ヒロイン視点

 疲れのせいでぶっ倒れて、そのまま2日ほど寝込んだ。


 寝込んでいると……余計なことを考えてしまう。

 あの日は、彼と一緒に帰った。緊張のあまり、ほとんど喋れなかった。油断すると王子様の姿が思い浮かんでしまって……


 家で眠っているときも、彼の顔が脳裏から離れない。完全に恋をしている。


 学校なんて、本当は行きたくない。言葉も通じないし……基本的には苦しい空間。


 でも……彼がいるのなら……


 そう思って、私は今日も登校する。


「✕✕✕✕✕✕」そうしたら、さっそく彼が話しかけてくれた。「✕✕✕✕✕✕」【ご機嫌麗しゅうございます。お姫様】

「お姫様って……」なんてナンパな人だろう。なんてキザなのだろう。「……ありがとうございます……王子様……」

 

 ……なに言ってんだろ私……


「✕✕✕✕✕✕」【心待ちにしておりました】


 ……だから顔が赤くなってしまう……そんなグイグイ来ないで……


 ……というか、なんで彼は首を傾げているのだろう。首を傾げたいのはこっちなのに……

  

 って……違う。早くお礼を言わないと……


「✕✕✕✕✕✕」【私にとってそれは伝説の存在です。あなたはプリンセスです】


 ……冷静に……冷静になれ……お礼を言うんだ……


「……あ、あの……ありがとうございました……」


 ……


 あれ……? このタイミングでお礼を言ったら……私がプリンセスだと認めたことにならないか?


「✕✕✕✕✕✕?」【私のプリンセスはあなたですか?】

「ち、ちが……あの……プリンセスじゃなくて……」


 また熱が出そうだ……高熱出して倒れそうだ。

 ……倒れたらまた王子様に運んでもらえる……って、私は何を考えているんだ。


「違うんです……あの、この間倒れたときのお礼を……」

「✕✕✕✕✕✕」【ガラスの靴を探しましょう。お姫様に合う靴を私は探します】

「……ちょ……あの……」


 なんてキザなプロポーズだ……いや……別にプロポーズじゃない。私の考えすぎだ。


「✕✕✕✕✕✕」【それは4900メートルです】

「バケモノじゃないですか……」


 なんだ4900メートルのガラスの靴って。探すまでもなく見上げればあるだろ。観光名所でしょ。富士山もびっくりだよ。


「✕✕✕✕✕✕」【魔界証券の常識です】


 魔界証券を知らないんだよなぁ……


「✕✕✕✕✕✕」【サポート効果により、さらに5センチ追加されます】

「誤差ですよ……」


 4900メートルに5センチ追加されても気が付かないよ……


 ……


 5センチ差……誤差……5差……


 ムダにダジャレで事故ってしまった。そんなつもりじゃなかったのに……

 

「✕✕✕✕✕✕」【宇宙開発に乗り出した私は魔界の王ですか?】

「……ちょっと……わかんないです……」

「✕✕✕✕✕✕」【それはプリンセスのためです。それはプリンセスのためです】


 なぜ2回言った……


 ……


 ああ……


 なんで私はこんな意味不明な会話に、安らぎを感じているのだろう。

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