついていかなければ。

 

「バンジージャンプかぁ……1回くらいやってみたいな……」

「✕✕✕✕✕✕」【宇宙からですか?】

「死んじゃう死んじゃう」


 なんで大気圏突入バンジーをしないといけないんだ。自殺行為にもほどがある。


 相変わらず……りんさんとの会話は噛み合わない。


 でもまぁ……りんさんが楽しそうだから良いか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る